旧日本軍「731部隊」の職員表を発見 氏名や階級記載 細菌戦、組織解明に期待 

軍事機密と記された「職員表」(明治学院大学国際平和研究所の松野研究員提供、国立公文書館所蔵)

 旧日本陸軍で細菌兵器開発のための人体実験や細菌戦を繰り返した「731部隊」(関東軍防疫給水部)の「職員表」が、国立公文書館(東京都千代田区)で見つかった。関東軍司令部が作成したもので、部隊の構成や隊員の氏名、階級などが記されている。発見した明治学院大学国際平和研究所研究員の松野誠也さんは部隊の実態解明に向け「歴史的価値が高い」と話している。

 見つかった職員表は2種類で、いずれも1940(昭和15)年8月22日付の防疫給水部の「将校高等文官」と「判任文官同待遇者」。陸軍中央に組織編成を報告するため、関東軍司令部が同年9月30日に作成し、旧厚生省復員課が所蔵していた「編成(編制改正)詳報」に含まれていた。

 職員表には、部隊長の石井四郎軍医大佐以下、各部長名と配属された隊員の氏名などが記されている。部隊は、軍人である軍医ら各将校と、軍属である技師、技手などで編成され、総人数は455人(うち233人が欠員)だった。医学者の技師が部隊で高い地位にあったことが分かる。

 部隊を巡っては、敗戦を伝える昭和天皇の玉音放送が流れた45年8月15日、陸軍省が部隊などの特殊研究に関する証拠を隠滅するよう指示し、関係書類が大量に焼却された。これまで組織編成については、元隊員の証言、戦後米軍が関係者らに行った尋問資料、49年にハバロフスク(旧ソ連)で行われた軍事裁判の公判記録などから解明が進められてきた。職員表はその内容と合致しており、証言や公判記録などの信ぴょう性を裏付けるとともに、部隊のさらなる実態解明も期待される。

 松野さんは「旧帝国大学医学部などから医学者、研究者らが技師として採用されており、その形跡をたどれば部隊が行っていたことが分かる。その意味でも、歴史資料として価値が高い」と話している。

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