KEKとCERN、ILC技術開発推進へ新組織 国際協力拡大目指す

 国際リニアコライダー(ILC)の技術開発を推進する新たな組織「ILCテクノロジーネットワーク」が発足した。高エネルギー加速器研究機構(KEK、茨城県つくば市)と欧州合同原子核研究所(CERN、スイス)の2者で始動。今後、欧米の研究機関を巻き込んで取り組みを加速させ、計画実現に必要なレベルへさらに熟度を高める。

 KEKの山内正則機構長とCERNのファビオラ・ジャノッティ所長が7日、協力協定に署名した。

 これまで、国内外の研究者でつくる国際推進チーム(中田達也議長)が建設着手に向けた技術課題をまとめてきた。当初は準備研究所(プレラボ)を設置し、クリアするための研究開発を進める予定だったが、文部科学省の有識者会議から「時期尚早」などと指摘を受けたため、代わる新組織が重要度の高い分野について国際共同で取り組む。

 具体的には▽電子と陽電子を効率的に発生させる技術▽光に近い速度まで粒子を加速させる超伝導加速空洞技術▽粒子をぶつけるために束ねてビームにする技術-が主なテーマ。技術向上はILC実現後の研究成果だけでなく、コスト削減にも関わる。

 今後、CERNが主体となって欧州の加速器研究所に参画を働きかけるほか、米国の研究所の参画を得て枠組みを広げていく。活動期間は2~4年を想定している。

 欧州では、周長約100キロの次世代型大型円形加速器「FCC」計画について、実現可能性を探る調査の結論が2025年に出る見通し。それを踏まえて次の欧州素粒子物理戦略の検討が始まると見込まれる。

 国際推進チームのリエゾン(調整役)を務めるKEKの岡田安弘理事は「世界の中心的存在であるCERNの協力を得ることで、他の研究機関の参加意欲につながると期待される。ILCの実現に向け、国際協力で技術開発に取り組む意義は大きい。25年までに協力体制の実績を示したい」と説明する。

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