姉妹の道、まだ続く 金城、川井涙の敗退 世界レスリング代表決定プレーオフ

  ●梨紗子「簡単にサヨナラ言えない」

  ●友香子「2人で戦えたらな」

 レスリングの非五輪階級の世界選手権(9月・ベオグラード)代表決定プレーオフは17日、東京都内で行われ、東京五輪金メダリストで姉妹の金城梨紗子選手(28)=サントリー、津幡町出身=と川井友香子選手(25)=同=がいずれも初戦で敗れ、代表を逃した。姉は「簡単に引退、サヨナラと言えないです」と胸の内を語り、妹もわずかに残る五輪切符を念頭に「2人で戦えたらな」と現役続行の意欲を示した。

 東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンターで無観客で行われたプレーオフ。先に登場したのは65キロ級の妹だった。姉が見守る中で挑んだが、尾崎野乃香選手(慶大)に防戦一方で0-4で完敗した。

 続く59キロ級に出場した姉は南條早映選手(東新住建)を巧みな組み手とタックルで6-0とリードしたものの、残り1分で押し込まれ、終了1秒前に捨て身の首投げを食らって6-6。最後のポイントを取った選手が勝者となるルールで敗者となった。

 そろって会見場に現れた2人は涙が止まらなかった。去就についての質問が飛ぶと、姉は「せかしますね」と言って、報道陣を笑わせる余裕も見せたが、五輪女王2人は苦悩の表情だった。

  ●「ママ」として

 それでも姉は「やっぱりレスリングが大好き。離れられない」ときっぱり。「五輪が全て」の意識は結婚と出産を経て変わり、今は「ママアスリートでも世界と戦えることを証明したい」と願う。それだけに「(今回の敗戦は)産後復帰の壁を高くしているようで情けなく思う。娘に金メダルをかけてあげたかった」と吐露した。

 姉妹は6月の明治杯で世界選手権代表を逃し、自力でのパリ五輪出場は消えたが、世界選手権に出場するライバルがメダルを逃せば自力出場の芽が「復活」する。

  ●3日前まで悩む

 妹は明治杯に敗れた際「やり切った」と引退も脳裏に浮かんだだけに、今回のプレーオフも「3日前まで出場するか悩んだ」と明かした。それでも「出場できたことは将来の自分に誇れる。自分を褒めたい」とうなずいた。

 会見の終盤は互いを認め合う、いつもの姉妹に戻っていた。姉が「3姉妹で一番レスリングに向いていないと思った友香子がここまで頑張ってきた。尊敬している」とたたえると、妹は「お姉ちゃんは本当に強い人」とまた涙。女性スタッフに借りたハンカチはびしょぬれとなり、妹は「記念に頂きます」と最後は笑顔で会場を後にした。

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