一万人プール、入場減「生き残りレース」 少子化、レジャー多様化 海なし県の海として 開業50年㊥

草が生い茂る砂沼サンビーチのプールサイド。奥はウオータースライダー

 プールサイドに生い茂る草。間からのぞき見えるウオータースライダーの姿が、かつてこの場所がレジャープールであったことを認識させる。真岡市から南約30キロにある「砂沼(さぬま)サンビーチ」(茨城県下妻市)は2018年に営業を終えた。

 サンビーチは茨城県開発公社が整備し、一万人プールの6年後となる1979年に開業した。プール面積は約1万1600平方メートルで一万人プールとほぼ同規模。井頭公園管理事務所の大森計(おおもりけい)さん(52)は「立地的にもライバル施設だった」と振り返る。

 しかし開業後20年間は年間平均約20万人だった入場者数が、閉業前の5年間は約11万6千人に減少した。老朽化が進んだ施設の修繕に多額の費用を要することなども踏まえ、営業終了を決めたという。

 近くに住む会社員女性(74)は「名前も広く知られていたし、慣れ親しんだ遊び場だったのですごく寂しい」と名残惜しそうに話す。

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 レジャープールの運営は全国的にも厳しさを増している。2021年度にはかつて東洋一をうたった埼玉県上尾市のさいたま水上公園が閉鎖。県内でも今年、壬生町の黒川の里ふれあいプールの閉鎖が決まった。共通する要因は少子化の進行とレジャーの多様化、施設の老朽化だ。

 道路網の整備による影響も否めない。08年、栃木│茨城両県間で北関東自動車道が全線開通。本県から海は、かつてよりはるかに近くなった。

 そうした中、一万人プールは11年の東日本大震災で被災した。総事業費約20億円の大規模改修を施したものの、老朽化した機械や電気設備などはまだ残る。ここ数年は年間3千万円強を設備の更新や修繕に充てているが、県公園事務所の担当者は「予算があればもっと手当てしていかなければならない」と指摘する。耐用年数を迎えても、安全に影響がない設備は「だましだまし使っている」のが現状という。

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 開業後の10年間、入場者数は年間平均約30万人に上った。しかしその後は減少傾向となり、1990年代は約23万人、2000年代は約14万人に減った。その後の10年代は、震災の影響で休業した11年と一部オープンにとどまった12年を除くと、約15万人と横ばいが続いている。

 逆風の中、ニーズに即した改修による施設の魅力向上や、閉鎖した近隣プールの受け皿となることで入場者数はなんとか踏みとどまっている。大森さんは、置かれている現状をこう表現する。「生き残りレースになっている」

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