赤磐の「子ども図書館」8月開所 国の有形文化財を活用

講堂だった2階の大部屋に本を並べ、植物やハンモックを置く。森の中の隠れ家のような空間を目指す

 赤磐市馬屋に8月2日、私設図書館「子ども図書館ほたる」がオープンする。手がけたのは一般社団法人螢學舎(ほたるがくしゃ)=同所。国登録有形文化財の建物を活用し、森の中の隠れ家のような空間づくりを目指して準備を進めている。代表理事の大槻順一郎さん(74)=岡山市北区=は「たくさん本を読んで世界を広げてほしい」と夢を膨らませる。

 100年以上前に旧赤坂尋常高等小学校として建てられた木造2階(延べ約500平方メートル)を使う。感性や創造力を育んでもらおうと、講堂だった2階の大部屋(約200平方メートル)には好奇心をかき立てる絵本や小説をはじめ、アート、物作り、冒険に関する本を中心に約3千冊をそろえる。コンセプトに沿い植物やハンモック、ドーム形の小屋を置き、思い思いに読書を楽しめるよう工夫する。本の貸し出しは行わない。

 本は購入分に加え、大槻さんが創業した会社が営む生活雑貨店「アクシスナーフ」(同田中)の店頭でも寄付を募った。

 1階に設ける「私の本棚」(約100平方メートル)は希望者に有料で貸し、お薦めの本や自作のアート作品などを展示できるようにする。

 図書館整備のきっかけは2020年夏。15年に建物を購入し活用策を探っていた大槻さんは、建築家の安藤忠雄さんが大阪に子ども図書館を開館させる新聞記事を読んだ。〈あらゆる情報が簡単に手に入る時代、図書館に出向いて子ども自らが本を選び、判断能力を養うことは大切〉という思いに共鳴した。

 開館は水~土曜の午前11時~午後4時。利用無料。子どもがメインだが誰でも利用できる。螢學舎が決めたジャンルの本に限り寄付を受け付ける。問い合わせは図書館の公式インスタグラム(kodomohotaru)。

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 開館まであと10日。螢學舎代表理事の大槻順一郎さんに、人生に影響を与えた本との出合いや図書館整備の思いを聞いた。

 中学生のころ、小田実さんの旅行記「何でも見てやろう」を読みました。外国について初めて詳しく知り衝撃を受けましたね。世界はこんなに広くて自由なんだと。興味が湧きました。

 20歳で日本を飛び出し約4年間カナダで暮らしました。勉強しながらアルバイトや物作りで稼ぐ。たくさん友人ができ、かけがえのない日々でした。人との出会いをより大切にするようになりました。本をきっかけに世界が一気に広がりました。

 その後も時間があれば海外を旅します。フランスからポルトガルまで1700キロを自転車で横断したのは面白かった。2013年にはトレッキングでヒマラヤ山脈へ。そこでネパールには図書館がない小学校がたくさんあると山岳ガイドから聞きました。仲間と一緒に募金活動を始め、目標の10館を10年間で完成させました。現地の子どもたちはとてもとても喜んでくれましたよ。

 今度は地元の子どもたちのために取り組みたいと考えました。図書館運営は初めてで全て手探り。開館後も利用者の声を聞き、より良いものにしていきたい。子どもの居場所のような存在になったらうれしいですね。

 古い校舎には唱歌「蛍の光」が合う。これが名前の由来です。私がほれ込んだ江川三郎八の建築も間近で見てほしい。耐震補強で大部分を改修しましたが、校舎としての当時の雰囲気を感じられるよう階段や「講堂」と記されたプレートなどはそのままです。歴史的な建物を残し未来を担う子どもたちに使ってもらいたいです。

旧校舎を活用した「子ども図書館ほたる」の外観
「たくさん本を読んで世界を広げてほしい」と話す大槻さん

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