求む、次世代のヨット乗り 大洋レース先駆者・北田さん(青森県東通村)、育成に力

「一生懸命仕事をし、一生懸命遊ぶ」という北田さん。今は次世代のオーシャンセーラー育成に力を注いでいる=14日、青森港

 極めて過酷な大西洋横断ヨットレースを3度完走するなど国内外で活動するオーシャン(大洋)セーラー北田浩さん(58)=青森県東通村=が、次世代セーラーの育成に力を入れている。準備が9割といわれるヨットレースで、国内の先駆者としての知識と経験を伝えて競技参加者の裾野を広げ、大洋レースへ挑戦したいという人たちの夢を支援していく。フランスで建造した愛艇「(7代目)貴帆(きほ)」を7月に初めて青森県入りさせた際、青森港で東奥日報の取材に応じた。

 同村に本社がある会社を経営する北田さんは、40歳でヨットに出合った。48歳で米西海岸からハワイを目指す「トランスパック」に出場。51歳の時は英プリマスから米ニューヨークまでの単独大西洋横断レース「ザ・トランザット」に日本人として初出場、初完走を果たした。54歳でも単独大西洋横断レース「ルート・デュ・ラム」を完走した。

 豪華客船タイタニックが沈没した海域も通るトランザットでは、天候が目まぐるしく変わり、船内で体を飛ばされるなど「命の危険を何度も感じた」という。

 国内とフランスを拠点にレースへ臨んできたが、新型コロナウイルス禍で2022年夏から国内での活動が中心となった。17年に設立し代表を務める「日本オーシャンセーラー協会」の事業として、22年からレース出場に必要なトレーニングや、船上でのけがや遭難をした場合の生存率を高めるサバイバル訓練、外洋に慣れる「オーシャンブートキャンプ」などを実施し、セーラーの技術向上に取り組んでいる。

 「伝えたいのは、自分自身がつまずいたり、苦戦したりしたこと」と北田さん。レース出場に必要な許可手続き、心身の調整、トラブルへの対応など北田さんが試行錯誤しながら得てきたノウハウを引き継いだセーラーたちが、時間と費用を効果的に使って準備を進めれば、海外で活躍できるようになると考えている。

 自身の今後の海外レース出場については「検討中」としつつ、「やりきったという思いもあり、今は次世代へつなぐための活動に力を入れていきたい」と北田さんは語った。

© 株式会社東奥日報社