茨城・行方突風で巨大積乱雲 茨城大観測、高さ10キロ超

積乱雲から発するガストフロントのイメージ図

茨城県行方市で12日夕に発生した突風について、茨城大の気象レーダーが、高さ10キロを超える巨大積乱雲「スーパーセル」の特徴を観測していたことが15日、分かった。気象庁は10~13日に県内で発生した突風の原因を積乱雲の発達に伴う二つの気流の可能性が高いと推定。専門家は「今後も注意が必要」と指摘する。

■専門家「今後も注意を」

スーパーセルは、地上と上空の風速差が大きいとき、複数の積乱雲が連鎖的に発生したり、回転する上昇気流が継続したりして、集中豪雨や積乱雲の発達に伴う気流「ダウンバースト」、竜巻を発生させることで知られる。2012年5月に起きたつくば市の竜巻被害でも発生した。

茨城大の気象レーダー観測結果によると、行方市で12日午後5時20分ごろに突風をもたらした積乱雲は、雲の高さが10キロを超えるまでに発達。回転する上昇気流を伴うなど、スーパーセルの特徴があったという。

一方、気象庁は、県内で10~13日に発生した突風について、ダウンバーストか「ガストフロント」が発生したと推定。ダウンバーストは、積乱雲から吹き降ろす強い下降気流が地面にぶつかって発生する突風。ガストフロントは、積乱雲の下でつくられた冷たい空気が地表に降り、暖かい空気がある方へ向かって水平に吹く突風という。

同大の若月泰孝准教授(気象・気候学)によると、突風をもたらす積乱雲は、山岳部が多い群馬、栃木両県などで発生しやすく、発達しながら東進し、茨城県や埼玉県へ移動する。10~13日の県内はいずれも気温が高く、湿った空気に覆われていた上、気圧の谷の影響で上空に寒気が流れ込んでおり、「たまたま(突風発生の)条件が全部そろっていた」と分析した。

若月准教授は、天気予報で「大気が不安定」と解説があったり、竜巻注意報が発令されたりした場合は「突風の発生に十分注意を払う必要がある」と強調した。

水戸地方気象台などによると、県内では10~13日、下妻市や境町、鉾田市などで風速35~50メートルの突風が発生。発生時間帯はいずれも夕方から夜だった。突風が吹いた地域では、屋根瓦の飛散や農業用ハウスの損壊の被害があった。

行方市で12日に発生した突風では、国道355号に隣接する資材倉庫が倒壊して国道をふさぎ、約13時間にわたり上下線で通行止めとなった。

積乱雲から発するダウンバーストのイメージ図

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