モモコグミカンパニー BiSH解散後初の小説発売で決意「影響を与えられるものを書かないと小説に失礼」

元BiSHのモモコグミカンパニーが21日、自身2作目の小説「悪魔のコーラス」(河出書房新社)の発売日を迎え、都内のSHIBUYA TSUTAYA店で出版記念イベントを行った。開始前には報道陣の取材に応じた。グループ解散から間もなく1カ月。肩書は小説、文化人に変わり「影響を与えられるものを書かないと小説に失礼」と、覚悟を口にした。

ミッション系学園中等部に転校してきた主人公の女子学生が、合唱部に入部したことからイジメ、許されぬ恋愛、自殺、猫の惨殺など不穏な事件に直面し、調査の先に見えてきた学園の裏の顔、密かに続けられていた禁忌の実態が判明。教頭だった父の死の真相との関連が明らかになる中、クリスマス合唱祭で、すべての闇が明らかになる―という物語。学園、ミステリー要素がふんだんに盛り込まれた。

昨年9月から半年間、ラストスパートを迎えたBiSHの活動の合間を縫って執筆。「BiSHがなくなった後に何が残るのか不安定な状況だった。親子、中学生を書こうと思っていたが、根底には無意識のうちに人とのつながりをテーマに入れていた」と語り、力を入れた箇所については「具体的には言えないが、ラストの展開は自分でもこだわったところ」と語った。昨年の小説デビュー作「御伽の国のみくる」の主人公は、アイドルを夢みるメイド喫茶店員だった。「1作目はアイドルだから書けたんでしょ、という意見ももらっていたので、次は絶対違うものを書こうという野望があった。学園ものという、内容が試される作品にしたかった」と話した。

1作目と異なり、プロットを立てて筆を進め、視点は三人称から一人称になった。「三人称の方が書きやすいらしくて、(前作は)最初は一人称で書いていたが三人称に直したということがあり、今回は一人称にしたい野望もあった」と話した。プロットについては「最後まで話ができ上がっている状況だったので、どうやったらもっと面白くなるか、というものと戦いました。前作は次の1行を思いつかなかったら作品が完成しない恐怖がありました」と振り返り「小説を書く上で生みの苦しみはないですね。楽しく書けています」と続けた。

幼い頃からの読書好き。8年間活動したBiSHのオーディションは、新宿の紀伊国屋書店で立ち読みした雑誌で知った。小説の前にはエッセイ本も出版。「タレント本コーナーに置かれることがあって、次は文芸のところに置いてもらうんだ、という悔しさが次の創作につながった」という。

BiSH解散後はWACKからワタナベエンターテインメントに文化人枠として移籍。大手事務所で著名芸能人との交流も増えたはずだが「逆にBiSHの時の方がジャンルレスでした。今はテレビ局でご挨拶させて頂くことが多いが、BiSHの時は性に合わないこと、モデルとかもやっていた。もうバンドの方と会うこともないんじゃないかな。大手事務所に所属させてもらう身としては、自分をしっかり持ってなきゃいけないなっていうのは、以前よりあります」と話した。

今後は小説、文化人として活動を続ける。「悪魔のコーラス」の帯には直木賞作家・窪美澄から推薦が寄せられた。「窪美澄さんから、この人には書きたいものがすごくたくさんあるんだ、という言葉をもらいました。その通りです。私にとって、本を出すことは生き延びる手段。これからも大切に書きたいものを書きたい」と宣言した。そして「次に何を書きたいかと聞かれたら、何か一番しっくりくるものを自分で見つけるのがベスト。私は生きていて湧き出たものを頼りに書く。今回は暗いところからどうやって光を見つけるかという内容ですが、自分も救いを求めて本にすがっているところがある。本にして誰かの手に渡ることは、ただ言葉を借りて紙切れを売るのとは違う。影響を与えられるものを書かないと小説に失礼。次の作品も自分の中で意味のあるものは絶対に書きたい」と、誓いを新たにしていた。

新作小説「悪魔のコーラス」の発売記念イベントを開いたモモコグミカンパニー=都内
人気漫画家・宮崎夏次系が描き下ろした「悪魔のコーラス」(モモコグミカンパニー)の書影(帯付き)

(よろず~ニュース・山本 鋼平)

© 株式会社神戸新聞社