【動画】「うり、あっち!スクが歩いてる」那覇空港沖で代々スク漁営む赤嶺さん 変わる海、守る恵み

 旧暦の6月1日の大潮の期間に合わせ、スク(アイゴの稚魚)の群れが海岸の浅瀬に寄ってくる。海人たちはこぞって船を出し、寄せてくるスクを追う「スク漁」が始まった。那覇市田原の海人赤嶺正次郎さん(77)は長男の明洋さん(54)と次男の和則さん(49)と16日、那覇空港の第2滑走路西側の浅瀬でスク漁に出た。船上から群れを見つけては網を持って飛び込み、スクを囲い込む。わずか2時間ほどで100キロ超のスクを水揚げした。
 【写真】海中に輝くスクの群れ
 沖合にいたスクは約3~4センチの大きさになって浅瀬に寄せてくる。この時、スクの背はうっすらと赤く体は銀色。浅瀬に定着すると、藻を食べ緑色のまだら模様に変化してしまい食べると苦く味が落ちることなどから、大潮の時期に浅瀬に入ってくるスクを狙って漁をする。古くから沖縄の食卓では夏場の産物として親しまれてきた。
 「かーみー(亀)か、スクあらんばー」。「あらん、サンゴど」。海面で動くスクの群れは太陽光が照ると発見しやすいが、雲間に入ると魚影と岩やサンゴと見分けがつかない。カンカン照りの太陽を味方につけ、正次郎さんたちはスクの行く手、行く手に先回りし横約10メートルの網を広げて群れを取り囲んでいく。「右に行った。左に回れ。走れ」と息を合わせ、スクとの知恵比べを繰り広げた。この日、初孫が誕生した明洋さんは「スクも豊漁、いい一日になった」と笑顔を見せる。

 正次郎さんの父清盛さんは現在の那覇空港の中にあった大嶺集落の出身。先祖代々、那覇空港の周辺を漁場に半農半漁の生活を送ってきた。2014年に第2滑走路の工事が始まり、周辺海域の景色は一変した。今では引っ切り無しに頭上で航空機が離着陸を繰り返す。「一昔前なら、旧暦の1日はたくさんの船が漁に来て、にぎやかだった。みんながライバルでスクに逃げられると、別の船がそこで網を広げて待っていた」と懐かしむ。最近ではコロナ禍で人の出入りが減った影響か、周辺海域のサンゴが回復するなどさまざまな環境の変化がみられるという。

 正次郎さんは「スクは刺身で食べたらやめられない。海の恵みはみんなのもの。大切に育んで、漁場も食文化も次世代に引き継いでいきたい」と話し、沖の水平線に視線を投げるや否や、「うり、あっち!スクが歩いてる」と、一目散に海に飛び込んだ。

 (高辻浩之、写真も)

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