熊楠さんとふしぎな動物たち 和歌山・田辺の顕彰館で夏期特別企画展

子どもにも分かりやすく紹介している夏期特別企画展(和歌山県田辺市中屋敷町の南方熊楠顕彰館で)

 和歌山県田辺市中屋敷町の南方熊楠顕彰館は、夏期特別企画展「こどものための図鑑2―クマグスさんとふしぎな動物たち―」を開いている。子どもの頃のクマグスさん(熊楠)がどんな本を読み、どんなことを感じ、それをどう生かしたのかを昔の「図鑑」を見ながら、今の子どもたちに考えてもらう企画展。9月18日まで。入館無料。

 熊楠が子どもの頃に読んだ図鑑などの本には、たくさんの不思議な動物たちが登場する。熊楠は大人になっても不思議な動物について考え続け、子どもの頃の疑問をさまざまな学問を駆使して解き明かした。館長の松居竜五・龍谷大学教授によると「熊楠の子どもの頃の好奇心が、大人になって本格的に学問を学んだ後、どのように発展したかに焦点を当てたのが今回の企画展」という。

 熊楠は7歳の時、江戸時代の子ども向けの図鑑「訓蒙図彙(きんもうずい)」を買ってもらって、そこから字や絵を覚えた。8歳から9歳ごろには、同時代の百科事典「和漢三才図会」に夢中になった。これは105冊もある大人向けの図鑑。なかなか買ってもらえなかったため、熊楠は近所の人から、この本を借り、そのほとんどの部分を14歳ごろまでに写し終わったという。

 「和漢三才図会」や中国最古の地理書「山海経(せんがいきょう)」には、人にも似た不思議な生き物「猩々(しょうじょう)」が登場する。猩々は、東の海の果てにある「招揺山(しょうようさん)」にすむ生き物とされた。とても素早く動くので、人間がこれを食べると速く走れるようになると信じられた。熊楠は15歳の時に猩々の絵を写しており、一体何なのかを調べた結果「中国の南部にいるテナガザルではないか」と考えたという。

 熊楠は太陽と生き物の関係にも注目した。太陽の中にはカラスがすんでいるという伝説があり、この特別なカラスはヤタガラスと呼ばれ、足が3本ある熊野地方の守り神で、日本サッカー協会のシンボルマークとしても有名。熊楠は、この伝説は太陽の中にある黒点をカラスだと思ったことから生まれたと考えた。

 展示資料は「和漢三才図会」のほか、熊楠が15歳の時に写した猩々などの絵と文「動物・人物模写図」、熊楠が描いた恐竜の絵など30点。

 写真展「犬からみた人類史Ⅱ―猟犬からペットへ」も同時開催。人と犬は数万年以上前から一緒に生活していた。犬が狩りのパートナーから伴侶動物(ペット)になるまでを写真とともに紹介する。

 関連行事として、顕彰館は8月19日午後2時~3時、同館1階学習室で夏休み子ども講座「熊楠の図鑑を読んでみよう」を開く。定員は小学生10人(低学年は保護者同伴)。9月9日午後2時~4時には学習室で、シンポジウム「犬からみた人類史・紀州編―猟犬からペットへ」を開く。定員30人で申し込み不要。講座、シンポジウムともに参加無料。

 開館時間は午前10時~午後5時(最終入館は午後4時半)。会期中の休館日は7月31日と8月7、14、21、28日、9月4、11日。問い合わせは顕彰館(0739.26.9909)へ。

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