代役・大津弘樹が感じた大湯車の“グリップ”と“戦える手応え”「フル参戦したい気持ちが強くなる」/第6戦予選

 走行前日に急遽、スーパーフォーミュラ第6戦への代役出場が決まった大津弘樹。昨年、DOCOMO TEAM DANDELION RACINGから参戦していた大津は、今季HRC陣営のリザーブという立場を担っており、3月の鈴鹿でのテストでは太田格之進の代役としてDOCOMO TEAM DANDELION RACINGから、第4戦オートポリスでは野尻智紀に代わりTEAM MUGENから、そして6月の富士テストではB-MAX RACING TEAMから、それぞれ出走している。

 今週末は、今季4チーム目となるTGM Grand Prixで53号車のステアリングを握るわけだが、予選では“初めてのクルマ”でQ2へと進出する速さを見せた。

 大津は午前中のフリープラクティスでコース脇にマシンを停め、赤旗の原因となっていた。「電源が全部落ちてしまったんです」。これによりセッション終盤での、ニュータイヤでの予選シミュレーションができないという状況に追い込まれてしまう。

 ただ、この時ユーズドタイヤで走っていた感触を元に、ニュータイヤに向けたアジャストをチームと進め、「その変更点が、かなり良かった」と予選Q1・A組を、リアム・ローソン(TEAM MUGEN)に次ぐ2番手で見事に通過する。

 プラクティスでのシミュレーションなしで臨んだ一発勝負のQ1でのパフォーマンスについて、大津は「すごいチーム力を感じました」と振り返る。セルブスを核とするTGMのチーム体制は、2021年にRed Bull MUGEN Team Gohで大津がフル参戦した際とほぼ同じ。急遽の代役ではあったが、その点は大津にとって安心材料だった。

 Q2に向けては「僕だけ周囲と違ったタイヤの使い方をしたのもあって、タイヤが充分に温まりきらないうちにアタックに入ってしまい、タイムが上がらなかったのだと思います」と9番手にとどまったものの、Q1で見せた速さは、実力者たる印象を残した。

 大湯の53号車は、今季ここまで鈴鹿、SUGOと2回のポールポジションを獲得するなど、とりわけ予選で目立った速さを見せている。この日の大津は、大湯とチームが作ってきたセットアップをベースに乗り始めたが、その“速さ”の根源を体感することができたという。

「ステアリングから伝わる感触などで『グリップのいいクルマだな』というのは、ドライバーなら誰しも感じられるものだと思います。それを活かして、一発は(Q2で)もっと伸ばしたかったですが……。いまはもう、いつも決勝に対して苦戦している部分をどう改善しようか、という部分に全員で向いているので、明日はここから順位を上げていきたいですね」

 大津も言うように、今季の大湯陣営は予選の好調を決勝で維持できずに苦しんできた。明日の決勝では“大津効果”でその解決策が見つかることを、チームは望んでいるはずだ。

 一方、大津自身にとっては、この予選日の結果は大きな“手応え”ともなったようだ。

「みんなが何年もかけて作り上げたクルマで戦っているなか、フリー走行もまともに走れていないのに、Q1で2番手のタイムを出せるということは『まだ戦えるんじゃないか』と思いました」と大津。

「(代役として)乗るたびにそんな手応えを感じますし、『フル参戦をしたい』という気持ちも強くなります。自分でしっかりクルマを作っていけたら、もっと結果が残せると思うんです。こういう経験をフル参戦したときに活かせるように、吸収していきたいと思います」

 コクピットに収まってすぐに結果を出さなければならない代役出場の大変さと直面しながらも、大津はいずれ来る“真のチャンス”を信じ、牙を研いでいるようだ。

2023スーパーフォーミュラ第6戦富士 大津弘樹(TGM Grand Prix)

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