捕食を意図的に作り出す、エサ釣りとは対局。トップちゃんと使えてる?ヒロ内藤に学ぶルアーフィッシング。

バス釣り黎明期から活躍し、日米のバスフィッシングの歴史を橋渡ししてきたヒロ内藤さん。氏の持つ理論や哲学は、長い歴史を今に繋ぎ、バスフィッシングをもっともっと魅力的なものにしてくれる。「釣れた」ではなく、「釣った」を実感させてくれるその「ヒロイズム」を学べば水面の釣りがもっと面白くなるはずだ!!

●文:ルアマガプラス編集部

― ヒロ内藤(ひろ・ないとう)

本名・内藤裕文。釣り歴60年にも及ぶ、日本のバスフィッシング黎明期から活躍するレジェンドアングラー。日本人が手探りでバス釣りを楽しんでいた時代に渡米し、バグリーに入社。さらには日本人としてははじめてバスマスタークラシックのプレスアングラーとして参加し、本場のバスフィッシングを吸収。日本のバスフィッシング文化発展に大きく貢献している功労者だ。群馬県館林出身フロリダ在住。

ヒロさんが実釣の舞台に選んだのは、日本のバス釣り発祥の地・芦ノ湖。各地のフィールドで釣りをしてきたヒロさんが最も好きなフィールドのひとつだとか。例年であればトップウォーターの釣りによる釣果で賑わい始める季節だという。濃い霧に覆われた早朝の雰囲気は決して悪くないが果たして…?

芦ノ湖でお世話になったのは、「芦ノ湖フィッシングセンターおおば」さん。芦ノ湖の北側に位置しており、併設されたレストランも大人気だ。この日は最新のアルミボートセットをレンタル。エンジン付きなうえに、エレキはウルトレックスで、ライブスコープも搭載しているハイスペック仕様だ。

今回の取材は、普段フロリダで生活しているヒロさんが帰国した機会にお願いしている。そのため、ヒロさんが当日持参してくれたのは、厳選されて日本に持ち込まれたアメリカンルアーたち。そのすべてを誌面で紹介することは叶わないが、この中でもとくにおもしろいとオススメしてくれたルアーを中心に解説していく。

関東屈指のクリア ウォーターフィールド!

梅雨入りを目前に控え、荒天の合間を縫うようにヒロさんがやってきたのは、神奈川県・芦ノ湖。おおよそ100年前に、日本で初めてブラックバスが放流された記念碑的フィールドだ。

フロリダに居を構えるヒロさんは、取材日当日の3日前に帰国したばかりであり、この日が今回の来日で一発目の実釣になるという。そういった状況の中、なぜ芦ノ湖なのか。

「日本はもちろんアメリカの色々なフィールドでバス釣りをやってきましたが、ここ芦ノ湖はトップクラスに好きなフィールドのひとつです。不思議なことに、河口湖なんかと違って放流されたバスすらもすぐさま賢くなる非常に難しいフィールドです。でもだからこそやりがいがあるし、ここで生まれ育った地物の魚は本当にクオリティが高いですからね。そういった魚たちをトップで狙っていきたいと思います」

この日は朝のみ小雨がぱらつくがおおむね晴れの予報。前日まで降っていた雨は芦ノ湖の水に若干の濁りを落とし、大きな水位上昇という影響を与えていた。

「濁りといってもここの水が霞ヶ浦と比べてどうである…とかではなく、普段の水と比べてどうなるかが重要。一見すると綺麗に見えますが、普段に比べると魚に影響の有りそうな濁りになっています」

余談だが、芦ノ湖と言えば、トラウト狙いのグリグリメソッドと呼ばれるミノーの高速ストップ&ゴーテクニック発祥の地。しかし近年はその効果も薄くなっているという。

「ミノーをストップ&ゴーさせる釣りが成立する程度に水に色がついていて、当時は魚のレンジも浅かったんです。それが最近ではよりクリアアップしているので、トラウトの泳層が深くなってグリグリメソッドが効きにくくなっているようですね。ですがそれだけ透明度が高いので、バス狙いのトップの釣りでは、平常時の透明度で水深4メートルくらいのブレイクエッジにいる魚を狙うことができますよ」

5時を周りいよいよ出船。ポップRを使って桟橋周りのシャローエリアからチェックしていく。
「桟橋はもちろんブイやそれにつながるロープなどのそばに浮いていることが多いので、そういった場所に投げていきます」

キャストして着水後、一息おいてロッドを小さく2~3回煽る。このときのロッドワークの間隔は1~2秒。その後、5秒ほどのボーズ。そして時折強めのジャーク。ヒロさんのポップRの操作は単調のようで単調ではない。

小雨と霧が入り交じる湖面に、小気味よいポップ音が鳴り響く。しかし水面はなかなか割れてくれない。桟橋を中心としたマンメイドストラクチャーを一通りチェックしたところで、ヒロさんはちょうどボート桟橋の対岸、深良水門方面へと移動。西側のバンクを流すことに。

「先程のボート屋さんまわりは比較的放流されたバスも多いシャローエリアでしたが、ここからは地物が狙える場所となります。放流魚は本湖を渡ってまでこちらには来ないみたいなんです」

ヒロさんは自身プロデュースの最新ロッド・カリプソを自在に操り、オーバーハングの下や岸際に驚くべきキャスト精度でルアーを投入していく。

「特に狙っているのは、沈んでいる岩と岸際の岩盤の間にできる隙間。そういった場所に居着いていたり、回遊している魚がいるとてっとり早いんですが…」

途中、ザラスプークボイオやペンシルポッパーを試したものの、反応は得られず。気がつけばすっかり空は晴れ渡り、風も吹き出している。

「ちょっとトップをやるには波立ち過ぎかもしれませんね。でもここと同じようなシチュエーションは色々なところにあるので、色々と回っていきましょう」

少し南下して、東岸の箱根園エリアにやってきたヒロさん。再び岸際にポップRを投げていると、ついに反応が! しかし水面が破裂したのはルアーの少し後方だ。

「やってしまいましたね。水深があるのはわかっていたので、もう少し待ってあげないといけなかったのですが…。バスがルアーに追いつけなくて目測を誤ってしまいました。シャローエリアならこのままルアーを投げ直すことでもう一度チャンスがあるかもしれませんが、水深が深いとそうもいかないのです」

ヒロさんがルアーを投げていたのは、オーバーハングが絡む垂直岩盤付近。バイトがあったあたりで水深は3メートルほどだ。しかしトップには反応が得られる! 情報を前向きに捉え、ヒロさんは休むこと無く正確無比なアプローチを続けていく。

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