前科者の社会復帰に横たわる問題 現代社会の不寛容を問いかける 「過去負う者」公開決定

「ある職場」の舩橋淳監督最新作「過去負う者」が、10月上旬より劇場公開されることが決まった。

「過去負う者」は、前科者の社会復帰に横たわる問題を描いた作品。受刑者向けの就職情報誌「CHANGE」編集チームは、出所者の就職あっせんと更生支援をしていた。チームのひとり藤村は、ひき逃げによる殺人罪で10年服役した田中を担当。中華料理屋に就職させたもののキレやすい性格でトラブルが続いている。女子児童へのわいせつ行為により2年服役した元教師・三隅は、職に就いたとたんすぐ消息を絶つ。長年続くコミュニケーション障害でなかなか社会にフィットできない元受刑者を目の当たりにした藤村らは、アメリカの演劇による心理療法・ドラマセラピーを提案する。

日本の刑務所満期出所者が5年以内に再犯し、入所する確率は約50パーセント。背景には、再入所者の7割が無職だったという事実があり、元受刑者は「就労」がしづらいという大きな問題にぶつかっている。劇映画からドキュメンタリーまでを幅広く手掛ける舩橋監督は、実際のセクハラ事件に基づいて役者との即興劇で描いた前作「ある職場」と同様に自らプロデューサーも務め、前作とほぼ同じキャスト・スタッフで、前科者の社会復帰に横たわる問題を描いた。本作でも、あえて台本は用意せず、現場で俳優と演技を煮詰めてゆく演出手法で作り上げた。

【作品情報】
過去負う者
2023年10月上旬より東京・ポレポレ東中野ほかにて全国順次公開
配給:株式会社BIG RIVER FILMS

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