3期連続黒字!日本の年金運用にみる【インカムゲイン】の有用性

7月上旬、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人が2022年度の運用実績を公表しました。収益額は2兆9,536億円のプラスとなり3期連続の黒字となっています。


年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)とは

年金積立金管理運用独立行政法人(以下、GPIF)は、将来の年金の支払いに備え、国民から集めた国民年金、厚生年金の保険料の積立金を運用している機関です。GPIFが自主運用を開始したのは2001年からで、現役世代が収めた保険料の中から年金の支払いなどに充てられなかった余剰分を将来の世代のために運用しています。

GPIFが公表する資料を見ると、運用資産は2022年度末時点で200兆1,328億円となっています。運用を開始した2001年度以降、22年間の累積収益額は108兆3,824億円に上ります。そのうち、インカムゲインでの収益額は47兆527億円となっています。

インカムゲインとは、株式や債券などの資産を保有中に得られる収益で、例えば株式では配当金、債券では利子、不動産では賃貸により得られる家賃収入がインカムゲインとなります。 2022年のインカムゲイン収益額は3兆7,003億円と公表されており、2022年度の収益がインカムゲインによるものだった事が分かります。

2022年度の日本企業の配当総額は、前期比2%増の13兆9,300億円と過去最高となり、GPIFのインカムゲイン収益が増加しています。

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用方針

GPIFの運用は、国内債券、国内株式、外国債券、外国株式の4つで運用されています。2022年度末時点の運用額は、国内債券が49兆円6,900億円(24.83%)、外国債券50兆1,200億円(25.04%)、国内株式50兆3,300億円(25.15%)、外国株式49兆9,800億円(24.98%)と、平均して25%の構成比率となっています。

運用開始当初は債券運用(定期的に利子を受け取る)重視でしたが、2019年度以降は25%を基準に運用配分している事が分かります。

2023年4月から6月にかけて、日本株が堅調に推移しました。GPIFが運用する日本株の比率が高くなり、その結果、価格変動で資産構成上の割合が高くなった資産を売り、反対に低くなった資産を買うリバランスが実施されたとの推測があります。

また国内株式を売却し、国内債券を買った可能性もあります。毎週第4営業日に公表される部門別売買動向を見ると、今年に入り信託銀行による売りが継続しています。その一部がGPIFの売却ではないかと言われています。

GPIFのウェブサイトでは【長期的な観点からの運用】と題し、『株式や債券などの資産を長期にわたって持ち続ける「長期運用」によって、安定的な収益を得ることを目指しています』と謳っています。

ウェブサイトに公表されている通り、GPIFは長期運用が主であり、株式や債券の運用によって得られる収益は、短い期間ではプラスやマイナスに大きく振れる可能性がありますが、長期的に見れば世界の経済活動などに資金を提供する対価として、元手を増やすことが可能です。

私は会社員時代、証券ディーラーでしたので、短期売買を主として日々収益を上げていました。しかし、2013年頃からアルゴリズム取引などが主流となり、以前のように収益が上げにくくなりました。その頃から、短期トレードの難易度が上がったことを肌で感じました。昨今はデイトレーダーと呼ばれる投資家の方々も、決算を見ながら長期的に株式を運用している人が増加してるように感じます。

前途したように、GPIFの収益の約4割がインカムゲインとなっている事実を見ると、改めてインカムゲインの大切さを教えてもらったように感じます。高配当銘柄や毎年増配を行っている企業は、今後も注目されるのではないでしょうか。

最後に、連続して増配期間が長い銘柄のランキングをお伝えします。

1位(33年):花王(4452)
2位(25年):SPK(7466)
3位(24年):三菱HCキャピタル(8593)、ユー・エス・エス(4732)
5位(23年):小林製薬(4967)

米国市場に目を向けると、更に長い期間増配を続ける企業があります。

1位(69年):アメリカン・ステイツ・ウォーター【AWR】
2位(68年):ドーバー【DOV】
3位(67年):ジェニュイン・バーツ【GPC】、パーカー・ハネフィン【PH】、プロクター・アンド・ギャンブル【PG】、ノースウェスト・ナチュラル・ガス【NWN】

※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。

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