さすらいラビー「漫才とコント、どちらも同じくらい本気」。「ツギクル」決勝前日、𠮟咤激励してくれた“工房長”の言葉【ロングインタビュー前編】

太田プロダクション所属のお笑いコンビ・さすらいラビー。青山学院大学のお笑いサークル「ナショグルお笑い愛好会」に所属していた宇野慎太郎さんと、一橋大学のお笑いサークル「IOK」の中田和伸さんが大学時代に出会い、結成。在学時から数々の大会で優勝し、名を上げてきたコンビです。

2021年には「第42回ABCお笑いグランプリ」で決勝進出、21、22年の「M-1グランプリ」では準々決勝に進出。今年7月8日に開催された「ツギクル芸人グランプリ」では決勝の舞台に登場し、ダイナミックでありながらも青春の甘酸っぱさを情熱的に描く漫才で爆笑をかっさらいました。

現在、1カ月に約30~40本のライブに出演している2人。さらに23年に入ってからは、1月、3月、5月、7月と、2カ月おきに新ネタライブを開催中。これから「キングオブコント」や「M-1グランプリ」といった賞レースが本格始動するということで、7月20日開催の新ネタライブ「ラッテ」では「一旦、全部を出し切ろうという思いです」と闘魂をみなぎらせます。

「すべては賞レースで勝つため」。

自身を追い込みながらも、漫才とコントの二刀流で頭角を現すさすらいラビー。結成当時のエピソードやこれまでの歩みについて、さまざまなお話をお聞きしました。

「ツギクル芸人グランプリ」決勝を終えて

――結成10年目のお二人。先日の「ツギクル芸人グランプリ」では決勝に進出されました。

中田 「優勝できなかった悔しさはあるんですけど、出せるものは100%出し切ったなという思いです。そこからはもう、審査員の方次第というか。今は切り替えて、すっきりしている感じですね」

宇野 「会場にいた一般のお客さん、秋元真夏さん、元祖爆笑王さんの3票をいただけて。正直、僕たちの前に登場したツンツクツン万博のウケがすごかったので、『これ、満票でツンツクツン万博でもおかしくないな』と思ってしまうくらいの空気感だったんです。もちろん優勝できなかった悔しさはありますけど、僕たちをいいと思って、評価してくださる方がいたといううれしさもすごくあって。一つ自信がついた大会だったなと思います」

――決勝進出が決まった後に答えていただいたアンケート取材(https://www.tvguide.or.jp/feature/feature-2289102/)では、宇野さんがひつじねいりさん、中田さんがナイチンゲールダンスさんをライバルに挙げていました。

中田 「決勝に進出した15組中、半分くらいは昔から付き合いのある芸人ばかりで。ナイチンゲールダンスは、ボケの中野なかるてぃんが僕のサークルの後輩だったんです。なんなら僕が勧誘してサークルに入れたみたいなところがあるので、勧誘しなければよかったなって」

宇野 「なんだそれ(笑)」

中田 「そこで運命が変わったので。バタフライエフェクトだなって」

宇野 「感謝してるよ、きっと。『誘ってくれてありがとう』って」

中田 「…感謝してるかな?」

宇野 「お前のおかげでツギクルで優勝できてるんだから」

中田 「本当に感謝してる? その裏は取るよ?」

宇野 「いやいや(笑)」

中田 「まぁ、付き合いは本当に長くて。大学時代からなので、だからこその悔しさもあるし、来るところまで来たなと。大学時代のサークルの後輩が優勝するような時期に、僕らはいるんだなという思いです」

――なかるてぃんさんが1年生の時、中田さんは何年生だったのですか?

中田 「僕は4年生でした。規模が小さいサークルだったし、大学お笑いでは団体戦というのがあって、漫才、コント、ピンでチームを組んで大会に挑むんです。僕は漫才で出ていて、中野なかるてぃんは当時から本当に面白かったんで、ピンとして出てもらったんですよ。一緒にチームを組んで大会に出て、負けて『悔しいな』って言い合ったりもしていたのが、今では生放送のテレビで戦う相手になって。……エモいですね」

宇野 「ひつじねいりとは、一緒にユニットライブを三つやってるんです。『漫才工房』『風穴』『ナルロク』っていう4~6組くらいでやっているユニットで、本当にずっと一緒に戦っているコンビなので、意識せざるを得ない部分はありました」

――お二人がライバルに挙げた2組とも、ファイナルステージに進出されましたね。

中田 「本当に僕らは見る目があるんですよ。ライバルに挙げた2組ともが最終決戦に進んでいるので、僕らが面白いと思っているものは面白いんです」

宇野 「いやいや、お前が頑張れよ。なんで俺らが勝ててないんだよ」

中田 「だって『注目している相手は?』って質問に『さすらいラビー』って書くわけにいかないじゃん。『注目の相手は?』『己です!!』みたいなこと? そう言えばよかったの?」

宇野 「そういうことじゃないだろ、見る目があるって(笑)」

中田 「ツギクル人を当てることができるんです」

宇野 「なんで自分らはツギクルになれないんだよ」

中田 「自分たちの未来は当てられなかった」

「ストレッチーズがたどった道は僕らもたどれるはずだ」

――昨年は、お二人と関係性の深いストレッチーズさんが優勝。その後はさまざまなテレビに出演したり、「M-1」でも結果を残したりと、躍進を続けています。ストレッチーズさんの活躍に対しては、どんな思いを抱いていますか。

中田 「かなりのジェラシーですね。『悔しいな』『ちょっと先行かれちゃったな』という思いもありつつ、一方で、『あの大会で優勝したら、こういう未来が待っているんだ』じゃないですけど、あとは追うだけだなというか。ストレッチーズとは本当に同じ目線にいたので、『同じように僕らも行けるはずだ』『ストレッチーズがたどった道は僕らもたどれるはずだ』と鼓舞できる部分もありました」

宇野 「ストレッチーズは本当に近い存在で。ずっと一緒にライブに出ていたのに、テレビの仕事が忙しくてライブに出られないっていう2人を見て『うらやましいな』と思うこともあったんですけど、『僕らが面白いと思っているストレッチーズがその道をたどれたってことは、きっと僕らもたどれるはず』って、わりとプラスな感情も抱いていました」

――今回お二人の決勝進出が決まって、この大会についてストレッチーズさんと何か言葉を交わすことはありましたか?

中田 「『お前らのための大会だよ』と」

宇野 「言ってねーよ。本当に言われた?」

中田 「なんで言ってないって決めつけるの?」

宇野 「俺の知らないところで言ってたのかもしれないけど、言わなさそうだし(笑)」

中田 「言ったかどうかクイズだよ」

宇野 「たぶん言ってないよ、じゃあ(笑)。言われたことを言え」

中田 「そっか(笑)」

宇野 「でも『ツギクル芸人グランプリ』の翌日に『ABCお笑いグランプリ』っていう別の大会があって、その決勝にストレッチーズが出ていたので、『お互いにこの土日頑張ろうよ』みたいな気持ちは絶対あったと思います。特に言葉にはしていないですけど、その空気感はずっとありました」

「漫才工房」工房長からの𠮟咤激励「お前ら、とにかく優勝してこい」

――「ツギクル芸人グランプリ」の決勝で、あのネタに決めた理由を教えてください。

宇野 「去年の『M-1』でやったネタだったんですけど、今一番仕上がっているのがあのネタでした」

中田 「初詣のネタだったので『いくらなんでも季節外れすぎるかな?』っていう懸念はあったんですけど、でも一番自信のある漫才だったので、ここでぶつけようと決めました。そこは2人で結構話し合いましたね」

宇野 「最終決戦に進んだ時にやるネタももちろん用意していたので、それと初詣のネタのどっちを予選会、そして1本目でやるかは2人で結構話し合いました」

――決勝に向けての期間、芸人の先輩や仲間の方と交わした言葉で、もし記憶に残っているものがあれば教えてください。

中田 「『乗るしかない、このビッグウエーブに』」

宇野 「……誰が?」

中田 「さんだるさん」

宇野 「言ってねーだろ、うそばっかり言いやがって(笑)。それこそ、さんだるさんは今回が3度目の決勝だったんですけど、『とにかく優勝しなきゃ意味ないぞ』と。ライブの楽屋で、決勝初進出の僕らやまんじゅう大帝国、ひつじねいりに向けて『本当に、優勝しないと意味ないから』と口酸っぱく言ってくれたおかげで、みんな『優勝するぞ!』って1個スイッチが入ったなと思います」

中田 「『漫才工房』というユニットライブを僕らとひつじねいり、ストレッチーズ、ママタルト、ウエストランドさんという5組でやっているんですけど、僕らとひつじねいり、ママタルトは土曜に『ツギクル芸人グランプリ』の決勝、ストレッチーズは日曜に『ABCお笑いグランプリ』の決勝に挑むということで、前日に漫才工房の工房長であるウエストランドの井口(浩之)さんから『お前ら、とにかく優勝してこい。そして漫才工房の格を上げるんだ』という𠮟咤(しった)激励のメッセージをいただいて。そして2日間終わった後に『何をやってるんだ、お前らは』というLINEが来ました。『お前らがしょうがないから、来年はツギクルの現場に行くかもしれないぞ』ということも言っていました」

宇野 「何しに来るんだよ。来るなよ(笑)」

中田 「爆笑問題さんの直属の後輩だからですかね? なんで来るのかはよく分かりませんが」

宇野 「爆笑問題さんがMCだからって、来る理由にはなってないだろ」

中田 「熱いメッセージをいただきました」

――「キングオブコント」、そして「M-1グランプリ」が今年も始まります。今年の賞レースに懸ける意気込みを聞かせていただけますか。

中田 「『M-1』と『キングオブコント』の両方で決勝にいきたいと思っています。本当は『優勝します!』と言えた方がいいんだろうなとも思うんですけど、まずはテレビの決勝の舞台でネタを披露するというのが目標です。漫才もコントも、両方でいきたいです」

宇野 「この世代で漫才もコントも、どっちもしっかりやってるコンビってなかなかほかにいないなと思うんです。僕らは本当にどちらも同じくらい本気でやっているので、『M-1』と『キングオブコント』の両方でファイナリストになれる力があるというのが、僕らの個性だったり強みになってくるんじゃないかなって。それを今年、ちゃんと見せられたらいいなと思いますね」

――漫才とコントの両方を仕上げていくというのは、すごく大変なのではないかと思います。

中田 「僕らに備わっているいろんな武器とか面白い要素を最大限に発揮するためには、その両方をやることで、全部の筋肉を使うことができるようになるというか。相乗効果もあると思っていて、コントを一生懸命やるようになってから、漫才のことも真剣に考えるようになったんです。大変は大変ですけど、僕らにとってはいいやり方でできているなと思います。勝つための確率を上げる方法が、僕らにとっては漫才とコントの両方をやることなんです」

――「キングオブコント」は1回戦が始まりましたね。

中田 「1回戦は突破して、今は2回戦を控えている状態です。ただ、工房長があんまりコントが好きじゃないので、僕らはコソコソやっているところがあります(笑)」

2人の出会いや大学時代のエピソード、憧れの存在についてお聞きしたインタビュー後編はこちら:https://www.tvguide.or.jp/feature/feature-2324731/

【プロフィール】

さすらいラビー
宇野慎太郎(1991年12月17日生まれ、東京都小平市出身)と、中田和伸(1991年9月9日生まれ、東京都文京区出身)が大学時代に出会い、コンビ結成。2012年に「関東大学生漫才グランプリ」、13年に「第11回笑樂祭」で優勝し、大学卒業後はプロの道へ。タイズブリック所属を経て、16年9月に太田プロダクションの養成所「太田プロエンタテインメント学院」を8期生として卒業し、太田プロ所属に。21年、「第42回ABCお笑いグランプリ」決勝進出、21、22年、「M-1グランプリ」準々決勝進出。23年、「ツギクル芸人グランプリ」決勝進出。太田プロライブ「月笑」では19、22年に年間チャンピオンに輝く。音声配信アプリ・stand.fmにて、ネットラジオ「さすらいラビーのオーライパパ」が毎週月曜に更新中。7月20日、さすらいラビー新ネタライブ「ラッテ」が東京・西新宿ナルゲキにて開催。チケット好評発売中。

取材・文/宮下毬菜 撮影/尾崎篤志

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