【イベント報告】国境なき医師団インターナショナル会長 来日記念講演

国境なき医師団(MSF)は、MSFインターナショナル会長のクリストス・クリストゥの来日を記念し、会長とMSF日本事務局長の村田慎二郎による講演会を開催しました。講演会は、難民や移民の人びとが置かれた状況や医療ニーズについて紹介する「エンドレスジャーニー展・広島~終わらせたい、強いられた旅路~」会期初日の7月3日(月)に、広島市立大学(共催)およびオンラインで行われ、合わせて170人が参加しました。

広島市立大学で開催 © MSF

クリストゥ会長からは、MSFが世界各地で医療・人道援助活動を行っている国際NGOであり、独立・中立・公平を活動原則としていること、中でも9割以上を民間からの寄付に支えられている資金の独立性によりいかなる勢力からも影響を受けず、ただ医療ニーズに基づいた活動が担保されていることが紹介されました。

続いて外科医でもある同会長は各地での医療活動体験を共有したほか、紛争地における医療への攻撃について触れました。講演前日に村田と共に広島平和記念資料館を訪れた会長は、78年前、広島に落とされた原子爆弾がまさに医療施設の真上で爆発したこと、おびただしい数の民間人が犠牲になったこと、医療への攻撃の問題が今も世界各地で続いている現実にも触れ、いかなる理由があっても民間人が犠牲になることは許されず、私たちは国境を越え連帯してこの問題に立ち向かっていく必要があると、学生へ向けた力強いメッセージで締めくくりました。

広島を訪問したクリストゥ会長(右)と村田事務局長(左) © MSF

事務局長の村田からはMSF日本の活動紹介に続き、非医療職の現地活動責任者として紛争地でMSFの援助活動にあたった体験が紹介されました。医療活動と並ぶMSFの大きな使命である証言活動の意義に触れ、人道危機の悲惨な現実について声を上げるのはどのような時かということがエピソードを交えて話されました。

そして学生時代からこれまでのキャリアを振り返り、父親が呉市出身で自身も広島にゆかりがあること、広島ゆえに世界に向けて力強く発することができるとの人道援助への思いに触れ、個人としての成功よりもはるかに大事なもののために、自分の命を大きく使ってほしいと学生たちに向けて力強く語りました。 続く質疑応答では、報道されない人道危機の中でもっと注目されるべき危機にはどのようなものがあるのか、MSFがどう対応しているのかなど時間ぎりぎりまで多くの質問が続き、参加者の関心の高さをうかがわせました。

登壇者プロフィール

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