半世紀ぶりにみこし巡行 栃木・星宮神社の夏祭り「大杉祭」

新栃木駅東口で、おはやしの演奏と共に披露された星宮神社のみこし

 【栃木】「ウナギの神社」として知られる平柳町1丁目の星宮神社で16日、夏祭り「大杉祭」が行われ、1889年に造られた伝統のみこしが約50年ぶりに地域を巡行した。この半世紀は担ぎ手不足などの理由で、境内に出して神事を行うだけとなっていた。新型コロナウイルス対策の規制緩和を受け、神社の関係者が若い世代にも地域の伝統文化を伝えようと準備を進めていた。

 星宮神社の社殿は、室町時代の1430年に創建された。神仏習合時代に主祭神と祭られていた虚空蔵菩薩がウナギに乗って現れたという言い伝えが残り、なでると御利益がある「なでうなぎ」の像がある。

 大杉祭は害虫や自然災害からの作物の安全や疫病退散などを願って執り行われてきた。明治時代に現在のみこしが造られ、1970年代までは神事の後に氏子が担いで旧平柳村周辺を宵越しで巡行していた。

 しかし信仰心の薄れや担ぎ手の不足から時代とともに巡行は行われなくなり、地域住民がみこしを目にする機会はほぼなくなっていたという。

 神社の意義を再確認してもらい、次世代に伝統文化への興味を持ってもらおうと、林靖大(はやしやすひろ)宮司(40)や総代らが数年前からみこし巡行の復活を模索。コロナ禍も落ち着いてきたことから、今年は軽トラックの荷台に載せて地域に披露することとした。

 16日は朝から総代ら約30人が星宮神社に集まり、みこしの清掃や飾り付けを行った。神事の後、神社を出発し、旧平柳村周辺を1周。終点の新栃木駅東口ではみこしの前で地元のおはやし会が演奏を披露し、地元住民や通行人を楽しませた。

 総代の石崎常蔵(いしざきつねぞう)さん(82)は「数十年の悲願がかなった。みこしがある神社は限られているので、伝統として住民と共に次世代へ引き継いでいきたい」と話した。

星宮神社のみこし

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