ダイヤモンド原石探し 福智町と一緒に

再生の道を進むチャレンジャー

会社は破綻して再生の道を歩んでいた。今こそ現場の我々が主役なんだと思うようにした。支店メンバーと一緒にやらされ感のないワクワクするチャレンジャーになろう!と決めた。初めての営業支店勤務であったが、地道にファンを増やしていく活動をしよう。それが、壊れにくい営業の数字を作る早道になると信じた。今でもソレを信じている。

しかし、現実には地域活性化活動の経験や能力は備わっていない自分自身の課題が大きく横たわる。ビジョンや具体的なアイデアも無かった。それ故、まずは自治体の方々の話や活動内容を伺い、役場や地域の方々から信頼されるようになろうと考えた。

福智町が進めていたことは・・・

当時の町づくり総合政策課は、ふるさと納税の産品開発に注力しており、

①地元農産品を活用したジェラート商品開発

②上野(あがの)焼などの町の情報発信

③ほかのエリアないイベントの新企画の実施

という町のニーズとして確認できた。

ジェラード商品開発

幸いにも中洲のライブハウスで名刺交換した方が、偶然だが、福岡のフレンチ有名店であるビストロミツの平田充さんだった。平田さんたちは、フレンチ・イタリアンのシェフ集団で「博多ミラベル21」というNPO法人を設立して地域貢献活動を実施しており、少年院に出向きコース料理を振る舞い、「料理人の楽しい世界においでよ!」と励ましているステキな活動も実施していた。

早速、相談に伺い福智町のジェラートをプロデュースして欲しいとお願いした。NPOメンバーの了解もいるため、会合に出席して説明をする機会を頂くことになった。「博多ミラベル21」は、50歳以下のオーナーシェフの集まりであり、会議の23時スタートには閉口した。しかし、気骨のある料理人の方々に混じって熱い議論に参加させてもらった。その結果、シェフの方々が福智町にやって来てくれてイチゴ農家などをまわって、ジェラートプロデュースしていただくこととなった。

食のイベント、器の選定

「博多ミラベル21」のメンバーは、年が明けた春に中洲リバレインで定期的な食イベントも開催することになっていた。その際に、上野焼の器を使っていただく提案につながった。上野焼は、福智町周辺のみで焼かれる陶器。豊臣秀吉の朝鮮出兵後に連れ帰った陶工が始めた焼き物で、他地域の陶器に比べると薄く軽量である。「食」と「器」のマリアージュ、偶然の出会いからどんどんと話が具現化していった。想定していなかった展開になることも実感し、出会いのありがたさをつくづく感じることとなった。

地元の列車を活用しよう!

そうこうしている間に、新しいイベント企画も浮かんできた。福智町には、地元の足である平成筑豊鉄道が走っている。本社もあるのだ。地元の小学生親子が参加し、動く列車の中で体験する企画を提案した。町にも了承をいただき、また、平成筑豊鉄道にもご挨拶とご協力を要請、快くお引き受けいただいた。

講師は、福岡出身のパイロットとキャビンアテンダント。沿線を走りながらの2時間の郊外授業、臨時列車が走ったのだ。このイベントの実施によって、社外だけではなく社内の理解者も増えていった。

2両編成の臨時列車が、ゆっくりと新緑の筑豊の春を駆け抜けた。NHKをはじめとするTV局や新聞各社も同乗して取材してもらった。そして、この企画は、秋にはトヨタ九州広報室の賛同をいただき、平成筑豊鉄道とトヨタ九州、日本航空の3社による「のりもの教室」に発展した。また、後の観光列車企画「シュガーロード号」や観光庁誘客多客化事業として採択された「クリスマス・トレイン」などに展開していく。

https://travel.watch.impress.co.jp/docs/news/1144672.html

早期実現が信頼の証に

3つの課題を最初の約半年間で実現したことによって、少しは信頼されることにもつながっていった。そして、ふるさと納税は、旅行商品や地ビール商品、福智町にある筑豊魚市場活用など、数々の商品を展開することができた。その結果、2017年に福智町は、福岡県の自治体でナンバーワンの納税額になった。

福智町と一緒にコミニケーションラジオという番組を北九州市「クロスFM」局で制作して、ふるさと納税の宣伝も実施した。自ら知恵を出しながら納税商品の拡大にこだわる係長たちの想いと行動には胸を打たれた。初見での眼の輝きは本物だったし、感謝のコトバも口にされると嬉しいものである。

この頃から「営業活動と地域活動は両立するのではないだろうか?」と感じ始めた。そして、九州最大規模のスイーツイベント「福智スイーツ大茶会」の実現、筑豊の秋の好機が訪れることになる。

寄稿者 武知眞一(たけち・しんいち) ㈱VISIT九州顧問、赤村・福智町観光アドバイザー

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