<社説>本紙ランドセル調査 かばん選べる環境整備を

 琉球新報が県内の新小学1年生の保護者を対象にランドセルの価格などについてアンケートを実施したところ、78.2%が価格が「高い」と感じていると答えた。色やデザインの多様化や高品質化による高額傾向が背景にある。購入価格は6万円台が25.2%で最も多く、5万円台が19.3%と続いた。 一方でランドセルを使う習慣について「続いてほしい」は38.4%で、「自由に選べるようにしてほしい」は34.3%と、僅差だった。

 「新小学1年生といえばランドセル」というイメージが定着している。その中で購入が厳しい低所得家庭がある。一般家庭でも家計が圧迫されているに違いない。ランドセルを含め、誰もが使いたいかばんを自由に選べることが望ましい。各家庭の事情や親子の意思を尊重したい。その環境づくりこそが肝要だ。

 県が実施した2020年度沖縄子ども調査では、5歳児の保護者に「学用品やランドセル購入費用が不足しそうか」と聞くと、「どちらかといえば」を含めて低所得層の約5割が「あてはまる」と答えた。低所得層の家庭にとっては切実な問題だ。

 物価高騰や低賃金が続く中、一般家庭にとっても負担感は大きい。高額のランドセル購入は「入学祝い」の意味があったり、祖父母が買ったりするケースが多い。本紙調査では「祖父母からの援助もなく、子ども3人分はきつかった」という声があった。適正価格は「3万円台」が約4割を占め、最多だった。

 こうした事情を配慮すべき時に来ている。現在でも困窮世帯は、ランドセル購入費用を行政から受ける支援がある。ひとり親世帯に無償提供する活動もある。再利用品を低価格で販売し家計を助ける団体も出始めた。お下がりの奨励も活発化している。県外では毎月一定の利用料を払い、数年間、利用を続ければ無料でもらえる仕組みもある。

 一方でランドセルに代わる製品が出始めている。「重い」という指摘のあるランドセルよりも軽いリュックなどの方が子どもの負担は少なく、家計への影響も少ない。数千円から1万円程度のナイロン製の通学用リュックも販売されている。しかし本紙調査では、リュック購入を検討したが、周りに使用者がいないとの理由で断念した親もいた。

 子ども自身が「小学生=ランドセル」というあこがれがあるので「この文化が続いてほしい」との要望もあった。ランドセルの入手方法は多様化しており、ランドセルの使用は尊重されていい。

 ただ、ランドセルに代わる製品を選ぶのも自由であり、各家庭の事情に応じて何を選ぶかに対し、社会は寛容であるべきだ。ランドセルありきの固定観念を捨て、子どもが持つかばんが多様であることを許容する雰囲気をつくりたい。学校や教育行政はその姿勢を保護者に明示すべきだ。

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