千里の浜でウミガメの産卵低調 過去最少ペース、全国有数の産卵地和歌山・みなべ

砂浜を掘って卵を産むアカウミガメ。ボランティアが、ウミガメが認識しにくい赤色のライトを照らして調査している(和歌山県みなべ町山内で)

 和歌山県みなべ町山内の千里の浜で、今季のアカウミガメの産卵が低調だ。シーズンは8月上旬までだが、7月20日未明までの産卵数は22回にとどまっている。1980年代に調査が始まってからでは、シーズン通し29回で最少だった98年や31回で2番目に少なかった2021年と同様のペース。保護調査する人らは、終盤に増えることを期待している。

 千里の浜は全国有数のアカウミガメの産卵地で、本州で最も産卵密度が高い。毎年5月中旬から産卵が始まるが、今季は3週間以上遅い6月13日に初めて確認できた。その後、最盛期となる6月下旬にはある程度は見られたが、7月に入ってから産卵が確認できない日が多くなった。

 20日未明までの産卵は22回で、昨年同期の31回よりも少ないが、21年同期と同数。

 これからの終盤、例年なら7月末まではある程度産卵があるが、8月になると少なくなる。昨年には7月下旬に12回あったが、8月中は6回だった。21年は7月下旬も少なく6回で、8月中は2回しかなかった。

 しかし、ウミガメは同じ個体が1シーズンで2、3回産卵することから、保護調査をする人らは今後、産卵が続くことを期待する。保護調査や研究をする「NPO日本ウミガメ協議会」(大阪府枚方市)の事務局長、松宮賢佑さん(37)は「産卵は全国的に少ない。千里の浜も同じような傾向だが、あと1、2回、産卵をするとみられるウミガメがいる。21年の産卵数を上回るのではないかと思う」と話す。

 千里の浜でのアカウミガメの産卵は、1990年代初めに350回近くあったが、その後減少が続き、98年には29回まで落ち込んだ。再び増え始め、2012、13年にはいずれも300回近くまで回復。しかし、翌年から再び減少傾向となっている。

 専門家によると、ウミガメは生まれて40年後に産卵するとされている。今から40年ほど前に子どもがあまり生まれなかったために、ここ数年の産卵も少なくなっているとみられるという。このことから、保護調査をする人らは「30年ほど前は多かったので、2030年ごろには多くなると期待したい」と話す。

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