捜査の端緒は今年2月に大阪府警に寄せられた匿名男性からのこんな申告だった。
「泉の広場や兎我野（とがの）町界隈で売春婦から売春行為の勧誘を受けた」――。
そうした情報をもとに大阪府警は泉の広場や兎我野町界隈の調査を開始。そして男性とホテルに入る女性を認知し、女性に売春あっせん行為をしていた男2人を売春防止法違反容疑で逮捕したと7月11日、発表した。
「取り分」は女性と容疑者らが“折半”
府警担当記者が言う。
「逮捕されたのは無職の高原慧（さとし）容疑者（37）と派遣社員の堀越快斗容疑者（23）の両名です。2人はマッチングアプリなどで女性になりすまし、男性と場所や時間を交渉の上、30代の女性に売春あっせんをしていました。両容疑者と売春を行っていた女性は『売春相手を紹介してくれる人はいませんか』との女性側のSNSでの呼びかけで知り合ったようです」
売春を行っていた女性の供述によると、逮捕された2名と女性は令和元年12月ごろから令和5年6月半ばまでの約5年ものあいだ共存関係にあり、
「週4、5日稼働で料金はホテル代別で1時間1万5000円。取り分は女性と容疑者らが折半していた。1日2、3人の遊客の相手をし、約5年間で2千数百万円の利益を得ていた」（捜査関係者）とみられている。
関係3カ所の捜索からは携帯電話8台、タブレット1台、女性含め3名から現金69万円が押収されており、両容疑者は『条件アリでエッチできる人探してます』などのうたい文句でマッチングアプリの入力を行っていたというが、女性は生活苦からではなくあくまでも「収入を得るための仕事」として売春をしていたと供述している。
ここ20年ぐらいで“立ちんぼ”が客待ちを行うように…
逮捕された高原、堀越の売春防止法違反容疑の現場となった“泉の広場”や“兎我野”周辺は「大阪では有名な売春スポットとして知られていた」と前出の記者が説明する。
「地下鉄と直結した大阪の地下街、ホワイティ梅田に1970年に誕生した泉の広場は大阪市民の間では有名な待ち合わせスポットでした。ですが、地下街を上がったところには風俗店やラブホテルが立ち並ぶ兎我野町が目と鼻の先に点在しており、そうした立地条件からか、ここ20年ぐらいで“立ちんぼ”が客待ちを行うようになり周囲の飲食店などから苦情が寄せられていました」
しかし、それらの“立ちんぼ”は明らかな勧誘行為をしているわけではなく、あくまでも客から声を掛けられるのを待つスタイルだったため、法的に“売春行為”として摘発するのは難しかったという。
「事態を看過しかねた大阪府警は地検とも協議し、これまで売春の取り締まりに適用していた売春取締法5条1号ではなく、『公衆の目にふれるような方法で客待ちをし、また広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘引すること』を定義した同法5条3号を適用。19年～20年にかけ、売春防止法違反容疑で61人の立ちんぼの現行犯逮捕に踏み切りました」（同前）
逮捕された61人の年齢は当時17歳から64歳と幅広く、九州や四国などから泉の広場に売春目的で来ていたものも含まれていたという。
「中には今回逮捕された両容疑者と共存関係にあった女性のように生活苦からではなく、遊興費のために売春していた女性もいました。この一斉摘発以降、一時は泉の広場、兎我野周辺には立ちんぼの姿は減ったように思えましたが、結局はイタチごっこなのかもしれません」（同前）
大阪府警は両容疑者の背後関係も視野に入れ捜査を進めているという……。
