公文書あるのに記録なし? 政府、虐殺巡り評価避ける

参院内閣委で質問する立憲民主党の杉尾秀哉氏(左端)=5月23日

 6月21日に閉会した通常国会で、100年前の関東大震災で起きた朝鮮人や中国人らへの虐殺を巡る質疑が2回あった。いずれも野党議員が軍隊や警察などの関与を示す公文書を基に見解をただしたが、政府は「記録が見当たらず、答えるのは困難だ」との答弁に終始。識者は「史料への評価を避け、関与を否定したいのでは」と指摘する。

 1回目は5月23日の参院内閣委員会。立憲民主党の杉尾秀哉氏が、虐殺された人の遺骨の隠蔽に触れた朝鮮総督府警務局の文書の写しを示し、虐殺の関連記録の精査を求めた。この文書は国立国会図書館に所蔵される。

 だが谷公一国家公安委員長は「政府内に事実関係を把握できる記録が見当たらない」と述べ、精査しない意向を表明。7年前の熊本地震で出回った流言を持ち出して論点をすり替えた。

 6月15日の参院法務委では社民党の福島瑞穂党首が質問。内務省警保局が朝鮮人による放火などの流言を事実とみなして取り締まりを求めた電報について、政府が保管を認めた。一方、電報が虐殺にどう影響を与えたか、見解は答えなかった。

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