7月15~16日、2022/2023年ABB FIAフォーミュラE世界選手権シーズン9の第13戦、第14戦ローマE-Prixがイタリア・ローマで開催され、第13戦はミッチ・エバンス(ジャガーTCSレーシング)、第14戦はジェイク・デニス(アバランチ・アンドレッティ・フォーミュラE)が優勝を飾った。
イタリアの首都ローマ市街に設営された特設サーキットで行われたフォーミュラEのダブルヘッダーレース。まず15日に行われた第13戦の予選では、昨シーズンのローマ戦でも連勝を飾るなど、同地を得意としているエバンスがデュエル形式の予選を勝ち上がりポールポジションを獲得した。
その午後、気温30度を超える暑さのなか迎えた決勝レースのスタートでは、2番グリッドのサム・バード(ジャガーTCSレーシング)が抜群の蹴り出しをみせてエバンスをかわすと、ジャガーTCSレーシング勢が1-2体制で隊列をリードしていく。
3周目には、16番手を走行していたアンドレ・ロッテラー(アバランチ・アンドレッティ・フォーミュラE)がクラッシュしマシンをコース上に停止させた影響で、早くもレースはセーフティカー(SC)が導入される。
レースは5周目に再開。そのリスタート直後、トップを走るジャガーTCSレーシングの2台はエバンスとバードの順位を入れ替え、エバンスが隊列の先頭に出る。2番手に下がったバードは、ペースが上がらないのか後方のサッシャ・フェネストラズ(ニッサン・フォーミュラEチーム)とレネ・ラスト(ネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム)にも順位を譲り、4番手にダウンしてしまう。
この順位変動で生まれた少しのギャップを利用して、各ドライバーが1度目のアタックモードを使用していくなか、9周目には順位を下げたバードが高速コーナーのターン6でリヤを滑らせ単独スピン。バードのマシンはコーナーのブラインドとなる位置に停止してしまい、後続のセバスチャン・ブエミ(エンビジョン・レーシング)、エドアルド・モルタラ(マセラティMSGレーシング)らがバードのマシンに続けざまに追突する多重クラッシュが発生。このアクシデントの影響でレースは即座に赤旗中断となった。
クラッシュした3台のほかにも、アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム)、ルーカス・ディ・グラッシ(マヒンドラ・レーシング)、ロビン・フラインス(ABTクプラフォーミュラEチーム)がマシンにダメージを負ってしまい、計6台がリタイアに。しかし、幸いにもクラッシュを喫したドライバーたちに大きなケガはなく、クラッシュ発生からおよそ45分後、レースはフェネストラズを先頭にスタンディングスタートで10周目から再開を迎えた。
好スタートを決めたフェネストラズを先頭に隊列は周回を重ねていく。しかし、レース前半にバッテリーを多く消費していたフェネストラズはペースダウンを余儀なくされ、その隙に2番手のデニスがトップへ浮上する。
その後は、アタックモードの使用に伴ってトップ集団の順位が入れ替わっていく展開になり、トップ走行のデニスはライバルたちに対してバッテリー残量が数パーセント劣りペースを上げることができない。これを見た2番手のエバンスは22周目のターン7でデニスをオーバーテイクして首位に立つと、そのままラストスパートをかけて第13戦のトップチェッカーを受けた。2位にはデニスを抜いたニック・キャシディ(エンビジョン・レーシング)がつけ、3位にはマキシミリアン・ギュンター(マセラティMSGレーシング)が入っている。
■第14戦はニッサンのナトが大躍進の2位表彰台獲得
翌日曜日には第14戦の予選が行われ、シリーズタイトルを争うデニスとキャシディがデュエル形式の最終バトルで直接対決を演じ、わずか0.071秒の差でデニスがポールポジションを獲得。そして3番手には、前大会ポートランドに続いて速さを披露したノルマン・ナト(ニッサン・フォーミュラEチーム)がつけた。
土曜日に続き、雲ひとつない好天のもとに迎えた第14戦の決勝スタートでは、ポールスタートのデニスがトップを守って1コーナーを駆け抜けていく。
しかし2周目のターン7で、3番手のエバンスがブレーキングで姿勢を乱し、減速しきれず2番手のキャシディに追突してしまうアクシデントが発生。エバンスのマシンはキャシディのマシンに乗り上げそのままバリアにクラッシュし、追突されたキャシディもコーナーを曲がることができずにエスケープゾーンへと退避した。キャシディはその後レースに復帰したが、エバンスはピットにマシンを戻し、レースを終えている。
このクラッシュによりSC導入となったが4周目に再開となり、デニスを先頭とする隊列は、1度目のアタックモードを使用するタイミングを伺いつつも周回を重ねていく。
8周目に首位のデニスは1度目のアタックモードを使用し、2番手ナトもデニスに合わせてアタックモードへ。首位デニスは前日に苦戦したバッテリーマネジメントに注意しながら、2番手に浮上してきたバードの猛攻に耐える周回が続く。
12周目には、ルーカス・ディ・グラッシ(マヒンドラ・レーシング)がターン8でウォールにヒットするアクシデントが発生するも、レースはそのまま続行に。続く13周目にはバードが1度目のアタックモードを使用するためにアクティベートゾーンに進むと、ニッサンのナトが2番手に浮上してくる。
トップのデニスと2番手のナトは、ともに順位をキープしながら2度目のアタックモードを使用してレースは折り返しを迎える。首位デニスに接近したいナトだが、背後から迫るバードに対する防戦を強いられ、デニスはこの間にバッテリーマネジメントに徹する走りにシフトする。
2番手のバトルにも助けられたデニスは、後続とのギャップに注意しながらペースコントロールに専念し、最終的には3.105秒のリードを築いてトップチェッカーを受けた。2位にはバードとのバトルを制したナトが入り、ニッサン勢としては今季初の表彰台獲得に。3位には第13戦で喫したクラッシュの雪辱を晴らすバードが続いた。
ローマE-Prixを終えてのポイントランキングトップは第14戦優勝のデニスとなった。ランキング2位にはキャシディが続くも、第14戦の14位ノーポイントが響き、デニスと24ポイント差をつけられている。フォーミュラEシーズン9の次戦は、7月29~30日にシーズン最後の大会となる第15戦、第16戦ロンドンE-Prixが開催される予定だ。
■2022/23年フォーミュラE第13戦&第14戦ローマE-Prix 順位結果
2022/23年フォーミュラE第13戦ローマE-Prix 順位結果
Pos. No. Driver Team Lap/Gap Grid
1 9 M.エバンス ジャガーTCSレーシング 27Laps 1
2 37 N.キャシディ エンビジョン・レーシング 1.639 9
3 7 M.ギュンター マセラティMSGレーシング 9.126 8
4 27 J.デニス アバランチ・アンドレッティ・フォーミュラE 21.010 7
5 25 J-E.ベルニュ DSペンスキー 21.482 16
6 51 N.ミューラー ABTクプラフォーミュラEチーム 21.858 14
7 17 N.ナト ニッサン・フォーミュラEチーム 24.071 11
8 3 S.セッテ・カマラ NIO333レーシング・フォーミュラEチーム 25.427 21
9 94 P.ウェーレイン タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム 28.582 10
10 23 S.フェネストラズ ニッサン・フォーミュラEチーム 30.342 3
11 1 S.バンドーン DSペンスキー 44.961 12
12 8 R.メリ マヒンドラ・レーシング 1’05.048 19
13 33 D.ティクトゥム NIO333レーシング・フォーミュラEチーム 1’34.800 18
NC 5 J.ヒューズ ネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム DNS 0
NC 11 L.ディ・グラッシ マヒンドラ・レーシング DNF 15
NC 48 E.モルタラ マセラティMSGレーシング DNF 6
NC 4 R.フラインス ABTクプラフォーミュラEチーム DNF 17
NC 16 S.ブエミ エンビジョン・レーシング DNF 4
NC 10 S.バード ジャガーTCSレーシング DNF 2
NC 36 A.ロッテラー アバランチ・アンドレッティ・フォーミュラE DNF 20
NC 58 R.ラスト ネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム DNF 5
NC 13 A.F.ダ・コスタ タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム DNF 13
2022/23年フォーミュラE第14戦ローマE-Prix 順位結果
Pos. No. Driver Team Lap/Gap Grid
1 27 J.デニス アバランチ・アンドレッティ・フォーミュラE 24Laps 1
2 17 N.ナト ニッサン・フォーミュラEチーム 3.105 3
3 10 S.バード ジャガーTCSレーシング 3.633 5
4 48 E.モルタラ マセラティMSGレーシング 4.357 9
5 16 S.ブエミ エンビジョン・レーシング 5.004 8
6 7 M.ギュンター マセラティMSGレーシング 5.403 6
7 94 P.ウェーレイン タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム 11.586 15
8 1 S.バンドーン DSペンスキー 11.951 18
9 33 D.ティクトゥム NIO333レーシング・フォーミュラEチーム 12.563 7
10 51 N.ミューラー ABTクプラフォーミュラEチーム 13.313 19
11 5 J.ヒューズ ネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム 14.507 11
12 13 A.F.ダ・コスタ タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム 18.034 10
13 58 R.ラスト ネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム 21.029 13
14 37 N.キャシディ エンビジョン・レーシング 23.475 2
15 25 J-E.ベルニュ DSペンスキー 1’26.623 12
16 23 S.フェネストラズ ニッサン・フォーミュラEチーム 1LAP 22
NC 9 M.エバンス ジャガーTCSレーシング DNF 4
NC 8 R.メリ マヒンドラ・レーシング DNF 21
NC 11 L.ディ・グラッシ マヒンドラ・レーシング DNF 14
NC 3 S.セッテ・カマラ NIO333レーシング・フォーミュラEチーム DNF 16
NC 4 R.フラインス ABTクプラフォーミュラEチーム DNF 20
NC 36 A.ロッテラー アバランチ・アンドレッティ・フォーミュラE DNF 17