NATOとの連携が日本の安全を脅かす?
今週のサンモニは、相も変わらない日本の過激なパシフィスト(=平和主義者)のコメンテーターのお花畑談議に花が咲きました。
田中優子氏:NATOが事務所を日本に構える話が出ていて、何でそんなことをするのか。東アジアでの緊張を高める。NATOとロシアの緊張感を東アジアに持ってくる。
田中氏は、日本がNATOと連携することは東アジアに緊張をもたらし、日本の安全を脅かすかのように主張しています。しかしながら、この主張は明らかに不合理です。
人々が自由に生きるための礎となる環境である【平和 peace】を希求することは、極めて重要なテーマですが、残念なことに、人々が平和を希求するだけでは平和は得られません。世界には、他国に危害を与えずに自国の希求目的を達成しようとする自律した【平和国家 peace loving nation】だけではなく、他国に危害を与えても自国の希求目的を達成しようとする【ならず者国家 rogue nation】がいくつも存在しているからです。
このならず者国家を撲滅しない限り、平和国家には、ならず者国家から侵略されることで、国民の生命と財産を失う【リスク risk】が存在することになります。
このリスクを低下させるには、
①侵略の発生確率を低下させる【セキュリティ security】対策と
②侵略が発生した場合の損害を低下させる【セーフティ safety】対策
が必要となりますが、この両対策に共通して必要となるのが【強制力 coercion】としての【武力 force】です。
この強制力は、ならず者国家の【力ずくの暴力 brute force】よりも大きいことが必要です。このために自由主義諸国では価値観を共有できる国々とともに集団的自衛権を行使可能な同盟を組むことで強制力を結集しています。
優先順位のつけ方はおかしくない
さて、ウクライナがロシアに侵攻された大きな原因は、ウクライナがNATOという集団的自衛権の枠組みに参加できていなかったことによります。
一方で、ロシアも中国もNATO加盟国とは戦うことができません。自国の行使可能な暴力がNATOの行使可能な強制力と比較して明らかに脆弱であるからです。
そんな中で日本がNATOと連携することは双方のセキュリティとセーフティをより強固にすることで、中国・ロシアによる侵略のリスクを大きく低減させるものです。
松尾貴史氏:日本みたいな国がどちら側に立つかがどんどん明確にされてしまうことが、日本の安全を脅かすことに繋がると思うと、ただ祈るような気持ちで見ているしかない。
残念ながら日本単独の強制力は、中国・ロシアの力ずくの暴力と比較して小さいため、日本が立場を示さないことは、中国・ロシアに日本を攻撃する余地を与えることになります。
そもそも、平和の敵であるロシアへの対峙を否定することは、ロシアの侵略行為を肯定することに他なりません。祈れば平和が得られると考えるのは理論的にも経験的にも完全な倒錯です。抑止理論で考えれば、彼らのような絶滅危惧種とも言えるお花畑のパシフィストこそ、日本の平和を棄損する存在です。
松尾貴史氏:「日本を取り巻く安全保障の変化」という言葉が口実に使われる。日本だって子供の何人かに一人は貧困にあえいでいる中で、防衛費は突出して増やすことが簡単に決められた。
優先順位のつけ方が凄くおかしい。自民党と関連団体に対して軍需産業の大変な額の献金が集まっている。その辺の裏側を考えると、果たして適正に税金が使われているのか。
中国の大軍拡と台湾統一の言及、北朝鮮の核開発の進化、ロシアの暴走といった「日本を取り巻く安全保障の変化」は世界の誰もが認める確固たる事実であり、「口実」と認定する架空の事実こそ口実に他なりません。
そもそも日本の防衛費が過去30年にわたり全く増額されなかった中、「増やすことが簡単に決められた。優先順位のつけ方が凄くおかしい」などとするコメントは凄くおかしいと言えます。
また、子供の貧困は、緊急対策が必要な「絶対的貧困」ではなく、あくまで「相対的貧困」です。対策は必要ですが、突出した緊急対策は必要ありません。
公金の不正な流れを具体的に指摘することなく、政治献金を行う企業を問題視するのは中傷に他なりません。このような基礎知識も論理性もなくひたすらポジション・トークを展開するだけの人物をコメンテーターとして起用する『サンデーモーニング』にはあきれるばかりです。
青木氏のいつもの批判のための批判
青木理氏:北朝鮮のVTRを見ながら、民が困窮しているのに軍事に貴重な富を注ぎ込む為政者の愚かさはどこも同じだ。
いつものように日本政府を皮肉る青木氏ですが、王朝維持のため、軍事に富を注ぎ込む北朝鮮の為政者は愚かですが、国民の生命と財産を守るために必要な富を注ぎ込む日本政府の行為は合理的です。
青木理氏:日韓関係の正常化はいいことだが、その背後には米国が日米韓で中国・北朝鮮と対峙する思惑もある。日米韓の連携は必要だが、北朝鮮とこのまま緊張を高めていくと偶発的な衝突が起きかねない。
日韓が連携するよう執拗に求めてきた青木氏が、いざ日韓が連携すると、緊張が高まって偶発的な衝突が起きかねないことを危惧するのは無責任の極致です。所詮は批判のための批判を行っているのです。
最高裁判決は個別のケースに限定した判決
そして、今週もトランスジェンダーの問題において、トランスジェンダーのアライの主張を一方的に紹介するなど、相変わらず特定の価値観を押し付ける印象操作を行った『サンデーモーニング』です。
田中優子氏:経産省トイレ制限「違法」判決について、まさに司法が役割を果たしてくれた。当事者がよく声を上げてくれた。誰かが声を挙げなければ、他のマイノリティが更なる混乱に陥る。「すべての国民が安心して生活できるよう留意する」という文言があって、LGBT理解増進法を私は差別増進法と呼んでいる。
結局こういうふうにして骨抜きにしてその骨がマイノリティに刺さる。様々なことに折り合いを付けながらマイノリティは生きてきたので、それを犯罪が起こるかのように言うこと自体が差別だ。
今回の最高裁判決は個別のケースに限定した判決であり、当該コメントのように判決の内容を独り歩きさせることは司法の意図と異なるものです。
特に気になるのが、相変わらず「マイノリティとマジョリティの関係」を「弱者と強者の関係」と完全に混同している点です。差別の問題について、差別の対象とされる特定のステイクホルダーを特別視して優遇することは、欧米のように差別をより助長したり、逆差別を生んだりすることになります。
その意味で「すべての国民が安心して生活ができるよう留意する」とするのは社会的正義であり、この平等原則を否定することはシス・ジェンダーに対する明確な差別です。
松尾貴史氏:「トイレに女装して入ってきたらどうだ」という犯罪的なことを前提に妄想で語ることで理解を増進することに抵抗する悪意を持ったデマをあまりにも簡単に拡散し過ぎている。単に多数派が、みんなが想像しやすいような妄想を拡げることは慎重であるべきだ。
松尾氏は一部の悪意あるデマの存在を根拠にして、女性トイレの問題の論点を安易に回避しています。例えば、男性がトランス女性を装って女性トイレを利用するのも、性転換手術を受けていないトランス女性が女性トイレを利用するのも外形的には区別できませんし、性器の確認を厳格に行うことも事実上は困難です。この問題のケースは極めて多様なのです。
なお、他人を注意する前に「みんなが想像しやすい妄想を拡げることに慎重であるべき」なのは松尾氏自身と言えます。先述した防衛費問題に対するコメントこそ、妄想に終始しています(笑)。