[高騰打破]堆肥を使いやすく ペレット化、混合肥料…実証進む

混合堆肥複合肥料を施用した園地でのブロッコリーの調査(徳島県上板町で=JA板野郡提供)

高騰が続く化学肥料の使用量低減などにつなげるため、地域にある堆肥を使いやすくする実証が生産現場に広がってきた。農水省の支援事業を活用するなどし、ペレット化や混合堆肥複合肥料にするなどして扱いやすくし、広域での利用を目指す例もある。

農水省は2022年度補正予算で「国内肥料資源利用拡大対策事業」を措置。輸入原料に依存した肥料から、国内資源を活用した肥料への転換を進めるのが狙い。6月からの秋肥価格は下落したが、依然高水準な上、堆肥は十分に利用されていない地域もある。

耕畜連携が始動

京都府では、鶏ふんを原料とする肥料で飼料用米を生産する耕畜連携が動き出した。尿素などを加え栽培に適した窒素量に高めた上で、使いやすい粒状のペレットに加工した肥料を試作。臭いや粉じんが抑えられ、高価な堆肥散布機も不要になる。

実証は、畜産農家や耕種農家などでつくる京都府飼料用米生産利用推進研究会が取り組む。亀岡市などの5カ所計84アールで散布し、生育などを調べている。府は、飼料用米保管や堆肥輸送などへの補助事業も検討している。

JA東日本くみあい飼料(群馬県太田市)も、茨城県坂東市にある直営の養豚場で発生した豚ぷん堆肥をペレット化する設備を年度内に整備する。

豚ぷん堆肥は現在、近隣の耕種農家などが引き取り、農地に還元している。新たな設備は24年稼働で、25年度にはペレット堆肥を年間1300トン製造することを目指す。群馬県みどり市にある同社肥料工場からの流通を検討する。

価格抑えて提供

徳島県のJA板野郡は、野菜農家で豚ぷんの入った混合堆肥複合肥料の実証を進める。昨年度から試験的に使い始め、来年度からの本格導入を目指す。豚ぷんが30%含まれた混合堆肥複合肥料「エコレット288」(朝日アグリア)をブロッコリー部会の数戸の農家で散布した。

混合堆肥複合肥料を施用した園地でのブロッコリーの調査(徳島県上板町で=JA板野郡提供) 施肥基準量は10アール当たり3~8袋(1袋20キロ)。豚ぷんの他に、化学成分も含まれる。同社によると、従来の同等な有機質肥料よりも価格を抑えた。JA西部事業所は「ブロッコリーは、根張りが強くなり食味も向上した」とする。

農業者段階でも実証が進む。島根県大田市のはね営農組合は、機械化で鶏ふん堆肥を散布する体制を整え、肥料コストを減らす。同組合の竹下正幸組合長が経営する旭養鶏舎の鶏ふんを発酵させ、散布機などで主食用米と飼料用米約25ヘクタールにまく。一般的な元肥一発肥料に比べて20~25%のコスト削減が見込める。竹下組合長は「地域一体で国内資源の活用を進めたい」と意気込む。

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