<金口木舌>「ありがとう」から始まる交通安全

 「ありがとう」は不思議な言葉だ。自分で言っている時も、誰かに言われた時も心が穏やかになる。感謝の思いを伝える時は心にも余裕が生まれている

▼相手に謝意を伝えることの是非が以前、議論された。信号のない横断歩道で車に道を譲ってもらった子どもが、運転者に「ありがとう」とお辞儀をする。その行為が正しいかどうかだ

▼道路交通法では、横断歩道を渡ろうとする歩行者がいる場合、運転者に一時停止を求めている。ネットでは「一時停止は義務だから感謝の必要はない」「感謝の思いを伝えるのは大事」など、さまざまな意見があった

▼日本自動車連盟(JAF)の2022年の調査によると、信号のない横断歩道に歩行者がいる時に停止した車は、県内はわずか2割で全国ワーストだった。心に余裕がないまま運転しているのだろうか

▼11日から夏の交通安全県民運動が始まった。事故防止で最も重要なのは交通ルールの順守だ。誰かに「ありがとう」と伝える時のように、穏やかな気持ちと心の余裕も忘れないでほしい。

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