リアルレトロ喫茶・神保町「さぼうる」へ、68年前と変わらぬ喫茶メニューを味わいに

喫茶店好きなら一度は耳にしたことがある老舗中の老舗、神保町「さぼうる」。2023年でなんと68年を迎えたのだとか。クリームソーダにピザトースト……、昭和から変わらぬ味を楽しめる、リアルレトロ喫茶店の魅力を深掘りしに行ってきました!

山小屋風の店内に流れるアメリカンロック、カオスな雰囲気こそ「さぼうる」の魅力

神保町駅から徒歩1分という好立地にある「さぼうる」。外観は山小屋風の見た目にトーテムポールと赤電話が共存するなんとも不思議樹な光景で、細い路地にあるお店ながら存在感は抜群です。入る前から「たんなる老舗喫茶店ではない」という予感がぷんぷんと漂います。

店内に足を踏み入れてみると、いたるところに民芸品やおみやげらしき物が所せましと飾られ、半地下になった客席の壁には落書きがびっしり。

4代目マスターの伊藤さんに内装について尋ねると、「飾っている物はお客さんがおみやげとして持ってきてくれたものがほとんど。もらった物の中から、店の雰囲気に合いそうなものを選んで飾っていったら、自然と今の内装になったんです。今でも、うちに合いそうだから、と持ってきてくれる人がいますよ」とのこと。この独特の雰囲気は、歴代のお客さんたちの手によって作られていたんですね。

おこもり感満点の店内に流れるのは、マスターがその日の気分で選ぶ音楽。この日はアメリカンロックがかかっていました。山小屋風の内装、民芸品のインテリア、そこに流れるアメリカンロック、このカオス感こそがまさに「さぼうる」です。

「昔とほぼ変えない」喫茶メニューに込められたこだわりとは?

クリームソーダとピザトーストと聞くと、今年流行しているレトロ喫茶のメニューというイメージがありますが、「さぼうる」からしてみると創業当時からの定番メニュー。

その中でもクリームソーダは「さぼうる」の人気メニュー。もともと4種類あり、少しずつ増え続けて、現在は7種類にまでなったのだそう。

最近カラフルなクリームソーダは珍しくありませんが、その元祖はこちらのお店。『なないろのクリームソーダ』という絵本にもなったほどなんです。今回は一番人気のブルーのクリームソーダ(¥800)を注文しました。

こだわりについて、マスターの伊藤さんによると、「うちのクリームソーダは、氷屋さんの氷をつかっているので、溶けにくいのが特徴。最後まで味が薄まることなく、おいしく飲めるんです」とのこと。たしかにアイスの味が薄まることなく、最後のひと口までしっかり満喫できました。

隠れた名品としておすすめしたいのが「いちごジュース」(¥750)。材料はいちご、氷、牛乳、シロップだけというシンプルなドリンクですが、その裏には老舗ならではのこだわりも詰まっていました。

伊藤さん「一年中、産地を変えながら、生のいちごを使うようにしているんです。その方が食感がいいので。そして氷は先にピックで細かく掻くようにしています。ミキサーでは軽く混ぜるだけにすることで、それぞれの食感が残るようにしているんです」

飲んでみると、いちごのツブツブ感と氷のシャリシャリ感をしっかりと感じられ、デザートのような贅沢感でした。

喫茶メニューの王道、ピザトーストは2度焼きで美味

もうひとつ、ぜひ堪能したいのが「ピザトースト」(¥850)。4㎝と厚めに切った食パンにバターとチーズ、具材がたっぷりと載っています。

伊藤さん「先にバターと具材だけ載せて焼き、そのあとチーズを載せてもう一度トーストしています。そうすることで中までしっかり火が通り、外はカリっと、中はふわっと、上のチーズはとろっとなるんです」

チーズたっぷりながら、しつこさはなく、むしろ軽めの食感。女性でもペロリと食べ切れました。

創業当時から通う常連さんも!変わらないことを楽しめる店

取材当日の朝、一番最初に訪れたお客さんは、なんと創業当初から通う超常連さん。そんな常連さんたちを名前で呼び、いつもの席へと案内し、いつものコーヒーを提供する。そんな老舗ならではの光景が広がっていました。

伊藤さん「コロナの影響でだいぶ減ってしまったけど、今も通い続けてくれる方はいます。“昔を思い出して”、と数十年ぶりにやってくる方も多いです。

先日はおじいさんと娘さんが二人で来て、おじいさんが学生時代を思い出すと言って喜んでくれました。内装もメニューもほぼ変えないのは、そうやって懐かしんでくれる人たちがいるからかもしれませんね」

10年後来た時も、もしかしたら今日と同じ風景かも? そう思うと”今日”来たことを楽しめそう。時をこえて楽しめる喫茶店、通えば通うほど愛おしくなるお店です。

About Shop
さぼうる
東京都千代田区神田神保町1-11
定休日 日曜日(祝日は不定休)

© 株式会社風讃社