京アニ事件の犠牲者氏名、法廷で一部非公開に 京都地裁、殺人事件では異例

京都地裁

 36人が死亡した京都アニメーション第1スタジオ(京都市伏見区)の放火殺人事件で、殺人などの罪で起訴された青葉真司被告(45)の裁判員裁判について、京都地裁が複数の犠牲者の氏名などを法廷で非公開とする決定を出したことが14日、関係者への取材で分かった。遺族の意向を踏まえた措置で、殺人事件としては異例とみられる。

 刑事訴訟法では、氏名や住所といった被害者が特定される内容を「被害者特定事項」として、公開の法廷で伏せることができると定めている。主に性犯罪などの被害者の保護が想定されているが、「社会生活の平穏が著しく害される恐れがある事件」なども対象となる。検察官を通じて裁判所に申し出る。

 関係者によると、これまでに複数の遺族が秘匿を申し出て、地裁が認める決定をしているという。社会的に注目を集める大事件で、特定事項が明らかにされることで生じる影響を考慮したとみられる。京都地検は秘匿制度について遺族らに説明し意向を聴取しており、今後、秘匿対象人数は増える可能性がある。

 青葉被告の初公判は9月5日、判決は来年1月25日に指定されている。主な争点は刑事責任能力の有無や程度になるとみられ、被告が動機などをどう説明するかも焦点となる。

 起訴状によると、青葉被告は2019年7月18日午前10時半ごろ、京アニ第1スタジオに侵入。ガソリンをまいて放火して全焼させ、屋内にいた社員36人を殺害、32人に重軽傷を負わせたとしている。

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