【FANTASTICS 佐藤大樹】「10代のとき結構つらい想いもした」ドラマ『around1/4』インタビュー<後編>

撮影/小嶋文子

佐藤大樹(EXILE / FANTASTICS)が地上波ドラマ初の単独主演を務めるドラマ『around1/4 (アラウンドクォーター)』が絶賛放送中。

“アラクオ”と呼ばれる25歳前後の男女が抱え悩みや葛藤を赤裸々に描いた本作で、仲間からは“万年セックスおばけ”と呼ばれる広告代理店の営業マン・新田康祐役を演じている佐藤にロングインタビューを敢行。

【FANTASTICS 佐藤大樹】「今しかできないこと」ドラマ『around1/4 (アラウンドクォーター)』インタビュー<前編>では本作の印象や、共演者とのエピソードなどを語ってもらったが、後編ではさらに佐藤のパーソナルに迫る。

応援してくれているファンの方々への想い、所属するダンス&ボーカルグループFANTASTICSのメンバーとの関係性、アーティスト活動と俳優活動を両立する上での姿勢などを率直に語ってくれた。

ラブシーンとかを観たくないという気持ちもわかる

撮影/小嶋文子

――予告映像が解禁されたときに、大樹さんはファンの方に向けて「無理して観なくてもいいよ」というようなコメントを出されていましたよね。俳優としては自分が一生懸命取り組んだものは観てもらいたいと思うのが当然だと思うのですが、そこにはどんな想いがあったのでしょうか。

僕らは応援をしてくださる方がいて成り立つ仕事をしているので、まずはファンの方のことを考えます。自分がファンの方の立場だったら、たとえ相手が女優さんで、役としてやっているとわかっていても、ラブシーンとかを観たくないという気持ちもわかるので。

観たあとに後悔をして、例えば「もう応援できない」と離れてしまう人もいるとは思うんです。だからそういう想いをする人を極力減らしたいという気持ちはありました。

ただ予告は観なくてもいいから、本編は観てほしいなとは思っていて。自分が思っていることを正直にファンの方には伝えたかったので、その想いは(ファンクラブでの)ブログに書かせてもらいました。

――実際にドラマ本編を観てみると、ラブシーンよりも、その裏にある悩みとかの深い人間ドラマが印象に残りました。

過激な描写が多い深夜ドラマというイメージはあるとは思いますけど、そうではないことをわかってほしかったので。そこは本編をちゃんと観ていただければ気づいてもられると思ったので、あのような発信をしました。

――逆に友達同士とかでは話しづらい悩みでもあるので、それを、ドラマを通して共感して、自分だけじゃないと思えることもあるのではないかと。

そうなんです。SNSのコメントを見ていて面白いなと思ったんですけど、「昨日ちょうど友達と話していた内容を5人が話してた」とかもあって。ホントにこのドラマはリアルを追求しているんだなと思いました。

©ABC

――今回、初の連続ドラマでの単独主演を務めたということで、振り返ってここは座長として頑張れたなというところはありますか。

差し入れだけです(笑)。僕が食べたいものを入れただけなんですけど、カレーとか、焼肉弁当とか、コーヒーとか。そこは頑張ったかな。

――(笑)。皆さん、喜んでいましたか。

喜んでくれました。撮影ってどうしても毎日やっていると疲れてくるんですけど、そういうときに差し入れ一つで元気が出て、現場の士気があがるのを僕もこれまで経験していたので、できることと言えばそれくらいかなと。

――逆に反省点はありますか。

撮影スケジュールがタイトなこともあったんですけど、もっとスタッフさんをご飯に誘ったりできたら良かったなと。撮休があっても、僕がその日はライブとか、余裕がなかったので、次に主演作ができたらやりたいなと思います。

あと、一つ頑張ったことを思い出しました。宣伝です。座長としてここはもう半分広報くらいの気持ちでやっています(笑)。ここまで(撮影を)頑張ったんだから、やっぱりたくさんの方に観ていただきたいので。

しかもそれに対してファンの方が本当に協力的で、僕がこういうことをしたいって言うと、みんなが賛同してその目標を叶えてくれるんです。それにはすごく感謝しています。

――TVerのお気に入り登録の目標もすぐに叶えてくれましたよね。

そうなんです。本当にすごいです。

僕がFANTAという名前を広げなきゃいけない

撮影/小嶋文子

――本作の主題歌はFANTASTICSの新曲「It's all good」です。本作のための書き下ろした楽曲だそうですが、最初に聴いたときはどう感じましたか。

第一印象は「オシャレだな」です。「FANTASTICSでこういう曲をやってみたいな」と思っていた矢先でもあったので、そこにもハマった感覚がありましたし、ドラマにも合っているなと思いました。

ドラマを観ていて切なかったり、ちょっと胸が苦しくなったりする瞬間にこの曲が流れることで、ふっと肩の力が抜けるようなところもあって。

あとは歌詞がすごく入って来やすいです。「そのままでいいよ」「自分が思ったことを突き進んで、自分を信じて頑張っていこう」というようなメッセージがダイレクトに伝わる曲だと思いました。今、楽屋とかでよく聴いています。

――他のメンバーの皆さんの反応はいかがでしたか。

みんな「めちゃくちゃオシャレじゃん」って言ってました。ボーカルの二人(八木勇征、中島颯太)は「今日、レコーディングするんです」って連絡をくれたりもしました。ただこの感じの曲はパフォーマーからすると踊るのが難しいんですよ。どんな振付になるか想像がつかない。

ボーカル二人が歌うだけというパターンもあるんですけど、せっかく主題歌なので全員でパフォーマンスはしたいなというのはあって。その話はこの間、みんなでもしたので、今はどんな振付になるか楽しみだなって思っているところです。

――まだ振付はできていないんですね。8月26、27日に行われる『FANTASTICS ARENA LIVE 2023 “HOP STEP JUMP” -THE FINAL-』で観られるんじゃないかと期待していたのですが。

ちょうどドラマも終盤に差し掛かったタイミングですしね。ただ現状だと曲を作っただけで、まだ何も決まってないんです。どうなるかはお楽しみにということで(笑)。

撮影/小嶋文子

――ドラマに対してのメンバーの反応はどうでしたか。

やっぱりいじってきますよね、みんな(笑)。「また服着てないじゃん!」とか。でもFANTAの中でこれができるのは僕しかいないと思っているので。他のメンバーも俳優活動はしていますけど、そこはちょっと毛色が違うし。

振り切れることも大事だと思ったし、僕も自分があと2歳若かったらやってなかったとも思うから、今だからこそできたチャレンジだとも思います。

――世界さんと大樹さんでFANTASTICSというチームをリーダーとして引っ張ってきたと思うのですが、俳優活動と両立して、FANTASTICSを外に向けて発信していくところは、大樹さんがこれまで大きく担ってきた部分だと感じています。責任感のようなものもあったのでしょうか。

最初の頃は、僕がFANTAという名前を広げなきゃいけないって、いろんな人たちから言われていたし、自分でもそれが役目だって言い聞かせながら活動をしていたので大変な部分はありました。いつの間にか自分一人で背負ってしまっているように感じていた時期もありましたね。

だけどそこからメンバー全員で主演のドラマ(『マネキン・ナイト・フィーバー』2020年放送)をやれるようになったり、それぞれにみんながドラマ、映画、舞台と経験をするようになって、その役目を分担できるようになったので、肩の荷が下りたというか、すごく楽になりました。

ただ楽にはなったけど、(アーティスト活動と俳優業の両立は)自分が始めたことでもあるから、そこでは一番になっておきたいという気持ちもあります。

それは昔からあって、LDHで役者をやるからには、劇団(EXILE)のメンバーにも負けたくないと思っていたし、自分にしかできない役で、コンスタントに作品に呼ばれる俳優でありたいと思っています。だから手は抜かないです。

ラブシーンって何度やっても難しい

撮影/小嶋文子

――大樹さんの中で、俳優活動とアーティスト活動はどのようにすみ分けているのですか。

スイッチは全然違いますね。FANTAやEXILEとして活動をしているときは、やっぱりグループとして見られることが多いので、FANTAだったらリーダーとしての発言や立ち回りをしなくちゃいけないとか、そういうことを考えています。

逆に俳優のときは、個人として、一人の人間として見られることが多くなるので、「どうせアーティストが芝居やってんだろう?」って思われないように、いち俳優としてそこに居られるようになりたいと思っています。

ただクレジットには必ず(EXILE / FANTASTICS)という名前を入れてもらえるようにお願いをしていて、そこではグループを背負っている気持ちもあります。

だからその現場で僕が何かヘマをしたら、グループの評価に直結すると思うから、そこには常に危機感と責任感を持ってやっています。それは他のメンバーも思っているとは思いますけど、僕はその想いがより強いですね。

――康祐を通して、これまで自分になかった感情を知れたとおっしゃっていましたが、それも俳優活動での魅力であったりしますか。

そうですね。やっぱり演じる役によって、終わったあとに得るものは全然違います。悩めば悩むほど得るものも大きいとも思います。今回もいい経験になったと思うことがたくさんありました。ラブシーンって何度やっても難しいなって思ったり。

撮影/小嶋文子

――ラブシーンの難しさってどんなところですか。他のシーン以上に見せ方や動きに制限がありながら、かつ感情も乗せないといけないと思うので、難しいんだろうなと想像はするのですが。

そうなんです。海外であればインティマシーコーディネーター(性的なシーンの制作において、性にまつわる専門的な知識をもとに、演技やメンタルケアに携わるスタッフ)の方がいて、監督が求める画をどのようにしたら実現できるのかを事前にディスカッションしてくれて、俳優には最低限の負担でやるというのがあるんですけど、日本ではまだその資格を持っている方自体が少数で、システム的に確立されていないんです。

だから役者頼りのところが多くて、軽い手順だけを決めて、あとは本番でお願いしますということも多いから大変ですが、そういうことをこの年齢で経験できたことは、いろいろ鍛えられたと思うし、その分、強くなれたと思います。

――日本はそういうケアの面で遅れているところも多くて、でも作品自体は増えてもいるので、なかなか簡単なことではないと聞きます。負担を感じて体調を崩す場合もあるとか。

僕もそういう話は耳にするので、それは自分自身も気を付けないといけないとは思っています。自分ができないと思うことは伝えることも大事だと。けど、それだけの覚悟を持って挑んでいる作品でもあるので、いろんな人に観ていただきたいですし、結果として何かを残したいと考えています。

――そういう責任感を持って作品に挑んでくださる方だからこそ、制作側にも大樹さんに任せたいという気持ちが生まれるのではないでしょうか。

それはうれしいとは思いますけど、自分が気づかないうちにそういうところを背負っている部分もあるなとは思います。

今がFANTAとして大事な時期

撮影/小嶋文子

――大樹さんは周りから頼られている印象があるのですが、逆に大樹さんが悩みを抱えたときはどうしているのですか。

幼なじみには何でも包み隠さず話しています。小中高とずっと一緒で、同じタイミグで上京してきて、今も同じマンションに住んでいるんです。

あとはメンバーにも話します。勇征とは一緒に旅行に行ったりもして、そういうときはお互いに素でいられるし。(木村)慧人ともよくご飯とか、サウナに一緒に行ってますけど、お互いに思っていることを飾らずに話していますね。

――ただメンバーって仕事仲間でもあったりしますよね。

確かにそうなんですけど、僕の場合は友達以上恋人未満というか(笑)。何でも言えるし、すごく頼りにしてもらっているなと感じています。

――他のメンバーに俳優としてのインタビューをすると、必ず大樹さんに相談したという話が出てきます。

あははは(笑)。マジで占い師かなにかと勘違いしているんじゃないかっていうくらい相談されるんです。僕もそこまでキャリアがあるわけではないから答えられないと思うこともあるんですけど、聞きやすいんですかね(笑)。でもそれはうれしいです。

撮影/小嶋文子

――いつも相談されてばかりのイメージがあったので、大樹さんの悩みはどうしているんだろうと思っていたんです。

もともとそんなに悩まない方でもあります。それに親友とか、メンバーとか、先輩とかに相談もできるので。岩さん(岩田剛典)にはよく家に呼んでもらって、一緒にお酒を飲みながら話を聞いてもらっています。それで話したら全部忘れる(笑)。

あとはサウナです。サウナに行っても悩んでいたら、それは本当の悩みだっていう名言があるんですけど、それくらいサウナに行けば何でも忘れられるんです(笑)。自分が悩んでいることがちっぽけに思えてくる。

――悩みを解消する方法を自分の中で身に付けているんですね。

お芝居では10代のうちに結構つらい想いもしたので、その経験が今となってはすごく生きているなと思います。

白濱亜嵐くんの主演作(『シュガーレス』2012年放送)で初めてドラマに出演させてもらったんですけど、説明セリフが多い役だったんです。なのに、本読みのときに監督から「大丈夫か、あの子」みたいなことも言われて。

けど撮影を続けていく中で、評価をしていただけるようになって、結果的に最終回では僕のセリフを台本1ページ分、増やしてもらえました。

他にも初舞台のときに、他の先輩を待たせて僕のシーンだけ7時間も稽古をやったりとか。そういういろんな経験があったから、今、伸び伸びといろんなことができているのだと思っています。

――そうやって積み重ねてきたことが、今、一つひとつ花開いているんですね。それはきっとFANTASTICSとしてもそうなんだろうなと感じます。

今がFANTAとしてめちゃくちゃ大事な時期だと思っています。それはHIROさんを始め、いろんな方々からも言われるし、僕ら自身もそういう意識でやっています。今が勝負だと思っているからこそ、いろんなことを成功させたいと思っています。

©ABC

――最後に、今後のドラマの見どころを教えてください。

ラブシーンが多い恋愛ドラマというイメージの方も多いとは思うんですけど、話が進むに連れて登場人物一人ひとりの誰にも言えない悩みや顔がフォーカスされていきます。後半になればなるほど、それぞれに対して「こういう一面があったんだ」と気づかされていくので、毎話、飽きずに観ていただけると思います。

オムニバスっぽい作りなので、「私の応援しているこのキャラクターはいつ登場するんだろう?」っていうドキドキ感も合わせて楽しんでもらえるし、一番はやっぱり“アラクオ”の5人が成長していく姿を見届けてほしいですね。

康祐と早苗で言うと、二人の時間を重ねていくうちに会話のトーンであったり、距離の詰め方が変わっていくので、そこも注目していただけると。

康祐が早苗に引っ張られて大人になっていく部分も、その逆で早苗が康祐に引っ張れることもあるので、お互いが成長していくところを、恋の行方も含めてどういう展開になるかを楽しんでいただきたいです。


センシティブな内容もあるドラマだけに、質問に答えるのも難しい部分もあったかと思うのですが、どんな問いにも真摯に答えてくださった大樹さん。

「頑張ったんだから、やっぱりたくさんの方に観ていただきたい」という想いで宣伝も積極的にしているというお話もされていましたが、この日も朝から夜まで取材を受け続ける中で、このような貴重なお話をしてくださいました。

大樹さんがさまざまな想いを抱きながら挑んだ本作を、ぜひお楽しみください。

ヘアメイク/中山伸二[CONTINUE]スタイリング/平松正啓[Y's C]

作品紹介

ドラマ『around1/4 (アラウンドクォーター)』
毎週日曜 夜11:55よりABCテレビ(関西)、毎週土曜 深夜2:30よりテレビ朝日(関東)、他にて放送
「TVer」「ABEMA」で見逃し配信1週間あり

(Medery./ 瀧本 幸恵)

© ぴあ朝日ネクストスコープ株式会社