まだまだこれから!酒井法子16年ぶりの新曲「Funny JANE」にみる攻めの決意表明  酒井法子が新たにレコーディングに臨んだ「Funny JANE」

「Premium Best」に新たな血を注いだ「Funny JANE」

酒井法子デビュー35周年のアニバーサリーとしてリリースされた『酒井法子 Premium Best』。正統派アイドルのイメージを完膚なきまで全面に打ち出したドリーミーな世界観が凝縮されたデビューシングル「男のコになりたい」や70年代から踏襲された歌謡曲の哀愁感を見事にマッシュアップさせた「ノ・レ・な・いTeen‐age」などのアイドル期。

そして、90年代、国民的なヒットとなった「碧いうさぎ」を前後とした、シンガーとしての実力を蓄え、情感の機微をメロディーに乗せ、聴き手の心を揺さぶるような名曲を数々残した時代も網羅されている。

確かに、そんな酒井の歌手活動を集大成するような豪華な内容になっている。しかし、それだけではない。新曲「Funny JANE」を収録することにより、このベストアルバムに見事、新たな血を注ぎ込んだと言えよう。

作曲は伊澤一葉。ジャジーなレトロ感と最新型のクラブサウンドが共存

瞬発的なドラムロールから、鍵盤が弾けるようなピアノのメロディーでグルーヴがうねりを上げる「Funny JANE」。歌い出しで感情を幾分抑えたかのような酒井のボーカルは、TORNADO、HURRICANE、LEMONADE… といったリリックの中に潜む暗号のような単語を際立たせ、歌詞の世界観を形成させてゆく。

ボーカリストも楽器の一部のようにバンドアンサンブルの中に溶け込んでゆく。ジャジーなレトロ感と最新型のクラブサウンドと言ってもいいようなエッジの効かせ方が楽曲の中に共存しているのも特徴だ。作曲は東京事変のキーボーディストであり音楽プロデューサーの伊澤一葉。緩急のある立体的なメロディーには、新たな時代の幕開けを示唆するような壮大さすら感じさせてくれる。

その中で90年代以降に培ってきた情感をメロディに乗せる酒井の表現力は健在だ。同時にデビュー期の瑞々しさをそのままに、年を重ね生きてきた証をメロディに乗せるかのような力強さが同居している。これが “現在の酒井法子” なのだ。

「Funny JANE」の存在感は、アルバムのメモリアル的なイメージを一新させ、これからも続く酒井法子の軌跡の中で大きなターニングポイントとなったはずだ。

作詞は森雪之丞。攻めの酒井法子の輪郭がくっきりと浮かびあがる

そして、リリックを紡ぐのは森雪之丞。これまでに「GUANBARE(ガンバレ)」(88年)、「あなたに天使が見える時」(91年)、「モンタージュ」(91年)などを提供。酒井とも旧知の仲だ。酒井は事前の打ち合わせで、2010年に公開されたミュージカル映画『バーレスク』の世界観で行きたいと森に伝えたという。森が紡ぐショービジネスの煌びやかな世界、そして妖艶に踊るダンサーたちが瞼に浮かぶようなリリックも確かに酒井にとっては新境地だ。

そして特筆すべきは、この世界観の中に2023年の酒井法子の輪郭がくっきりと浮かびあがっていた。それは、こんな一節からも強く感じられる――。

 人は喩えて冒険者
 愛の挑戦者

 変わる世界 闇も光も
 あなた次第で 変幻自在

―― これは、今の酒井の決意表明だと言っても良いだろう。つまりこれは “攻めの酒井法子” である。

今までの楽曲にはなかった “大人カッコイイ世界”

「Funny JANE」は、これまでの酒井のどの楽曲にも似たタイプがない全く新しいタイプだ。この曲を聞いてみんなが踊りたくなるような、そんな曲ができたらいいなと希望。ここで、「私以外の私」を表現したかったと酒井は言う。そして、今後ディナーショーでファンが楽しんでもらえる “大人カッコイイ世界” を作りたいという思いからレコーディングに臨み、本人も納得がいく形で完成した。

今回リリースされた『酒井法子 Premium Best』の付録である豪華ブックレットにはデビュー期からの煌めき全てをパッキングしたような写真が並ぶ。そして、巻末のページにはレコーディングに臨む現在の酒井の写真が小さく載っている。自然体の笑顔でありながら、酒井自身の未来を示唆するような多幸感が溢れている。それは、「まだまだこれから」とファンに語りかけているようにも思えた。この「Funny JANE」でこれからの酒井法子をしっかりと見据えて欲しい。

カタリベ: 本田隆

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