みんなで守ったスーパー 農家ら出資・運営 北海道更別村

ポピーマートを切り盛りする店長の辻本さん(左)と従業員(北海道更別村で)

北海道更別村のスーパー、ポピーマートは閉店したAコープを地域の農家らが再生させた店舗で、村の中心地から離れた上更別地区の住民の買い物を支える。開店資金を出したのも、店舗を運営するのも全て住民。ノウハウを持った人材を村外から招き入れるなどして経営を安定させ、村で暮らし続けることができる環境を守る。

閉店後、「買い物」支えて20年弱

野菜や果物、総菜などの食料品はもちろん、洗剤やティッシュペーパーの日用品も。ポピーマートの店内は小規模ながらも、暮らしに欠かせない品をそろえる。

店を運営する法人の代表で、村内でテンサイ、小麦など畑作物を50ヘクタールで経営する若園栄一さん(73)は「大きなスーパーではないけれど、ちょっとした買い物ができる場が必要。住民の生活はもちろん、地域を守る上でも大切だ」と強調する。

かつて村内には、JAさらべつが運営していたAコープ上更別店があり、住民らが生鮮食品や日用雑貨などを買いそろえていた。Aコープが2004年春に閉店すると、状況が一変。ちょっとした買い物にも、隣町の大型スーパーに往復数十分かけて行かねばならない。子育て中の母親や繁忙期の農家には負担になる。

この不便な状況をなんとかしたい――。そんな思いが広がる中、若園さんを含む地域の農家や地域住民は「だったら自分たちで店をやろう」と決意。100人超が出資し、運営法人を立ち上げた。最終的に集まった出資金は750万円。JAが店舗を改装し、村も運営を支援する助成をするなどして、04年秋にオープンした。

当初は利益率が上がらず赤字が続いた。事態を打開しようと、近隣のスーパーにかけあい、店長経験があり、村外に住んでいた辻本一彦さん(69)を招き入れた。仕入れ先を見直すなど運営を改善し、現在は年間5000万~6000万円の売上高を確保する。辻本さんは「開店当初から通ってくれるお客さんの子ども世代も続けて使ってくれている」と手応えを話す。辻本さんは村内に移住し、地域の一員となっている。

若園さんは「開店から20年弱、地域の買い物を支えてきた。今後は若い世代に店を引き継ぎたい」と考える。畑作農家や酪農家など40、50代の住民を法人に加え、世代交代を進めたいと構想する。 石川大輔

買い物弱者の「対策必要」87% 市町村は財政支援要望

食料品などを購入できる店舗が地域になく不便な生活を強いられている「買い物弱者」を巡り、「対策が必要」と考える市町村が87%に上ることが農水省の調査で分かった。民間が事業として関連対策に取り組むも、参入規模は縮小傾向にある。市町村から国に対し、費用面の支援などを求める声が上がる。

2022年度の調査で、1023市町村から回答を得た。「対策が必要」とした市町村は87%を占め、毎年増え続けている。理由を複数回答で聞くと「住民の高齢化」(91%)、「地元小売業の廃業」(68%)などが挙がった。

企業や生協、NPOなどが買い物代行や移動販売車の運営といった事業を手がけるケースもある。ただ、民間事業者が参入していると回答した市町村は65%で、前年度の71%を下回った。

国にどのような支援を求めるか、市町村に複数回答で尋ねると、「運営費用」(69%)や「整備費用」(60%)の支援に加え、「情報提供」(60%)が上位だった。

同省は「費用の補助や先進事例の発信など、複数の面で今後も支援していく」(食品流通課)と話す。

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