小島藤子, 吉本実憂 , 誠子(尼神インター)らが集結! 演劇企画集団ジュニアファイブ公演 『明けない夜明け』上演中 それでも生きていく。

演劇企画集団 Jr.5(ジュニアファイブ)は、第15回公演『明けない夜明け』(作・演出:小野健太郎)が東京芸術劇場 シアターウエストにて上演中。

本作は、2022年8月に下北沢・駅前劇場で上演した第13回公演『白が染まる』に続く物語。
『白が染まる』は、2002年に福岡県久留米市で実際に起こった看護師4人による保険金連続殺人事件をモチーフに、妻・ヒトミが夫・ ゴウを殺してしまうまでの心理描写を綿密に描き出した。
本作『明けない夜明け』は、ある日を境に、幼くして 被害者の子であり、加害者の子になってしまったヒトミとゴウの子供たち(三姉妹)がそれぞれ成長し、大人になってからの姿を描く。
作・演出を務めるのは、ジュニアファイブ全作品の脚本・演出を務める小野健太郎。
主人公となる三姉妹の次女・恵 役に小島藤子、三女・茉菜役に吉本実憂、長女・愛役には尼神インター・誠子。
そのほか、宮田早苗(劇団東京乾電池)、岩瀬亮、鈴木勝大、佐藤達(劇団桃唄 309)、成田沙織、奥田努らが出演。
社会とは、家族とは、友達とは―、さまざまな問題を織り交ぜながら“生きるとは”を問いかけていく。
開演時間前から実は始まっている。恵(小島藤子)が舞台中央のテーブルに横座りでTVを観ている。ニュース映像、それを退屈そうな憂鬱そうな空気感で観ている、いや、観ているというより眺めている、に近い。電話が鳴り、恵は電話の線を抜いてしまう。末っ子の茉菜(吉本実憂)が帰ってくる。電話をしたのに誰も出ないことに対して文句を言う。

恵は花屋でアルバイトをしている。舞台上に花屋で売っていそうな花を置く俳優陣。お店で働く面々は人の良さそうな人たちばかり。そして3姉妹、長女・愛(尼神インター・誠子)はショートカット、頻繁に不機嫌、怒鳴り散らしたりする。次女・恵はあまり笑わない。三女・茉菜(吉本実憂)はばっちりメイクで闊達な印象、姉妹と言っても性格は3人、相当異なる。中央の彼女たちの家のリビングはテレビと丸いテーブル、それと少々の家具など、テレビの画面はやたら大きい。相変わらずテレビを観る恵、ニュースをやめてアニメを観始めたり。テレビでかかってるのはゆるーくニート生活を送っている『おそ松さん』だったり。

彼女たちのありふれた日常。大きな出来事も特になく、そこで描かれる人間関係もさほど特別感はない。時折、彼女たちの父母が登場。見た目は普通、気の良さそうな父。暗い表情の母。彼女たちが普通とは違う点、それは自分たち自身が招いたことではない、”影”。それは直接話法では表現されない。3姉妹、すこぶる仲が悪いわけでもないが、仲良しこよしというわけでもない。頻繁に衝突する、長女の愛はすぐに大声を出す、やや暗い表情の恵、茉菜はいつも明るく、彼女は登場すると空気が明るくなるが、底抜けに明るいわけではないように感じる。3姉妹、葛藤を抱えているが、その抱え方が異なり、その差異、実はお互いを思いやっているのだろうが、それをうまく出せないように見える。

後半で恵は花屋のアルバイトを辞める、自発的にではない。家庭環境が暗く影を落としている。そしてカレーライスを食べるシーン、笑顔が見える、最初は姉妹だけだったが、そこに父母も加わる。遠目に見れば、これもよくある食卓の風景。だが、観客は心が痛くなる。家族の姿、中盤では小さな花束を渡そうとする夫、それに対して妻は「いらない」と言うシーンがある。二人の間に流れる空気で、この二人の関係を推し量ることができる。

安直な終わり方はしない。3姉妹はこれからもこの気持ちを抱え続けていくし、状況もたいして変わらないだろう。ただ、うっすらと見えてくる3姉妹が持つそれぞれの力、テーマは重く、暗くなりがちだが、そこを”日常”として表現し、ちょっとした仕草で客席から時折、笑い声も起こったりする。観ている間に肩に力が入ってくることもあるが、そういった瞬間にふっと力が抜ける。辛い状況でも時には笑うこともある。そこは実はリアリティのある瞬間。この3姉妹、この先も変わらずに生きていくだけ、明けない夜明け。上演時間は休憩なしのおよそ2時間。

演劇企画集団 Jr.5(ジュニアファイブ)とは
劇団 Studio Lifeの5期生5人が、2010年に立ち上げた演劇企画集団。世知辛い現代社会で懸命に生きる人々の姿を ユーモアを持って描き、Studio Life の作風とはまた違う、人の機微に触れる作品を展開。少しでも肩の力が抜け、救われた気持ちになれる作品創りを目指している。過去作品には、生活保護、加害者家族、若年性アルツハイマー、東 日本大震災、孤独死、医療問題などをテーマにした作品を上演。近年の作品には、山崎静代さん(南海キャンディー ズ)、塩野谷正幸さん(流山児☆事務所)、青山勝さん(劇団道学先生)多数客演を迎えた『徒然アルツハイマー』 (駅前劇場)や『硝子はオバサン』、『ねじ廻る』(ウエストエンドスタジオ)などがある。2022年8月には紺野まひるさん、山崎静代さん(南海キャンディーズ)、高野志穂さん、罍陽子さんをメインキャストに迎えた第13回公演 『白が染まる』を上演した。

概要
タイトル:演劇企画集団ジュニアファイブ第15回公演『明けない夜明け』
日程・会場:2023年7月14日(金)〜7月20日(木) 東京芸術劇場シアターウエスト
作・演出:小野健太郎
出演:小島藤子、吉本実憂、誠子(尼神インター)、鈴木勝大、成田沙織、岩瀬亮、石森咲妃(文学座)、鷲見友希、 井筒しま、赤松真治、佐藤達(劇団桃唄 309)、宮田早苗(劇団東京乾電池)、小野健太郎、奥田努
*石森咲妃、鷲見友希、井筒しま、赤松真治は W キャスト *小野健太郎は 7/16 14:00-、7/19 14:00 の 2 公演のみ出演
企画・製作:演劇企画集団 Jr.5

公式サイト:https://junifive.wixsite.com/juni5

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