佐藤大樹(EXILE / FANTASTICS)が地上波ドラマ初の単独主演を務めるドラマ『around1/4 (アラウンドクォーター)』が絶賛放送中だ。
タイトルになっている“アラウンドクォーター”とは、“アラサー”“アラフォー”などに並ぶ言葉で25歳付近の人たちのことを表し、本作ではそんな“アラクオ”たちが抱える悩みや葛藤を赤裸々に描いている。
佐藤が演じる新田康祐は、広告代理店に勤める営業マンで、仲間からは“万年セックスおばけ”と呼ばれるチャラ男。そんな康祐と学生時代のバイト仲間、早苗(美山加恋)、明日美(工藤遥)、直己(松岡広大)、一真(曽田陵介)という“アラクオ”の5人は、時折集まっては楽しくお酒を飲む仲だが、それぞれに打ち明けられない悩みを抱えて過ごしている。
毎話、個々のキャラクターの仲間には見せない顔が明かされていき、一見、悩みがなさそうな康祐にもコンプレックスがあることがわかる。高校時代から8年付き合っていた彼氏から振られたばかりという早苗との関係が変化する中で、その隠された一面が見えてくる。
性の悩みにも切り込んでいて、ラブシーンも多い本作だけに、それなりの心構えも持って挑んだという佐藤にロングインタビューを敢行。前後編に渡って公開する。
前編では、オファーを受けた際の率直な想いや、康祐を演じる上での苦労、共演者とのエピソードなどを語ってもらった。
クランクインが1話のラブホテルでのシーンだった
――テレビ朝日での初回放送(7月8日深夜2時30分~)前にインスタライブをされていましたが、放送直前はどんな心境でしたか。
ドキドキしていました。特に初回は皆さんの反応が気になって深夜まで起きていました(苦笑)。
――リアルタイムでツイートもされていましたよね。ファンの方の反応も見ていましたか。
放送中は自分が(ドラマを)観るので必死だったので、放送後にチェックをさせてもらいました。
――気になる反応は?
僕が演じている康祐は、常に周りに対して本心を見せずに仮面をかぶっているような人なんですけど、それが「何話くらいでみんなに伝わるんだろう?」と思っていたら、序盤から「康祐が切ない」とかのコメントをしてくださる方が多くて、「早いな」って(笑)。
僕自身は康祐がどういう人かを知って観ているから切ないと感じていたんですけど、それが早い段階から観てくださっている方にも伝わったのは良かったです。そこをわかって観るほうがこのドラマはより面白くなると思うので。
あとは「今まで大樹くんが出演したドラマの中で一番好きかも」って言ってくれるファンの方もいて、それは素直にうれしかったです。
――1話の時点ではそこまで康祐の内面を伝えるシーンが多くなかったので、大樹さんが見せる康祐の一瞬の表情とかで感じ取ってくれたということですよね。
僕自身、そこが届いてほしいと思っていたので良かったです。
――実際に放送を観てみると物語の流れの中で描かれるのでそこまで感じないのですが、やはり最初に本作の内容を知ったときは、性に関する赤裸々な想いが取り上げられるということもあり、攻めたドラマだなと感じました。大樹さんはオファーを受けたとき、どんな印象がありましたか。
昨年、ドラマ『liar』でラブシーンが多い役を演じていたので、そんなに期間を空けずこういうオファーが来たなとは思いました。
ただ今回、25歳という年齢の人たちが抱える想いを描いた物語ということで、今、僕は28歳なので、きっと30歳になっていたらできないだろうとも思ったんです。まだ年齢的に離れていない今しかできないことだと思ったし、求められているのであればチャレンジしてみようと思って決めました。
――不安はなかったですか。
正直に言うと、最初のころはありました。というのも、今回のドラマは原作とは内容がかなり違っているんです。原作には康祐が抱えているコンプレックスや悩みというのがなくて、僕自身「これをどうやって実写化するんだろう?」とは思っていたんです。
そしたら監督から、ドラマ版では康祐にこういうコンプレックスを与えたいと言われて、「なるほど」と。聞いていた話とは少し違うぞと(笑)。
――ですね(笑)。物語のキーとなるコンプレックスですよね。
しかもそれが誰にでも簡単に言えるようなことでもないので、そこを演じるとなったときは少し考えました。けど、オファーを受けたからには康祐という役を全うしたいと思ったので、そこからは不安に思うことはなかったです。
――決めたからにはあとはやるだけと。
はい。それに現場に入ったらそんなことを悩んでいる余裕もなかったです。撮影期間もタイトでしたし、今回、クランクインが1話のラブホテルでのシーンだったんです。だからもうやってやろうと(笑)。
――それも監督の戦略だったのでしょうか。最初にタガを外そうというような。
きっとそうだと思います。先にやってしまった方がいいって思ったのかなと。
――ラブシーンも多いということで、普段から大樹さんは身体を鍛えていらっしゃるとは思うのですが、何か特別な準備はしましたか。
もちろんしました。出演が決まってからクランクインまでは少し時間があったので、その期間はほぼ毎日ジムに通いました。(所属するダンス&ボーカルグループFANTASTICSの)ツアー期間でもあったんですけど、食事制限もして、かなりこのドラマのために身体は仕上げました。
六本木でワンナイトみたいなことは全くないです(笑)
――最初に原作・脚本を読んだときはどう思いましたか。
僕は“アラクオ”“アラウンドクォーター”という言葉自体、原作を読むまでは知らなかったので、25歳ぐらいの人たちがこんな悩みやコンプレックスを抱えていることも初めて知りました。
結構、衝撃的なことも多くて、特に脚本を読んだときにそういうふうに感じました。僕が知らなかっただけで“アラクオ”世代の方々には共感してもらえることが多いんだろうと思います。
原作は、僕はあまり漫画を読まないんですけど、本当に1日で読み終えてしまったくらいスラスラと入ってきました。原作の康祐はうまく世間を渡っていて、女の子にも親しみを持たれていて、人生が楽しそうだなと。もし自分が今の仕事をしていなかったら、理想的だと感じるような人物でした。
すでに5巻で完結してしまっているんですけど、他のキャラクターも魅力的で、その先も見てみたいと思うようなお話でした。
――大樹さんは現在28歳ですが、“アラクオ”を経験してみてどうでしたか。
自分が経験した25歳とは真逆の25歳を演じたので、自分じゃない誰かを演じるのは楽しいなと改めて思いました。
共感できない部分もありましたけど、そこは監督と何度も話し合いながら作っていきました。康祐ってものすごく生きづらい生き方をしている人で、人前にいるときはもう一人の自分を演じているから、すごく疲れるだろうなと思ったし、正直、撮影をしていて疲れることも多かったです。
けどそういう経験を28歳になった今できているのは、芝居の経験としても、僕自身の人生経験としても将来の糧になるだろうなと思いました。身体を張ったシーンもたくさんあったので、撮影が終わったときには達成感がありました。
――康祐とご自身が違うなと感じたところとは?
特にドラマ版の康祐は、先ほども少し言いましたけど、自分のコンプレックスや悩みを隠すためにメッキをつけているというか、仮面をつけながら生活しているようなところがあるんです。
僕も人前に立つときには“佐藤大樹”というものを演じているのかも知れないですけど、自分ではそういう意識はなくて、あくまでフラットに、等身大でいたいと思っていて。
だから、康祐が早苗や元カノのマキ(林田岬優)の前でメッキを張った状態でいてしまうのはまだわかるところもあるんですけど、男友達といるときもメッキを張っているのは……。本当に心を許して話せる人がいないんだと思ったので、そこは共感できないというか、気持ちを理解するのが大変でした。
親友とか、幼なじみとか、何も飾らずに話せる人っていると思うんです。僕だったらメンバーもそうですし、普段から人と接するのが好きで、仲間と居ることが多いので、その辺りは康祐とは違うと思います。
あとは初回のセリフでもあったんですけど、六本木でワンナイトみたいなことは全くないです(笑)。僕はEXILE TRIBEという男の集団の中で育ってきたので、飲み会でもシャンパンというよりはレモンサワーなので、そこも全然違いました。
康祐は演じていてホントにどっと疲れる(笑)
――すでにクランクアップをされたとのことですが、仕上がりが気になるシーンはありますか。
それで言うと、まだ僕も出来上がったものを観れていないので、5人で一緒に撮ったシーン以外は他の人たちがどんなふうに演じているか知らないんです。
だから初回放送を観て、それぞれに対して5人一緒のときはこういう顔をしているのに、一人になるとこんな顔をするんだという発見がありました。
美山さんは同じシーンが多いのでそれなりにわかっていたんですけど、明日美を演じている工藤さんは大変だっただろうなとか、陵ちゃん(曽田)は等身大でピッタリだなとか、広大くんは、瞬(阿久津仁愛)とのシーンは今後の話題になりそうだな、スピンオフがあってもいいなとか、自分が現場では見れていないシーンのみんなが気になりました。僕も視聴者の方々と一緒のタイミングで楽しんでいます。
――演じていて大変だったシーンは?
1話にもあったんですけど、早苗と二人で夜道を歩くシーンです。何気ないように見えるんですけど、同じようなシチュエーションが何度か出てくるんです。
監督には、初回と最終回では同じシチュエーションであっても、二人の関係性が変わっていることを見えるようにしたいという狙いがあって、そこはリハーサルも含めて何度も撮り直しました。
その上、深夜の撮影だったので頭も回っていなくて(苦笑)、さらに康祐は基本的に誰かといるときはハイテンションなので、そのバランスも大変で。康祐は演じていてホントにどっと疲れるんですよね(笑)。
――では楽しかったシーンは?
5人で何気ない会話をしているときは楽しかったです。お酒を飲んだあとにふらふらと歩いているシーンとか。初回を観て思ったんですけど、アドリブの部分も結構使われていました。直己が店長(藤森慎吾)におにぎりの具を聞くところとか。
――ツナマヨのところですか。
そうです。アドリブだなってわかる間の取り方ですよね(笑)。僕も観ながら「おにぎりにたくあんって」って思いました。
監督から「ここは自由にしゃべって」と言われることが多かったので、みんなどういうアドリブを入れてくるのか、誰から話し出すのかとか、探り合いながらやるのは楽しかったです。
――そういう場面ではどなたが主導権を握るのですか。
シーンによって役割として話せる人とそうでない人がいるので、その辺りはありつつ、僕とか広大くんとか、あと工藤さんはキャラクター的によくしゃべるというのもあって多かったと思います。きっと(アドリブを入れるのが)好きなんだとも思います(笑)。
――本番前に多少は打ち合わせをするのですか。
いえ、全くないです。本番一発です。ただそういうわちゃわちゃしているシーンはわかるんですけど、今回は結構、早苗と二人のシーンでもアドリブがあって。なかなかカットがかからないので、そこを美山さんと埋めていくことは多かったです。
監督が二人が何を言うかを待ってるみたいな空気感を出してくるので(笑)、それに全力で応えるというのをやっていました。
――大変そうですが、本作はそういうリアルな部分が描かれている物語ですからね。
そこを表現したくて監督はやっていたのかなって、今となっては思います。「等身大のリアルを追求したい」とも言っていたので、アドリブのときに生まれる空気感とかをそのままドラマに乗せたかったのかなと思います。
美山さんが一緒だから乗り越えられた
――共演者の方々の印象を教えてください。まずは早苗役の美山加恋さんから。
この作品自体、撮影スケジュールがかなりタイトだったんですけど、美山さんは同時期に舞台にも出演されていて、アニメの声優のお仕事もしていて。朝からドラマの撮影をして、舞台の本番をやって、また夜から一緒に撮影をするという日もありました。
撮影が深夜までかかった日も、翌日は舞台の昼公演があると聞いて、体力お化けだなと(笑)。けど、そのくらい大変なことをできるのは、お芝居が好きじゃないと無理だとも感じたので、僕より年下ではありますけども俳優さんとして尊敬しています。現場では弱音一つも吐かないんです。
美山さんは僕のことを「戦友」と言ってくださったんですが、まさにそのような感じで、信頼関係がありました。楽ではないシーンも多かったですけど、美山さんが一緒だから乗り越えられたと思ったし、お互いに助け合いながら撮影ができました。
――「助け合いながら」とは、具体的にはどんなことですか。
二人でのシーンが量的に多かったこともありますけど、アドリブの場面も含めて、お互いに気を遣いながらも遠慮はせずに、康祐と早苗としてやれたことです。
二人とも役として必要なことははっきりと伝えるし、見え方に対しても、視聴者の方のことも考えながら、もっと康祐がこうしたほうがいいとか、早苗がこういうアプローチをしたほうが良く見えるとか、話し合って決めていました。
康祐と早苗の関係性を理想的に見せるためにどうすればいいか、監督を含めた3人でたくさん話したので、そこは助けられましたね。それに、美山さんは僕よりも圧倒的にお芝居のキャリアがあるので百戦錬磨というか、僕はもうそこに委ねて、自分はどんと構えられていれば大丈夫だと思ってやっていました。
――美山さんの演技に引っ張られたと感じるシーンはありましたか。
たくさんありますけど、5話のラストから6話の頭につながるシーンで、早苗が(元恋人の)健太(三宅亮輔)に対する想いを、部屋で泣きながら康祐に打ち明ける場面は本当に心が動かされました。
すごく大変なシーンでもあったんですけど、本気で早苗が悩んでいることが伝わってきて、ほっとけない存在に見えました。
現場に行くのは毎日楽しかった
――明日美役の工藤遥さんの印象は?
肝が据わってる方だなと思いました。めちゃめちゃムードメーカーで、スタッフさんに「終わったら飲みに行きましょう!」とかって声をかけたり、工藤さんが現場にいるだけですごくやりやすくなるし、助かるなと思っていました。
5人の中では一番役柄とご本人のイメージが近いかな。今後、明日美というキャラクターがどう変化していくのか、いち視聴者としても楽しみです。
――直己役の松岡広大さんは?
広大くんは絶対に自分より年上だろうなと思っていたら、実は年下でした(笑)。すごく教養があって、僕にはない部分を一番持っている方です。現場で監督たちと役作りに関してセッションしているのを見て、頭もいいし、お芝居に対しての真摯な姿勢を感じました。
直己はサパークラブで働いているので、シャツの前を開けることとかもあって、クランクインの日に「身体づくりについて教えてください」って聞いてきてくれて。僕で役立てることがあればと、LDHが経営しているジムを紹介したり(笑)、次の日にはプロテインとシェイカーのセットを持って行ったりしました。
食事制限もしていたので、現場で休憩に入る度に「これは食べてOKですか?」とかって聞きに来てくれて。そこはすごくかわいかったですね。ギャップがいいなって(笑)。
――直己のキャラクターについてはどんな印象ですか。
僕は明るいキャラクターを演じることが多いので、直己みたいな役にはすごく興味があって、演じられるのがうらやましいなと思っていました。原作では直己と瞬のやり取りが一番好きだったので、ドラマでも同様、二人の世界をもっと観たいなと思っています。
――一真役の曽田陵介さんは?
曽田くんのことを、僕は普段、陵ちゃんって呼んでいて、共演は今回で3回目になるんですけど、前の2回はちらっと一緒だっただけなので、念願のがっつり共演になりました。
出演が決まる前に、「大樹くんのドラマのオファーをいただいてるんですけど、どういう役ですかね?」って、電話もしてきてくれて。僕はその時点で原作を読んでいたので、「こういう役で、陵ちゃんに合うと思う」と話したら、「大樹くんが主演ならぜひやらせてもらいます」と言ってくれました。
一昨日も、ドラマが終わったから久々にお酒を飲もうということで、一緒にご飯を食べに行って、記憶がなくなるくらいまでお芝居の話とかをしていました(笑)。プライベートでも信頼を寄せている俳優さんです。
陵ちゃんは普段、悩んでいる姿とかを絶対に見せないんですけど、そこは一真とリンクしていますね。だから1話で一真がATMで預金残高を確認しながら彼女に電話しているときの顔とかは、「陵ちゃんも実はこうなのかな?」って思いながら観ていました。
――撮影現場の雰囲気はどうでしたか。
5人一緒に撮影するシーンが3日間しかなくて、ここからようやく仲良くなれるのにっていうタイミングで終わってしまったのですごく寂しい気持ちがあったんですけど、それぞれの役割分担がしっかりしていて、非常にやりやすい現場でした。
何より、監督を始めとするスタッフの皆さんが現場を盛り上げてくださったので、ドラマの内容としても決して簡単ではなかったし、スケジュールも過酷でしたけど、みんなと一体になって作り上げられたので、現場に行くのは毎日楽しかったです。
*(後編に続く)【FANTASTICS 佐藤大樹】「10代のとき結構つらい想いもした」ドラマ『around1/4』インタビュー<後編> では応援してくれているファンの方々への想いや、FANTASTICSのメンバーとの関係性、アーティスト活動と俳優活動を両立する上での姿勢など、さらに大樹さんのパーソナルに迫ります。
ヘアメイク/中山伸二[CONTINUE]スタイリング/平松正啓[Y's C]
作品紹介
ドラマ『around1/4 (アラウンドクォーター)』
毎週日曜 夜11:55よりABCテレビ(関西)、毎週土曜 深夜2:30よりテレビ朝日(関東)、他にて放送
「TVer」「ABEMA」で見逃し配信1週間あり
(Medery./ 瀧本 幸恵)