●けが人なし、店内に爪跡
19日午前8時35分ごろ、加賀市永井町にあるウサギと触れ合える観光施設「月うさぎの里」で、クマ1頭が店内に侵入したと従業員が大聖寺署に通報した。営業開始前で客はおらず、従業員14人は避難して無事だった。署員が9時間半かけて施設内を隅々まで捜索したが、クマは見つからず、午後6時に捜索を終了した。施設の窓から外に出たとみられる。周辺は報道陣や住民が集まり、騒然となった。市と猟友会は施設近くに捕獲用おりを設置し、周囲で警戒を続ける。
市などによると、侵入したのはツキノワグマの成獣とみられる。施設1階の厨房の勝手口から侵入し、窓から建物の外へ出た可能性がある。1階レストランのいすや階段には爪の跡があり、階段踊り場にはフンも残されていた。クマの姿を目撃した施設の宮谷正志社長(54)は「1.6メートルほどあったように見えた」と話した。
現場は加賀市役所の約3キロ西に位置し、大聖寺川と丘陵の間にある。屋外では50匹以上のウサギが放し飼いにされているが、クマが入れないように従業員が入り口を閉め、被害はなかった。
石川県警と同署は通報直後から午後6時まで、現場周辺の国道305号を通行止めとし、付近住民や工場従業員に外出を控えるよう呼び掛け、市の防災メールでも注意を促した。施設周辺では盾を構える警察官の姿も見られ、物々しい雰囲気に包まれた。
加賀市内では今年度、18日時点でクマの目撃情報が市に26件寄せられ、秋にクマが大量出没した2020年の同時期の目撃件数を上回っている。県内全体では71件で加賀が最も多い。
■クマ出没ドキュメント
8時半 女性従業員が1階厨房でクマを目撃。施設内にいた従業員14人が避難
8:35 宮谷社長が階段踊り場でクマを確認し、大聖寺署に通報
9:56 市が防災メールで注意を呼び掛け
14:20 施設前にいた猟友会員や市職員が車内で待機
15:10 盾を持った署員が施設内に入る
17:20 宮谷社長と署員が施設内にクマがいないことを確認
17:45 捜索終了を決定
18:00 署員、市職員、猟友会員が現場を引き揚げる