日経関連会社クイックと連合総研が「働きがい指標」 非正規格差の開示を重視

日本経済新聞社のグループ会社で金融情報サービスのクイック(東京都中央区)と連合のシンクタンクである連合総合生活開発研究所(東京都千代田区)はこのほど、企業の働きがいに関する情報開示のための指標「日本版ディーセント・ワーク8指標」(JD8)を発表した。男女間賃金格差や両立支援施策の進捗のほか、労働時間や賃金、人的資本投資については雇用管理区分別に指標化し、正規・非正規間の格差開示を促す。ESG投資の世界的な高まりのなかで、S(社会)分野の情報開示を通じた企業と投資家の対話を加速させ、将来的に投資指数(インデックス)化を目指すという。

「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」は、1999年にILO(国際労働機関)が提唱した考え方であり、SDGs(持続可能な開発目標)の一つ(ゴール8)だ。指標は、①適切な労働時間と賃金、②男女格差の撤廃、③柔軟な働き方、④職場の安心、⑤人的資本への投資、⑥ダイバーシティ&インクルージョン、⑦サプライチェーンの働き方、⑧健全な労使関係――の8つ。各指標は中核指標13と補完指標12の計25の指標に細分化している。


連合総研とクイックは2020年9月に共同の調査研究委員会を発足し、約3年かけて取りまとめた。国際的な基準を踏まえ、雇用間格差など日本固有の構造的な問題に着目して指標化している点が特徴だ。

研究委員会で主査を務めた高崎経済大学の水口剛学長は、7月20日に両者が開いたシンポジウムに登壇し、「指標に基づく企業の情報開示で投資家が投資判断していくことで、正規・非正規間の格差是正など働きやすい社会が進み、人的資本の蓄積が促される」と指摘。

一方で企業側の視点について、「働きがいのある職場を提供する企業ほど、多くの人的資本(人材)の獲得と企業価値向上を生み出し、経済活動や賃金の向上につながる好循環を生む」と指標の狙いを説明。「正規・非正規の雇用区分は海外にはあまりない。日本固有の状況を踏まえて開示を進めるべき」と付言した。

同じくシンポジウムに登壇した日立製作所サステナビリティ推進本部の増田典生主管は「国際的に投資を呼び込むだけでなく、指標にそって人材戦略を整理し、情報開示への流れを通じて企業活動として実際にワーク(機能)させていくためにも有用。また社内で指標をクリアに示すことで、社員一人ひとりのモチベーションやロイヤリティにつながる面がある」と述べた。

機関投資家協働対話フォーラムの木村祐基代表理事は「『企業は人なり』というように、もともと投資家は企業の人材活用の状況を重視してきたが、これまでは『開示』があまり行われてこなかったので個別にヒアリングしていた。企業がデータとして具体的に情報開示していく流れは、投資家にとってもプラス」と話した。

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