“あいすまんじゅう"工場に潜入 福岡発祥、お菓子作りのノウハウで作るロングセラー商品 【実はとちぎで作っています】⑧丸永製菓関東工場

丸永製菓関東工場

 暑い夏、スーパーやコンビニでついつい買ってしまうアイス。多種多様なアイスの中で、福岡県発祥の人気商品が栃木県で作られていると知り、流れる汗を拭いながら工場に向かった。

 「あいすまんじゅう」や「白くま」など、数多くのヒット商品を出している丸永製菓は、1933年、福岡県久留米市で菓子製造販売業として創業した。60年にはアイスクリーム製造に乗り出し、九州地方を中心に人気を集めた。

 全国への販路拡大や生産能力向上のため、2003年、栃木県さくら市に関東工場を設立。名古屋市を境に、関東、東北、北海道でも気軽に商品を購入できるようになった。

 工場に到着すると、常務取締役西日本統括営業部長の永渕寛司(ながふちかんじ)さん(48)と西岡智(にしおかさとし)工場長(56)が笑顔で出迎えてくれた。「まずは中を見てみませんか」と、渡されたのは防護服のようなかっぱやキャップ。身に着けた後は、エアーやブラシなどで念入りに身を清めて工場内部に入った。

 アイス工場は、ペンギンが住むようなキンキンに冷えた場所-。そんな想像をしながら入ってみると、そこまで寒くないので驚いた。足元はひんやりしているが、衛生着を身に着けながら動くと少し汗ばむほどだ。

 工場では、白くまなど年間約40種類のアイスが日替わりで製造されている。真っ先に案内されたのは、あいすまんじゅうの製造ブース。あいすまんじゅうといえば、おなじみのロングセラー商品。花形の愛らしい見た目と、中にぎっしりと詰まったあんこがたまらない。花形は、福岡県の県花である梅を模している。

 製造工程は、花形をした外側を作るところから始まる。型にバニラアイスを流し込み凍らせ、中身を抜き取る。次に空洞状の“梅の花”に、小豆と外側より空気を含ませてなめらかにしたバニラアイスを注ぎ、棒を差し込む。

 型に充填してから約20分で全体が完全に凍る。こうした工程を経ることで、外側と内側で異なる食感や固さが生まれるという。

 機械が棒をつかんでラインに流れていく様子は圧巻! まるであいすまんじゅうの果樹園に迷い込んだようだ。できたてを試食させてもらうと、少しやわらかく、市販の状態よりも“まんじゅう”を感じる。普段の味わいとは、また違ったおいしさだ。工場では1分間に約137個のペースで製造し、1日に約7万個が出来上がるのだという。

 丸永製菓のルーツはお菓子屋さん。永渕さんは「アイスにもまんじゅうやもちなど、お菓子作りのノウハウと発想を取り入れています」と教えてくれた。ロングセラー商品が主力だが、ファンの裾野を広げる挑戦にも余念がない。「若い人たちにもより食べてもらうため、新しくFANTA(ファンタ)のアイスも始めました」と話す。

 そのファンタアイスを製造しているのが、次に案内されたブース。1分間に約240個、1日約30万個も製造しているのだという。5月29日には、1箱でグレープとオレンジの2種類が味わえる新商品も発売され、2色のアイスが交互に作られていく様子はカラフルでかなりかわいい。

 ファンタアイスもまず、先に外側から作る。中にシロップを流し込み、凍らせて中身を抜き取り、みぞれを中に入れる。さらに、それぞれの味のソースを注入し、棒を刺して完全に凍らせる。できたては想像よりしっかりとした固さで、ファンタの甘酸っぱいソースがさっぱりとして夏にぴったりのおいしさだった。

 中のみぞれに使う氷を削る機械も見せてもらった。氷の塊を機械に投入し、アイスのシロップとなる「ミックス」と混ぜ、大きな粒をつぶして均一にしていく。大きな塊が削れていく様子は見ているだけで涼しさを感じる。

 出来上がったアイスは、従業員が厳しい目で棒の刺さり具合や形を見極める。チェックを通過した製品が包装され、人の手や機械で箱詰めされていく。

 さらに金属探知機といった機器を使い、異物混入などを念入りに確認した後、倉庫でしっかりと芯まで冷やす。1日おいてからは、細菌検査など二重三重のチェックが続く。各売り場へと配送されるのは、全ての検査をくぐり抜けた選ばれたアイスだけだ。

 西岡工場長は「うちのアイスは和菓子のように人の手がすごくかかっている商品なので、従業員たちの愛着が強い。お店でうちの商品を手に取って買ってくれるのを見るのがすごく好きなんです」と目を細めた。

 アイスへのこだわりを存分に堪能して工場を後にする。外に出ると熱気が体にまとわりついてきた。「今日もアイスを買って帰ろう」。心に決めた。

あいすまんじゅう
しろくま
バニラアイスが流し込まれた型
ぎっしりと小豆が詰め込まれた型
棒を差し込む工程
棒をつかんで流れていくあいすまんじゅう
続々と流れていくあいすまんじゅう
ファンタアイスバー
カラフルなシロップが充填された型
氷の塊を機械で削っていく工程
棒の刺さり具合などを確認する従業員
箱詰めしていく様子
できあがった商品が流れていく様子
箱詰めされ、流れていくファンタアイスバー
きなこもち
白くまデザート

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