デジタル版「カリガリ博士」を目指す 悪夢を見ているかのような映像美 「ヒンターラント」予告

2023年9月8日より劇場公開される、アカデミー賞外国語映画賞受賞作「ヒトラーの贋札」のステファン・ルツォヴィツキー監督最新作「ヒンターラント」の、予告編映像が公開された。

映像では、美しい悪夢を見ているかのような独創的な映像美と、さまざまな方法で惨殺される戦友たち、謎の数字やキーワードといった要素が映し出されている。

全編がブルーバックで撮影されたゆがんだ背景と独創的な映像について監督は、「戦争に破れ世界全体がおかしくなってしまったと感じている主人公の認知のゆがみを視覚的に表現している」と語ると同時に、「デジタル版の『カリガリ博士』を描こうと言う試み」だったと明かしている。「カリガリ博士」とは、非現実的な描写によって内面的な感情や主観的な意識を強調し描く「ドイツ表現主義」の代表作を指す。

「ヒンターラント」は、戦争ですべてを失った主人公の元刑事ペーターが、かつての戦友たちを標的にした連続殺人事件に直面する物語の作品。第一次世界大戦終結後、長く苦しいロシアでの捕虜収容所生活から解放され、ようやく故郷にたどり着いた元刑事ペーターと戦友たち。しかし、帰国した彼らを待ち受けていたのは、変わり果てた祖国だった。帰宅した家に愛する家族の姿はなく、行き場をなくすペーター。そんな最中、河原で拷問の跡のある、ペーターと同じ帰還兵であるかつての戦友の遺体が発見される。ペーターは自身の心の闇と向き合い、真相を暴くため動き始める。

「ヒトラーの贋札」と同じく歴史の暗黒時代に焦点を当てながら、全編ブルーバックによる撮影により、残酷な戦争の悲劇を寓話的・絵画的に描き出した、ダークファンタジーのような世界観の作品となっている。ロカルノ国際映画祭では観客賞を受賞。母国のオーストリア映画賞では6部門ノミネートされ、美術賞を受賞した。

【作品情報】
ヒンターラント
2023年9月8日(金) 新宿武蔵野館 ほか 全国ロードショー
配給:クロックワークス
🄫 FreibeuterFilm / Amour Fou Luxembourg 2021

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