大磯車いす妻殺害 82歳夫に懲役3年判決 横浜地裁小田原支部の裁判員裁判 「典型的介護疲れと同視できない」

判決後、記者会見に出席し審理の難しさなどについて述べた裁判員ら=18日、横浜地裁小田原支部

 昨年11月、大磯町で妻=当時(79)=を車いすごと海に突き落として殺害したとして、殺人罪に問われた同町、無職の男(82)の裁判員裁判の判決公判が18日、横浜地裁小田原支部(木山暢郎裁判長)であった。同支部は「身勝手な犯行。典型的介護疲れの事案と同視できない」とし、懲役3年(求刑懲役7年)を言い渡した。

 木山裁判長は判決理由で「被告の強いこだわりで介護できなくなることを一方的に悲観し犯行に及んだ」と指摘。「信頼する夫に突き落とされた被害者の絶望感や無念さは計り知れない」と非難した一方で、「献身的な介護を長年続けた」と情状酌量した。

 弁護側は「精神的に追い詰められ合理的な判断ができなかった」と執行猶予を求めていたが、判決は「心中を決意したのは自分一人で介護するという強い考えに固執したから」とした。

 判決言い渡し後、「(妻には)最後まで生きたい気持ちがあったはず。服役中に考えて」と裁判長が促すと、被告は目を潤ませて頭を深く下げた。

 判決などによると、被告は2022年11月2日午後5時20分ごろ、同町大磯の大磯港で妻を車いすごと海へ突き落とし溺死させた。

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 判決後、裁判員ら6人が記者会見に応じ、補充裁判員を務めた女性は「どこでも起きうる事件。介護の孤立を防ぎ、共助・公助の社会になったらいい」と語った。

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