【聞いたことある?】「馬乳酒」について

「馬乳酒」をご存知ですか?日本人には全く馴染みのないお酒ですね。しかしそのネーミングから、馬乳で造るお酒だろうということは想像に難くありません。実際のところ、馬乳が原料のお酒は存在するのでしょうか。今回は馬乳酒について調べてみました。

実はお酒ではない?

馬乳酒とは、主にモンゴルを中心とした中央アジアの遊牧民の間に古くから伝わる伝統的な飲み物です。6月から9月頃に、モンゴルなど馬の飼育が盛んな地域を中心に、馬の生乳を原料にして作られています。

馬乳酒は馬の出産・子育ての時期に、子馬の成長を妨げない範囲で搾乳して作られるので、作る時期が限られており大量生産はできません。
さらに馬の場合、牛とは違い一度に沢山の量を搾乳することができません。そのため1日に何度も搾乳をしなければなりません。また、発酵を進めるために容器の中で何千回も攪拌する必要があります。とても手間がかかる上に生産時期が限られているので、非常に貴重な飲料なのです。

名前に「酒」とありますが、実はお酒ではありません。馬乳酒に含まれるアルコール度数は約1%~1.5%で、甘酒程度のアルコール度数しか含まれていないのです。

風味や栄養は?

馬乳酒は、馬から搾乳した生乳に乳酸菌や酵母を加え、発酵させて作ります。アルコール度数が低いので、モンゴルでは健康飲料として子どもやお年寄りも飲んでいます。中には主食として、1日に数リットルも飲む人もいるそうです。
また、飲用としてだけでなく治療薬として服用したり、肌に塗ることで美肌効果や虫刺されに効き目があると言われています。

馬乳酒は微炭酸の飲料ですが、発酵臭や強い酸味、苦みなど独特の風味があります。日本人には飲み慣れない独特の味ですが、飲むほどにクセになるという人もいるようです。

馬乳酒は、タンパク質や脂肪、ミネラル、ビタミンC、乳酸菌などを豊富に含んでいます。そのため胃や腸の働きを助け、体調を整えるなど、健康増進に役立つといわれています。
特にビタミンCやカルシウムは、遊牧民であるモンゴルの人々に不足しがちな栄養素です。それらを多く含む馬乳酒は、モンゴルの人々には欠かせない飲み物なのです。

馬乳酒は1リットルあたり約400キロカロリーです。1997年におこなわれた調査によると、モンゴルの人が1日に飲む馬乳酒は平均で4リットルだそうです。4リットルも飲めば、1日に必要なカロリーが摂れる計算になりますね。

馬乳酒とカルピスの関係

日本人なら誰でも飲んだことのあるカルピスですが、そのルーツはモンゴルにあったという事実をご存知でしょうか?

カルピス株式会社創業者の三島海雲氏は、仕事でモンゴルを訪れた際に、現地の人に勧められて馬乳酒を飲みました。飲み続けているうちに、弱っていた胃腸の調子がすっかり良くなったそうです。このことに感激した三島氏は、現地で馬乳酒の製法を学び、日本に戻って馬乳酒のような乳酸菌飲料を開発した結果、カルピスが誕生しました。

日本でカルピスが商品化されたのは1919年のことです。発売以来、国民から愛され続けているカルピスの起源がモンゴルにあったとは、驚きですね。

日本でも馬乳酒を飲める?

日本から海外のお酒を購入することは簡単ですが、馬乳酒に関しては日本で飲むことはほとんどできないと言われています。馬乳酒は鮮度の問題から、輸入が困難なのです。

もし馬乳酒を飲みたいのであれば、モンゴル料理店なら扱っている場合もあります。ただし、ボトルに詰められた馬乳酒よりも、現地で飲む馬乳酒の方がフレッシュで美味しいということです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

馬乳酒はモンゴルなどの遊牧民を中心に飲まれている飲み物です。アルコール度数が少ないので、お酒には分類されません。馬乳酒は栄養価が高く、モンゴルなどでは子どもからお年寄りまで飲んでいます。

13世紀にシルクロードやモンゴルを旅したマルコ・ポーロは、『東方見聞録』の中で、馬乳から造られたお酒について、「白ワインのような風味のある飲み物」と紹介しています。
また馬乳酒は、チンギス・ハーンの生きていた12世紀には既に存在していたという記録があるそうです。

日本ではほとんど馴染みのない馬乳酒ですが、造られた歴史はとても長い飲み物です。また、日本の国民的飲料が、この馬乳酒と浅からぬ縁があるということも驚きです。機会があれば、本場の馬乳酒を是非飲んでみたいものですね。

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