洪水避難、全県で初訓練 茨城 対象は43万世帯、地区ごと 逃げ遅れゼロへ

茨城県

記録的な豪雨など災害の激甚化・頻発化を受け、茨城県などは本年度、洪水被害の恐れがある約43万世帯を対象とした避難訓練を県内全市町村で順次行う。洪水に備えた訓練を全県で実施するのは初めて。市町村による適切な避難指示や住民の避難行動が課題となる中、防災意識の醸成を図り、災害時の「逃げ遅れゼロ」につなげる。

訓練の対象は、43市町村の「洪水ハザードマップ」が示す浸水想定区域と、同区域がない牛久市の「土砂災害ハザードマップ」が示す警戒区域。県防災・危機管理課によると、計2850地区で約43万世帯に上り、県内全世帯の約3分の1に当たる。

従来の避難訓練は、地震や津波への備えが中心だった。今回は、浸水想定区域内の全世帯へ避難を呼びかけるほか、実際に住民の避難行動を求める。防災行政無線やエリアメールなどを使った避難情報の発信や避難所の開設、避難所への移動などを行う。市町村ごとに実施時期や内容を定め、来年3月末までに順次実施する。

東海村では16日、県と連携した「避難強化訓練」を実施する。大型台風による降雨量増加や河川の水位上昇を想定し、流域住民に避難情報を発令する適切なタイミングや、各住民があらかじめ時系列に避難計画を決めておく「マイ・タイムライン」を活用した避難行動を確認する。

主に、災害対策本部設置▽情報伝達▽住民避難▽防災講習▽避難行動要支援者への支援▽避難所開設・運営-の6項目を訓練する。防災行政無線や無料通信アプリ「LINE」を使って避難を呼びかける。避難所では段ボールベッドの組み立てなども行う。

那珂市は23日に避難情報を配信し、地区ごとに訓練する。鹿嶋市では5月、浸水想定区域の住民が避難スペースや防災情報の収集、市の防災行動計画などについて確認した。

近年は記録的な豪雨などで災害が激甚化・頻発化している。6月初めの大雨では内水氾濫などにより、取手市双葉地区で600戸近くが浸水。2019年の東日本台風では、河川の堤防決壊や越水が相次ぎ、県内で328人が逃げ遅れた。

県は「逃げ遅れゼロ」に向けた対策を進めている。同課は「市町村が避難指示を出した際、自ら避難行動を取ることの重要性が意識付けられる訓練にしたい」としている。

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