音楽家・坂本龍一が遺した最後の言葉とは…中瀬ゆかり絶賛の自伝「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」を紹介!

TOKYO MX(地上波9ch)の情報バラエティ生番組「5時に夢中!」(毎週月~金曜 17:00~)。6月29日(木)放送の「中瀬親方のエンタメ番付」のコーナーでは、新潮社出版部部長の中瀬ゆかりさんがおすすめのエンタメ作品を番付形式で紹介しました。

【"中瀬親方”による6月のおすすめ作品】

◆関脇
漫画「るなしい」
著 意志強ナツ子(講談社)現在3巻まで発売中!

鍼灸院を経営する祖母と一緒に暮らしている主人公の高校生・るな。鍼灸院では、"火神の子”であるるなの血が入ったモグサを使って、いわゆる信仰ビジネスをしているため、るなはクラスでいじめられていた。隣の家に住む同級生で唯一の理解者であるスバルとは良い友人関係を築くなか、ある日、るながいじめられているところをクラスの人気者でイケメンのケンショーが助けてくれたことをきっかけに、2人は距離を縮めて、るなはケンショーに恋心を抱き……。

中瀬親方のコメント「作者の意志強さんが描く世界感は、すごく独特な魅力に溢れていて、この漫画自体もちょっと読んだことがないテイストだったので、ビックリしました。主人公・るなと2人の男性の同級生で物語は主に進んでいきます。ケンショーくんがいじめから助けてくれた理由は、るなが鍼灸の知識を活かして彼の悩みを解決してあげたからなんです。るなはケンショーくんに恋心を抱くんですけど、"火神の子”として生きているので、恋ができない。

だからその気持ちを、彼を信仰ビジネスに導くことで消化し、またケンショーくんもその道にすごく興味を持っていくんです。3巻からはまたすごい展開を見せていて、そんなるなを中心に、3人を待ち受けている結末が一体どうなるのか。その先が知りたくて、読めば読むほど作品の世界観にハマってしまうと思います」

◆大関
映画「ナチスに仕掛けたチェスゲーム」
7月21日(金)シネマート新宿ほか、全国順次ロードショー

オーストリアの作家・シュテファン・ツヴァイクによるベストセラー「チェスの話」が原作。ヒトラーの命令で監禁された公証人が、1冊のチェス本を武器に命を張った、ナチスとの心理戦に挑む驚愕のサスペンス。

中瀬親方のコメント「主人公のヨーゼフが久々に再会した妻とともにロッテルダム港からアメリカに向かう豪華客船に乗るところから物語が始まっていきます。かつてヨーゼフは、ウィーンで裕福な公証人だったんですけど、オーストリアを併合したナチスに連行され、(ヨーゼフが管理する)貴族の資産の預金番号を教えるよう迫られるも、彼は拒絶してホテルに監禁された壮絶な過去があるんです。

この物語は、現代パートの豪華客船内と、ナチスに監禁された壮絶な過去とを行き来しながら無駄なく構成されていて、本当に素晴らしい。客船内ではチェスの大会が開かれていて、世界王者が乗客全員を相手に戦っていて、ヨーゼフは、船のオーナーが対戦しているときにアドバイスをし、その腕を認められるんです。やがて王者と一騎打ちをすることになるんですけど、なぜそんなにヨーゼフはチェスが強いのかというと、その強さにはあまりにも悲しくも残酷な秘密があるんです。

ヨーゼフは監禁されている間、チェスのルールブックだけが心の拠り所として耐え抜いて、(その本の)全てを暗記しているんです。1冊のチェスのルールブックが頭のなかに全部入っている状態を武器に戦っていくんですけど、彼が監禁されていた壮絶な過去が、王者との戦いとともに、徐々に明かされていくんです。無駄なシーンがなく割と短め(112分)に作られた映画なんですけど、ただただ狂気と恐怖と悲しみに支配された過去に引き込まれていって、すごい緊張感に満ちていて、ある意味、私はトラウマになったというか、夜に悪夢を見たぐらい刺さる映画で、とても感銘を受けました。

ちなみに、主演のオリヴァー・マスッチは、「帰ってきたヒトラー」でヒトラー役も演じていて、今回はナチスに人生を奪われる人物を演じ切るという、幅広い演技力もすごい見ものです。7月21日(金)より公開されますので、ぜひご覧ください」

◆横綱
自伝「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」
著 坂本龍一(新潮社)

今年3月28日に死去した音楽家・坂本龍一の自伝。彼の最期の日々を綴った、盟友・鈴木正文による書き下ろし原稿を収録。

中瀬親方のコメント「『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』という素晴らしいタイトルは、映画『シェルタリング・スカイ』の最後で、原作者のポール・ボウルズが語る言葉から取られているんですね。私たちは人生が無限のように感じているわけですけど、そんな私たちに贈られているような言葉でもあると感じて、本当に胸に染みるようなタイトルです。

内容は、がんでお医者さんから余命宣告され、残された人生を悟り、さまざまな思いを語ったものです。これは雑誌『新潮』に掲載されていたんですけど、『新潮』が何度も完売になるほど話題を呼びました。

坂本さんから話を聞き出したきっかけとなった方は、坂本さんの古くからの盟友・鈴木正文さんです。『音楽は自由にする』(2009年)という本では、幼少期から57歳までの人生を振り返っているんですけど、(本作では)それを継いで、最晩年までの足跡を記した決定的自伝です。

創作秘話や昔の出来事、社会運動を支える哲学や闘病中の日々とか、音楽への思いなどが赤裸々に語られていて、しかも坂本さんの最期の日々を綴った盟友・鈴木さんによる魂の書き下ろし原稿が掲載されているんですけど、これは正直、何度も落涙してしまう内容です。

そこでは生前に遺されていた坂本さんの日記の内容も明らかになっているんですけど、一語一句噛みしめるような文章で、果たして坂本さんが最後にどんな言葉を遺していったのか、ぜひこれを読んで知っていただきたいです。できるだけ多くの方に読んでもらって、いろいろ感じてもらい、今自分たちが生きていること、生きている意味や人生について、深く語り合っていただきたいと思います。とても素晴らしい本です」

中瀬さんが推す3作品、ぜひチェックしてみてください! 毎月最終木曜日に発表するこのコーナー、次回7月のエンタメ番付は、7月27日(木)にお届けする予定です。お楽しみに。

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<番組概要>
番組名:5時に夢中!
放送日時:毎週月~金 17:00~17:59 <TOKYO MX1> 「エムキャス」でも同時配信(地上波放送エリアを除く)
メインMC:垣花正、大島由香里
アシスタントMC:ミッツ・マングローブ(金)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/goji/
番組Twitter:@gojimu
番組Facebook:https://www.facebook.com/5jinimuchuu

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