戦死者2万9千人弔う「忠霊塔」後世に 関係者、守る会を立ち上げ 青森・弘前市

忠霊塔を背に「守る会」設立の趣旨を説明する三上事務局長=23日
忠霊塔を守っていく意義について説明を受ける弘前市の桜田宏市長(右)

 戊辰戦争からアジア・太平洋戦争までに戦死した県人約2万9千人を悼む「弘前忠霊塔」(青森県弘前市西茂森)を後世に引き継いでいこうと、関係者が23日、任意団体「弘前忠霊塔を守る会」(会長・須藤龍哉長勝寺住職)を立ち上げた。戦没者遺族らの高齢化が進む中、戦争の記憶を継承するとの趣旨に賛同する市民を募り、会費を塔の維持修繕費などに充てる。

 忠霊塔は現在、塔の周辺を宗教法人弘前仏舎利塔が管理。残りの部分は市の「禅林公園」となっている。敷地近くの自動販売機4台の売上金を管理費用に充てているという。

 今後、塔は定期的に修繕する必要性が見込まれることから、幅広く協力を募る必要性があると考え、遺族や自衛隊OBらが「守る会」の立ち上げを決めた。年会費は個人2千円、団体1万円。今後、幅広く会員を募集する方針。

 同日の発会式には遺族、自衛隊員など約60人が参加。自衛隊OBで同会事務局長の三上知彦さん(76)があいさつし、「戦没者の慰霊に努めたい」と決意を新たにした。

 三上さんらは昨年12月から約半年間、忠霊塔内に保管されている戦死者の遺骨約1700人分の名札を作って骨つぼ一つ一つに貼るなど整理し、新調した棚に置き直した。戦死者を市町村別に記した銘板も新たに作り、遺族が氏名を確認しやすいようにした。戦争の歴史を世代を超えて広く知ってもらうためという。

 発会式には、戦争で父を亡くした館浦善清さん(82)も参列した。館浦さんは「テレビでウクライナの子どもたちの姿を目にするとわが身に置き換えてしまう。戦争はあってはならない」と話した。

 守る会は、銘板のある入り口近くの一室を午前9時から午後4時まで開放する(冬期間除く)。8月12~14日には、塔内部全体の公開も予定している。問い合わせは長勝寺(電話0172-32-0813)へ。

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弘前忠霊塔 弘前市の禅林街にある長勝寺に隣接して立つ、県内の戦死者を弔う巨大な塔。1941年7月、弘前市長を会長とする「弘前忠霊顕彰会」が中心となり、学生らの動員と市民の寄付金によって工事開始。戦後の45年11月に完成した。進駐軍は忠霊塔を軍国主義の象徴としたため、関係者は「忠」の文字を覆い隠し「霊塔」とし、さらに「仏舎利塔」と改名。1983年に当初の「忠霊塔」に名称を戻した。

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