渡邊雄太がJr.NBAクリニックin JAPANに参加「シュートが入らなくても練習し続けることが大事です」

渡邊雄太登場に子どもたちは大歓声!

7月16日、東京都内で「Jr.NBA Powered by B.LEAGUE Basketball clinic in JAPAN」が行われ、13歳〜15歳の男女100名が参加。帰国中の渡邊雄太(サンズ)も参加し、バスケットボールを共に楽しみ、子どもたちからの素朴な質問にも答えた。

Jr.NBAはユース世代に向けたバスケットボールプログラムで、基本的なスキル、ゲーム、核となる価値観(チームワーク、リスペクト、決断力、コミュニティ)を教えるもの。クリニックは2部構成になっていて、まずはカルロス・バロカ氏(NBAアジアバスケットボール部門アソシエイト・バイス・プレジデント)が指導に当たり、“コートで最高の笑顔を見せてほしい!”と言葉をかけ、楽しむことを強調して選手たちを盛り上げ、コーディネーションのトレーニングなどを行っていく。

そして盛り上がった中で、渡邊が登場。会場は歓声に包まれた。積極的に声掛けをし、ハイタッチをしていった渡邊は、子どもたちにダンク、ブロックショットも披露。数十分共に汗を流すと、最後は子どもたちからの率直な質問に答えるQ&Aを行った。

今回のクリニックは、依頼があると渡邊本人か「ぜひやりたい」となって実現したもの。渡邊にとっては子どもたちと触れ合ういい機会になったほか、子どもたちにとってもまさかの人物に会えてまたとない時間となったはずだ。

<参加選手たちとのQ&A>

Q.いつものシュート練習はどのような感じでやっていますか?

「今はとにかく反復練習で、試合で使うようなシュートを毎日打ち続けてという感じです。自分もみんなが同じようにずっとずっと打ちつづけていて、とにかく長い時間練習して、最近ようやくシュートが入るようになったんで、この中にもシュートが苦手という人はたくさんいると思うけど全然焦らず。シュートが入らなくても練習し続けることが大事です」

Q.小学校にやっていたシュート練習はまだ続けていますか?

「実はもうやってないんだ。今はNBAという環境がちゃんと整っているからね。昔は練習するコートもなかったから、小学校に行って最初ドリブルの練習をして、校庭をぐるぐる走って、最後にお父さんと一緒にシュートの練習をやっていたんだ。それを知ってくれているというだけでもうれしいよ。ありがとう。真似してくれているの? 続けてください」

Q.うまくいかない時とか試合で結果が出ない時に、モチベーションをどう保っていますか?

「すごいイメージが大事になってくるんだ。自分が活躍できていた時期もあるから、うまくいかない事があるわけだから、うまくできている時のことを思い返したり映像を見たりとかするよ。それでもNBAの中ではまだ下手くそだと思っているからうまくいかなくてあたりまえ、だと思っているんだ。さっきも行ったけど、君たちの年齢ではうまくいかないことが多くて当たり前だと思っている。だから、へこんだりとか落ち込んだりとかする必要は全然ないよ。僕は君たちの年代の時には君たちよりも下手くそだったからね(笑)。今は、まだ自分が成長している過程だという風に考えてやっていけば、成長に繋がっていくので頑張ってください」

Q.試合前に絶対やっていることはなんですか?

「逆にルーティーンというか、試合前にこれを必ずやるみたいなのは、あまり作らないようにしているんだ。それができなくなった時に、気持ち悪くなっちゃうから。部屋を出る前にシャワーは浴びるけどね、リフレッシュするためにだよ」

Q.体が大きくしたいんですけど、どうすればいいですか?

「君と同じ13歳の時は俺もガリガリだったんだ。今でもNBAでは細いけどね。いっぱい食べて、いっぱい寝てください。僕の場合は、親が大きかったのもあるけど、中学生の時はめちゃくちゃ寝ていたから、それこそ朝練があって9時ぐらいに寝ても6時とかに起きなきゃいけなかったけど。それでも9時から6時まで絶対寝てたし、土日とかはもっと長く寝ていたよ。 しっかり食べて、しっかり寝るというのをやってください」

Q.NBAに行って、一番苦労したことはなんですか?

「今まで試合に出られないことが多かったから、やっぱそこが大変だったね。 やはりバスケやってる以上、試合に出たいし、試合で活躍するために、一生懸命頑張っているんだけど、NBAの世界はすごい選手ばかりだからね。試合に出られない時期が続いた時は正直すごく大変でした」

Q.プロに行ける選手と行けない選手の違いはなんですか?

「これは一番単純で、努力できる選手とできない選手の違いだと思います。走るのが早いとか高く跳べるとか体が強いという選手はたくさんいるけど、その選手でもNBAにたどり着けないケースがたくさんあるんだ。何がいけないかというと、努力ができない。努力ができる選手はNBAに残る。その中で活躍できる。ケビン・デュラント(サンズ)は昨年チームメイトだったんだけどとても一流なんだ。練習の濃さが違う。一つ一つのドリブル、パスでも全部すごい。NBAで十何年トップにいる彼がそれぐらいやってるから、俺ももっとやらないといけないなという気持ちにもなるし、だからこそ成功しているんだと思う。行けない選手たちはやっぱり努力はできない」

Q.私のチームは今年できたチームで、チームワークをもっと高めるためにはどうですればいいでしょうか?

「チームワークは時間がかかるものかと思うので、アドバイスするなら、いかにチームとして毎日いい練習として、いいコミュニケーションを取るのが大事かな。チームワークは急に良くなったりしない。できたばかりのチームなら、良くなくて当たり前だから、毎日いかにいい関係を築いて、毎日練習をして。いいコミュニケーションを取るかだと思います」

<記者に向けてのQ&A>

Q.NBAよるグローバルなプログラム、非常に意味のあることだと思うんですけど、 こういったイベントのメリットはどこにありますか?

「やっぱりこういう雰囲気の中でコーチに教えてもらったり、NBA選手と生で触れ合う機会は、なかなか日本にいるとない。こういう機会を子どもたちに与えることができればなとずっと思っていたので、 今回、お誘いをいただいたんで、ぜひやらしてくださいっていうことでやりました。もっとこういう機会が増えて日本からどんどんNBA選手が出てくれば本当に嬉しいなと風に思うし、NBA選手になった選手が子どもたちに経験とか技術を教えることができたら、どんどん日本のバスケのレベルも上がっていくと思うので、そういうふうになればいいなと思います」

Q.日本でも早い段階から海外に行くことの方が世界に通用するっていう流れがあると思います。渡邊選手もそうだと思いますが、海外の良さ、日本の課題というのはなんでしょうか?

「日本はまだ文化的にバスケットが根付いてないと思いますし、体育館の数も足りてないと思います。たくさんの人数が集中して1人1人の練習時間が長く取れないことがあると思うので、もう少し体育館が増えて少人数でできる環境が増えてくれば、もっと技術的にも上がってくると思います。ただ日本でも今やれる最大のことはやっていると思うし、最近クラブチームとかも増えてきて、別の環境できることも増えているので色々な環境でバスケをやることができれば、成長につながると思います」

Q.NBAに入るために最も大事なことはなんでしょうか?

「ブレないということだと思います。プロを目指すうえで、いろいろな壁に当たるので。上を目指すほど競い合わないといけないし、上にいる選手を相手にしなければいけなくなる。自信をなくす時期もあるので、いかに自分をブラさないか。自分がやってきたこと信じてやり続けられるかということが大事です」

Q.昨日もクリニックをやられていましたが、子どもたちからもらったものはありますか?

「子どもたちを見ていて、本当に元気で、楽しそうにバスケをやりますね。自分も調子が悪い時はバスケを楽しめない。調子がいい時期はバスケが楽しいし、楽しそうにバスケをやるねと言われるんです。そういうところは改めて学んだ部分、しっかりこれからもいい顔でバスケットをやりたいと思います」

Q.この年代にとっての必要なメンタリティは?

「やはり壁にぶつかるので、いかにぶれない強い気持ちを持って練習できるかですね。周りの大人がいかにその背中を押してあげる、サポートをしてあげるかというのが大事になってくると思います。子供たちだけではなかなかやりきれない部分があるので、だからこそ指導者もどんどんレベルが上がっていけば、子供たちのレベルもどんどん上がってくるじゃないかなと思います」

Q.クリニック中、笑顔が印象的でしたが、この時間は今後どう生きますか?

「すごくリラックスしてやれたと思います。仕事として依頼を受けてやらせてくださいという形でお願いしたんですが、来て子どもたちの顔を見た瞬間、仕事だというのを忘れて楽しんでしまいました。それがバスケのあるべき姿だと思いますし、楽しそうにバスケをやるのを見て、自分は仕事で稼がしてもらっていますが、バスケを仕事として捉えてしまうとこれ以上成長できなくなると思うので、バスケを始めたのは好きだからなので忘れずにやっていきたいと思います」

Q.日頃から発信している。これ伝わっているなと実感するタイミングはありますか?

「先程のQ&Aで自分が子供のころにやっていたことをやっている子がいましたが、ああいうのは自分が発信したことは伝わっているんだなと思いますし。あの質問はうれしかったですし、僕も練習環境がない中で親が考えて工夫してやってくれて、今につながっている。だから、あのシュート練習でも、できる環境でやれることを見つけてもらえたらいいですね」

Q.オフコートで意識していること?

「みんなの手本にならないといけないと思うので、日本でいうと子供たちはNBAなら僕か八村塁も見て育つと思うので、そういう意味では僕らはしっかりオフコートでもちゃんとしているというのを見せて、コート上だけではないんだよと見せられれば、子どもたちもバスケだけをやっていくわけではないので。伝えていきたいですね」

Q.子供たちからの純粋な質問を受けての感想を教えてください。

「とにかく元気だな、明るいなというのと、なかなかシーズンが始まると子どもたち相手にQ&Aをやる機会はないので、子どもたちを相手に質問に答えるのはいつもと違って楽しかったです」

Q.唯一の武器といったらなんですか?

「去年、ようやく3Pシュートが武器として、言えるぐらいの形にはなったかなと思っています。自信を持って打てているので今後も、武器としてやっていかないと厳しいかなと思っているし、さらに伸ばしていきたいです。

Q.今日は教える立場としてどんなことを考えていましたか?

「昨日とちがって年代が一つ下がっていたので、自分も楽しんでいる姿を見せたり、よりバスケを楽しいんだよと感じてほしかった。言わなくても子どもたちは楽しんでいましたけどね。年代が変わると教え方もかわるかなと思うので、喋り方とかをこうしようとかは考えていました。ダンク、ブロックは見せてあげたいなと思っていました」

Q.子どもたちからエネルギーをもらってワールドカップでどう活躍したいですか?

「日本でワールドカップやれる、本当に一生に一度の経験だと思います。僕自身がアメリカでプレーしているので、日本のお客さんの前でプレイすることができない中で、自分が成長した姿を見せられたなと思っています」

Q.子どもたちからの質問に対して“努力”という言葉を使っていましたが、渡邊選手にとって努力とは? その結果、得たものを教えてください。

「自分の目標や夢を叶えるためにはやっぱ絶対当然欠かせないものだと思っています。NBAで生き残っている選手はみんなが努力していますし、そうでない選手は努力ができてなかたり、環境について言い訳をしたりする選手がすごく多いんです。それを5年間NBAの中で見てきて勉強させてもらって部分もあるし、そこは今後も継続して努力は続けていかなきゃいけないなと感じています。

それと努力を続ければ、継続すれば、何かしらの形でご褒美が返ってくるなというのは節目で思っていました。あきらめそうになった時もありましたし、もうやめようかなと思った時もあったんですけど、もう1年頑張ろう、もう1年頑張ろうと続けていたら、結果として残るようになってきた。すべての努力が報われるとは思わないですけど、少なからず何かしらのご褒美が自分に返ってくるんじゃないかなと思います」

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