社説:大阪・関西万博 延期も視野に計画見直しを

 2025年大阪・関西万博を巡り、会場準備の遅れなどの問題が次々と浮上している。

 隣の京都・滋賀を含めて国民の関心も高まっているとは言えず、半世紀前の大阪万博の熱気には遠く及ばない。

 同年4月の開幕まで2年を切ったが、間に合わせようと無理を強いれば、さらにひずみを広げかねない。

 万博で国威高揚を図る時代ではない。延期も視野に、計画を見直すべきではないか。

 象徴的なのが、海外の約50カ国・地域が自前で建設するパビリオンだろう。趣向を凝らした展示の舞台として万博を彩る予定だが、現時点で大阪市への許可申請は1件もない。

 受注側の国内ゼネコン各社との工事契約締結が進まないのが要因という。建設業界の慢性的な人手不足に資材価格の高騰も加わり、協議が滞っている。

 24年7月中に建設を終える計画だったが、準備が開幕に間に合わない可能性もある。このため万博を運営する日本国際博覧会協会は、建設工事の発注を代行する案を参加国に示した。

 窮余の策とはいえ、公費の負担増が懸念される。

 日本関連の施設も苦境は同じである。同協会発注工事で入札不成立が相次いでいる。

 発注規模50億円以上とされる「日本館」は随意契約に切り替わった。事業者間の競争とならず、建設費が想定より高くなる可能性がある。

 会場整備費は、当初は約1250億円と見込まれたが、暑さ対策の強化などを理由に1.5倍の約1850億円に引き上げられた。さらなる増額も避けられまい。

 運営費に充てられる入場券の基本料金も大人7500円と決まり、当初検討されていた6千円を大きく上回った。集客の足かせとなり、収入計画に響きかねない。

 建設経費は国と大阪府・市、経済界が3分の1ずつ負担し、多額の税金が投入される。2年前の東京五輪・パラリンピックでは開催経費が招致段階で示した予算の2倍以上に膨らんだ。

 安易に国民につけを回し、五輪の二の舞いとなってはならない。

 そもそも大阪にとって万博は「負の遺産」の人工島・夢洲(ゆめしま)を活用するのが狙いだった。新型コロナウイルス禍を経験し、観光市場の変化に伴い開催意義そのものが揺らいでいる。

 岸田文雄政権は「国家プロジェクト」と位置付けるが、五輪や万博で経済活性化を目指すのは「昭和」の発想だろう。

 国民的な合意を欠いたまま無理を重ねてここまで進めたが、限界に来ている。

 開幕が近づくにつれて方針転換も容易ではなくなる。海外パビリオンの問題は、いま立ち止まって考え直すべき時だと示しているのではないか。

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