ザ・ベストテンのディレクターが語る!近藤真彦に襲いかかる舞鶴湾での漁船チェイス!  マッチはやっぱりスーパースター!

近藤真彦「愚か者」で日本レコード大賞受賞

80年代を代表するスーパーアイドル、女性では聖子、明菜の名がすぐに浮かぶが、男性ではやはりトシちゃんとマッチが双璧だろう。

マッチこと近藤真彦、TBSの『ザ・ベストテン』では、12年間の1位獲得曲数及び1位獲得週数で明菜、聖子に続いて第3位、男性ではぶっちぎりのトップである(1位獲得曲数は13曲、1位獲得週数では40回)。

一方、日本レコード大賞においても、1981年最優秀新人賞、87年には「愚か者」でレコード大賞を受賞。大賞、最優秀歌唱賞、最優秀新人賞の三冠に輝く80年代のスーパースターである。

「輝く 日本レコード大賞」事務所NGを押して野村義男と登壇

そんなマッチに初めて会ったのが、彼がデビューする前年の1980年、大晦日の『輝く 日本レコード大賞』の時だった。この年入社3年目の私は、会場の客席担当として、受賞者のゲストをステージに誘導するのが仕事だった。この年の新人賞は、田原俊彦、松田聖子、河合奈保子、岩崎良美、松村和子の5人、当時、トシちゃんと共に「たのきんトリオ」だったマッチとヨッちゃんこと野村義男は客席に座っていた。そして、最優秀新人賞でトシちゃんが呼ばれた瞬間、客席担当の私は、即座にマッチとヨッちゃんをステージにあげ、トシちゃんの応援の形を作った。

ところが、マッチとヨッちゃんが登壇するのは事務所的にはNGだったのだ。トシちゃんだけがオンステージで二人は客席で応援する、というのがTBSと事務所との約束であったらしく、ADの私はそんなことは聞いてないから迷わずステージにあげてしまったのだ。マッチとヨッちゃんもまだデビュー前、言われるままにステージに上がり、演出的にも二人に囲まれてトシちゃんが「ハッとしてGOOD」を歌うという最高のパフォーマンスになったと思う。

終わってからプロデューサーにすごく怒られたけど結果正解だったと今でも思う。ちなみに翌年は、マッチが最優秀新人賞を受賞、この時はトシちゃんとヨッちゃんに囲まれて「ギンギラギンにさりげなく」を歌うという2年連続の3人によるパフォーマンスを観ることができた。

マッチのファンがTBSに押しかけた!?「ザ・ベストテン」で大騒動

TBS『ザ・ベストテン』においてもマッチは番組に欠かせない大スターだった。スタジオでもいつも元気いっぱい、黒柳さんからは実の息子のようにかわいがられ「やんちゃ坊主」的なキャラで人気を集めた。中継の時は、とにかくファンが集まりすぎて毎回大混乱。

ある時、武道館でコンサートを行った時、ステージ上でマッチが「このあと、ザ・ベストテンに出まーす」といったために大変な騒動になってしまった。

武道館から赤坂TBSへ移動したマッチを追いかけて、武道館に居た何千人ものファンがTBSへ押しかけてきたのだ。まるで戦国時代、敵の大軍に囲まれてしまった城のように、TBSの周りをファンに囲まれ、OAが終わっても一歩も外へ出られない状態になってしまった。なんでもマッチは深夜までTBS内で待機していたらしい。

前代未聞のハプニング!舞鶴湾中継の漁船チェイス

私が中継を担当した京都の舞鶴での生中継も大混乱。マッチは舞鶴港からの中継、夜の海と漁船をバックにマッチが歌う。手前にはカメラと駆けつけたファンの人達。歌い終わって中継終了、現場を離れようと思ったらものすごい数の人達に囲まれて身動きがとれない。携帯もSNSも無い時代なのに、電話や口コミでまるで町中の人達が集まってきたみたい。もっとも、テレビで「今ここに居ますよ」と言ってるようなもんだからそりゃみんな集まってくる。たまたま漁船を一艘借りていたので、仕方なくマッチを船に乗せて夜の海に逃げることにした。

沖に向かって「やれやれ」とほっとしたのもつかの間、後方からポツンポツンと灯りが近づいてきた。しかも1つや2つじゃなくどんどん増えてきて、何かと思ったら漁船の軍団が追いかけてきたのだ。おそらく家族や知り合いの船に乗ってファンの人達が追いかけてきたのだろう。最後は10艘以上、舞鶴湾での漁船チェイスという前代未聞のハプニングだった。

対岸の港に船が着いたら、追いかけてきた漁船が横付けして、まるで義経の八艘飛びのようにこちらの船に乗り込んでくる。どうにかこうにかマッチをガードして事なきを得たが、マッチは終始スリルを楽しんで面白がっていた。肝が据わってるというか、さすがマッチだった。この中継は私の制作人生の中でも忘れられない思い出である。

事務所独立後、昨年久々にマッチに会う機会があったが、会うなり、

「久しぶり、元気だった?」

―― と、昔と変わらない笑顔で声をかけてくれた。何年たっても最高にナイスガイであり、スーパースターである。

カタリベ: 齋藤薫

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