スライサー諸君! この夏の宿題は「右サイドの空間づくり」 レッスン最前線からLIVEルポ

これからお届けするレッスンのやり取りは、感覚論とは無縁の科学目線の世界。最新技術を使ったいまどきのコーチたちのリアルなレッスンの一部始終をレポート。人の振り見て我が振り…直せます。

「OB級のスライス頻発」が悩みの野沢さん(40代、男性、平均スコア100)

ベストスコア92、平均スコアは100という野沢(のざわ)さん。調子がいいと100を切れるが、スライスが“持ち球”のためOBなどでスコアを崩すことが多いという。「1ラウンドで数発出るスライスのOBがなくなれば、コンスタントな100切りが見えてくるんですが……。今日はそこを直していただきたいです」(野沢さん)

スイング解析でスライスの原因を探ると…

野沢さんは、クラブが極端に外から下りる「アウトサイドイン」のカット軌道になっている

野沢さん(写真左)を指導するのは、稲場智洋(いなばともひろ)コーチ。悩みをヒアリングし、スイングチェックを行った結果、いくつかの問題点が見えてきた。

きつめの『アウトサイドイン軌道』ですね。フェースコントロールが上手いのでスイング軌道の割にスライスはひどくありませんが、インパクトでフェースが開いたときに、OB級の曲がりになってしまうのでしょう」(稲場コーチ)

右への体重移動を意識し過ぎると、腰のスウェーと共に頭の位置も右へ大きくズレてしまう

続けて正面からスイングを確認。「トップで腰が右にスウェーしています。腰の位置が右寄りの状態だと、ダウンスイングで手元を下ろすスペースがなくなります。また、体重が右に乗った状態のまま腰を回そうとしているので、右腰軸での回転となり『アウトサイドイン軌道』になりやすい」と稲場コーチは指摘する。

右へのスウェーが大きな原因と判断

右に体重が残ると、左腰が引ける動きになり「アウトサイドイン」の動きがさらに強くなる

インパクト確認すると、「野沢さんはダウンスイングで左方向への移動量が足りていません。プロはアドレス時に比べて平均で3.1インチ(約79ミリ)目標方向(トゥーワード)へ動くのに対し、野沢さんは0.3インチ(約8ミリ)移動と約70ミリ不足しています。フィニッシュでも右足つま先に体重が残っている状態です」(同コーチ)と分析。

いずれの悪い動きも、バックスイングでの「右へのスウェー」に大きな原因があると判断。バックスイングでの体の使い方から指導を始めた。

お尻を左に突き出すボディドリル

以前も紹介したドリルだが、右へのスウェー防止には最強ドリルと言える

稲場コーチは腰の動きを指導するのに、壁を使ったボディドリルを提案。アドレスで左足の外側を壁にピッタリつけて構えたところから、トップで左のお尻が壁にぶつかるようにバックスイングするドリルだ。

このポジション(写真右)を作ることによって、右側に空間ができ「インサイドアウト軌道」が作りやすい

「野沢さんは、いままで腰を右にスライドしながらクラブを上げていました。今後は右に体重移動しようとせずに、その場で右腰を引くようにする意識を持ってください。感覚としては、お尻を少し左に突き出すくらいでいい。腰が左寄りにあることでクラブを下ろすスペースが生まれ、ダウンスイングで自然に手元がインサイドに下りてきます」(同コーチ)

右サイドの空間を作ることが重要

壁を使ったボディドリルによって、右へのスウェーが解消された

お尻を左に突き出すようなバックスイングによって、右へのスウェーが改善され、トップで体の右サイドに空間ができインサイドから下ろせる準備ができた。

手元の位置は若干の違いではあるが、クラブ軌道に大きな変化が見られる

改善前は、手元やクラブが三角のラインから大きく外れていたが、改善後は、ラインの内を通りインサイドアウト軌道になった。「インサイドからクラブが下りるとフェース管理がしやすく、インパクト付近で手で合わせにいく動きがなくなり、打点も安定します」(同コーチ)

「いままでは、右に体重移動し、意識して左に踏み込んでいました。ドリルをやって、意識しなくても自然と左に乗っていけるようになりました。おへその位置が自然に動く感じがあって、ダウンスイングがラクですね。軌道も、無理にインから下ろそうとしなくても自然といいところに下りている気がします」(野沢さん)

軌道をイメージして練習しよう

ゆるやかにカーブしているスポンジバーや、大きめのタオルを使ってスイング軌道のイメージを鮮明にする

「かなりよくなっていますが、まだインサイドから下ろすのを少し怖がっているように見えます。ダフリそうに感じるんでしょうね。もう少し軌道のイメージを明確にするために、スポンジのバーなどを置いて練習してみましょう。ショートアイアンのハーフスイングくらいで始め、その際ボールが右方向に打ち出せていればOK(インから下ろせている証拠)。最初はプッシュアウトも出ると思いますが、そこは今後、フェースコントロールや左手首の掌屈(手首を手のひら側に折ること)させてフェースの開く量を抑える感覚をつかめば修正されていくはずです」(同コーチ)

稲場コーチが使ったのは、ゆるやかにカーブしているスポンジバーだが、大きめのタオルなどを置いて使ってもいいという。読者の皆さんもこの夏は、お尻を左に突き出すボディドリルとタオルを使った練習法で、スライス修正にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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