ドウダンツツジは〝葉物のエルメス〟 日本産花き、海外から熱視線 輸出額は前年の5割超

中華圏での装飾例。立体感を持たせるため、ドウダンツツジを使う例が増えている(全国花き輸出拡大協議会提供)

花きの輸出が好調だ。高品質の日本産が現地のニーズをつかみ、直近5月の輸出額は前年同月の実績を5割以上上回る。中華圏では富裕層が“葉物のエルメス”と称されるドウダンツツジを買い求める。交流サイト(SNS)での情報発信も盛んだ。海外には多様なニーズがあり、輸出拡大のチャンスが広がっている。

中華圏向け伸長

農水省が公表した5月の農林水産物・食品の輸出額によると、花きは前年比55%増の5億8900万円。1~5月でも前年同期比14%増と好調に推移する。新型コロナウイルス禍からの経済活動の再開や、家庭向けなどで新たな需要が生まれている背景がある。

中国などアジア圏の富裕層で人気を高めているのが、切り枝のドウダンツツジだ。中国では新興チェーン店が2017年ごろから、写真投稿や商品購入ができるSNSで販促を活発化。認知度や評判が年々上昇し、引き合いが強まっている。

富裕層の間では、現地にはない自然な枝ぶりを楽しむインテリアとして親しまれている。高級ブランドになぞらえて“葉物のエルメス”と呼ばれるなど高値で取引がされる。中国の大手EC(電子商取引)サイトでは、推定1・3~1・5メートル程度のものが1本約4000円で400点以上購入され、中には約1万円で購入された例もある。

装飾でフラワーアレンジメントと一緒に飾るなど、用途は広がりを見せる。ただ、大手花き卸によると「引き合いは強いが、需要に対応できる国内産地は少ない」として、増量に期待を寄せる。

グロリオサは縁起の良い赤い花として中華圏向けに伸長。海外にも産地はあるが、装飾用に茎が硬く仕立てられた日本産が選ばれているという。

日本庭園ブームを受け、植木も順調。ベトナムなどにはマキや松の輸出が増加した。

大田花き花の生活研究所の桐生進代表は「海外には多様なニーズがある。生産者がニーズをしっかりと捉えることで、商機は広がる」と指摘する。 (鈴木雄太)

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