DMS開発大手が日本進出、10年でシェア2割目標 マイクロソフト協業

自動車のディーラーマネジメントシステム(DMS)を開発・提供するシンガポール企業Technosoft Automotive(以下、TA社)は7月3日、都内で会見し、日本市場への参入を発表した。東京に新設した日本法人が国内のディーラーに独自のDMSを提供する。今後10年でディーラー4000店への導入、国内DMSシェアの約2割獲得を狙う。

Dynamics 365ベースのDMSを開発する大手

TA社は、米マイクロソフト社製のCRM(顧客関係管理)システム「Microsoft Dynamics 365」をベースに独自開発したDMS「Technosoft Automotive Solution」(以下、TAS)を提供している。1996年にCEOのフレディ・タン氏が創業し、12年にTAS販売を開始した。

TA社は東南アジアを中心に10カ国で展開。TASは、23年5月末時点でインドネシアのDMSシェア約25%、フィリピンで50%としている。実績の約8割が日系OEM、日本車販売ディーラーへの導入という。

アジア、欧州、アフリカ、豪州10カ国で展開

日本市場で「最高のおもてなし体験」提供

会見ではタン氏、日本法人Technosoft Japan株式会社 President/TA社 COOの吉島良平氏、日本マイクロソフト株式会社 執行役員 常務 モビリティサービス事業本部長 竹内洋二氏が登壇した。

タン氏は日本進出の背景について説明。「中国、米国に次ぐ大きな市場、サービスの質が高い日本でのビジネス体験を他の地域にも生かしていく。とてもエキサイトしている」と抱負を述べた。

タン氏は日本進出を情熱的に語った

TA社が重視するのは「顧客への最高のおもてなし体験」。タン氏は「ビジネスの規模が拡大してもOEM、ディーラーとオーナーの間をシンプルにつなげて業務を効率化すること、ブランドならではの差別化した顧客体験を提供することにTASは貢献する」とした。

また、「若いユーザーは車の購入でも、モバイルアプリを駆使していて、ディーラーを訪れた時点で何を買うかをほぼ決めている。OEM、ディーラーが古いやり方に固執すれば新しい顧客を獲得できないと考えている。オンラインでリアルタイムな情報を顧客に提供し、顧客との接点を持つことが重要」とした。

そして、マイクロソフトの技術とトレンドに基づくTASのソリューションとサービスを提供すると述べた。さらに、日本でOEMとの関係を深め、OEMの海外進出を支援するとした。

顧客間の接点作り、採算性を向上

続いて日本法人トップ、TA社COOの吉島氏が日本でのビジネスとDMSの詳細を紹介。吉島氏はOEMによる既存DMSはコンポーザブルな利活用が難しいとし、「レガシー化してしまったDMSに変革をもたらし、DMS導入・展開・保守をサポートする」とした。

吉島氏は20年にわたりMicrosoft Dynamicsのビジネスに携わった

吉島氏はTASの特徴を「車両オーナー、ディーラー、OEM間の接点を持ちやすい」点、ディーラーおよびOEMの生産性・採算性を高められる点と述べた。CRM上に作られたTASはカバーする範囲が広くERP(統合基幹業務システム)にも容易につなげられ、変化に素早く対応できるという。

TASの機能群

全てのデータは堅牢なクラウドサービスMicrosoft Azureの中に守られ、ディーラーの営業・整備担当者、車両オーナーが使うアプリをディーラー側でローコード開発する仕組みも整っている。

ローコードアプリ開発にも対応

また、吉島氏は、TASを日本に広める上で重要なのは「1にも2にも3にもローカライズ」とし、日本語対応だけでなく、日本の商習慣への対応に非常に力を入れているとした。

海外で協業実績があるコンサルティング会社や、会計パッケージベンダーとも協働。日本展開を進めていく。吉島氏はTAS導入の最初の1、2年は、まず外資系企業のマルチブランドのディーラーから入るとした。

また、将来的には生成AIとアプリを組み合わせたコネクティッド、自動車業界のデータ可視化やカーボンフットプリントなどへの展開も見込む。TASの導入価格は1ユーザー当たり月額65ドル、9100円から。

データ可視化・連携にも対応していく

マイクロソフト「TAと協業でより多くの価値を」

日本マイクロソフトの竹内氏は、より多くの価値を顧客に提供できるようTA社と協業を進めていくとした。協業の具体的な内容としては、マーケティング活動や車作りなどへのAIの活用、マイナンバーを使った車庫証明や車検対応など制度の変化に素早く対応できるソリューション提供などを挙げた。

竹内氏はTA社と価値向上に尽力すると話した

※図表は全てTA社提供

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