人気YouTuber街で女性に“バストサイズ”尋ね炎上 犯罪にあたる可能性「ある」弁護士解説

※現在非公開の動画のサムネイル(編集部で一部加工)

チャンネル登録者数250万人を超え、ラジオ大阪でレギュラー番組も持つYouTuber(ユーチューバー)のジュキヤ氏が先月23日、「彼氏持ちの女たちに胸触らせて?と聞いてみたらマジでエグかった」(現在は削除)と題する動画を投稿し、物議を醸した。

以前から、街で女性やカップルらに性的な話題についてインタビューを行っていたジュキヤ氏だが、特に23日に公開された動画については「セクハラ」「性暴力」「性犯罪」など厳しく糾弾された。

街中で通行人に突然性的な話を持ちかけたり、女性に胸のサイズを聞くといった行為は犯罪には当たらないのだろうか。

炎上した“切り抜き動画”の内容

まず、先月23日に公開され、現在削除されている問題の動画「彼氏持ちの女たちに胸触らせて?と聞いてみたらマジでエグかった」は、以下のような内容だった。

ユーチューバー「中町兄弟」(登録者数148万人)の兄・JP氏とジュキヤ氏がともに、東京・渋谷で女性のバストサイズを聞き、A~Hカップの女性をすべて見つけるまで企画を終われないという趣旨。特に炎上したのは、ジュキヤ氏が動画内の一部を切り抜いてツイッターに投稿したいわゆる“切り抜き動画”だ。

一緒にいた男性を別の場所に移動させ、1人残された女性Mさんに対し、聞こえないふりをして何度もバストのカップ数を言わせたり、拒否されたにもかかわらずバストサイズを測定するそぶりを見せた場面で、動画内にはテロップで「女の子が怯えてる」と表記もあった。

その後、今月6日になってジュキヤ氏は動画「例の女の子について」(現在は削除)を投稿。動画にはMさんも出演し、直接ジュキヤ氏が謝罪した。女性も「おびえていた訳ではない」と主張し、騒動は一旦収まりをみせた。

しかし女性が「おびえていなければ」、この手の動画は問題ないのだろうか。

4つの犯罪に問われる可能性

性犯罪などの刑事事件にも多く対応する本庄卓磨弁護士は、ジュキヤ氏の動画での行動について「4つの犯罪に問われる可能性がある」と話す。

①迷惑防止条例(東京都の正式名称:『公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例』)が定める「卑わいな言動」に該当
⇒6か月以下の懲役または50万円以下の罰金(東京都の場合)

②不同意わいせつ罪(刑法176条)
⇒6か月以上10年以下の懲役

③強要罪(刑法223条)
⇒3年以下の懲役

④(女性が未成年者である場合)青少年保護・健全育成を定める各都道府県の条例(都道府県により名称や罰則が異なる)違反
⇒2年以下の懲役または100万円以下の罰金(神奈川県の場合)

女性側の同意があった場合は、②不同意わいせつ罪や③強要罪には該当しないというが、①や④などの、“条例違反”に問われる可能性は残るという。

(※)16歳未満の場合は同意があっても、不同意わいせつ罪に当たることがある。

ジュキヤ氏動画の問題点とは

具体的に、ジュキヤ氏のどのような行動が罪に問われる可能性を有しているのか。

本庄弁護士は「人を著しく羞恥させ、または人に不安を覚えさせるような態様の“卑わいな言動”は、迷惑防止条例違反になる」として、「バストサイズという性的事項を聞かれることに恥じらいや抵抗感を抱く女性もいること、周囲に不特定多数の人がいる状況であり撮影される側に心理的圧迫を感じさせる状況であることからすれば、当該ユーチューバーのバストサイズを聞く行為は、東京都迷惑防止条例に違反する可能性があります」と説明する。

迷惑防止条例では、2018年に、女子高校生(当時16)が渋谷駅のハチ公前広場において、バニーガール風の衣装を着て「フリーおっぱい」と書かれたスケッチブックを掲げ、通行人約20人の男女に胸を触らせたとして書類送検された例もある。女子生徒のほか、同条例違反容疑で撮影していた男子高校生(当時18)と、同条例違反ほう助容疑で映像制作会社社員の男性(当時23)も書類送検された。

本人たちが書類送検されたため、撮影された動画は公開されることのない“お蔵入り”となったが、当時の報道によれば、女子生徒らは「再生回数を増やして広告料収入を得たかった」などと話していたという。

「過激な動画」アウトとセーフの線引きは難しいが…

ジュキヤ氏は今月14日、新たに投稿した動画「女体盛りを食べよう!」(現在は削除)でも、水着姿の女性の上に刺し身を並べて食べ、再び炎上。SNSでは「炎上狙いだとしてもキツい」「下品」などまた多くの批判を浴びている。

動画が議論を呼び“炎上”することで動画の再生回数が伸びるため、広告料収入をより多く得ようと、過激な動画を公開するユーチューバーらは後を絶たない。

動画の企画内容が犯罪に当たらないために、動画製作者や配信者らが気を付けるべきことについて本庄弁護士は以下のように語った。

「感じ方には個人差があるため『こんな行為はアウト、ここまではセーフ』という線引きは難しいのですが、一般の方との物理的な接触を控えることが望ましいのはもちろんのこと、撮影対象者や視聴者に不安感や拒否感を与える可能性がある言動は控えるべきだと思います。

簡潔に言えば、『撮影対象者や視聴者の気持ちや立場に配慮し、責任を持って行動するべき』ということでしょうか。それができる人間に私もなりたいと思います」。

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