『シビック』と『タイプR』を「モータースポーツのコアに」。HRC渡辺社長がSGTへの思い語る

 7月24日、ホンダ/HRCは岡山国際サーキットで、2024年からスーパーGT GT500クラスに参戦するホンダ・シビック・タイプR-GTをお披露目した。この公開の後、HRCはサーキット内でメディア向けの取材会を行ったが、このなかでHRCの渡辺康治社長は、ホンダがスーパーGTに参戦する意義、そしてシビック・タイプRという存在についてのHRCとしての思いを語った。

 ホンダは2014年から2023年まで、GT500クラスでNSXをベース車両として戦ってきたが、2024年からはこれがシビック・タイプRに改められることが発表されており、7月24日、ついにその本番仕様の車両が公開された。

■スーパーGTに参戦するにあたっての4つの『実現したいこと』

 このシビック・タイプR-GT公開にあたり、岡山国際サーキットを訪れたHRC渡辺社長は、その後の取材会のなかで、「明日の初走行に先駆け、HRCとしての思いをお伝えします」とスーパーGT参戦の意義とシビック・タイプRという存在について語った。

「スーパーGTは言わずもがなですが、年間40万人を動員する日本でもトップの人気があるカテゴリーで、我々としても継続して積極的に参戦することで、シリーズを盛り上げたいと思っています。そこでシリーズ全体に貢献し、ファンの方々の期待に応えていきたいと思っています」と渡辺社長は、ホンダ/HRCがスーパーGTに挑む意義について述べた。

「またHRCとして成し遂げたいのは、人と技術を磨くということがありますが、そのなかでトヨタさん、ニッサンさんと鎬を削り合い、我々の開発陣、レースに携わる人たちがしっかりと鍛えられるということが目標としてあります」

 HRCは2022年4月から、二輪と四輪の体制を統合し新たな体制となったが、渡辺社長はこのなかで。HRCが実現したい「4つのこと」に対し、スーパーGTは重要なフィールドだとしている。

 まずひとつめとして渡辺社長は「ホンダブランドの高揚」を挙げた。「ホンダのブランドをつけたクルマが戦い勝利し、お客さまと一緒に夢を叶え、ブランドを強くしていくのが目標としてあります」と渡辺社長。

 さらにふたつめが「持続可能なカーボンニュートラルを実現する」ということだ。「GTAと協力しながらカーボンニュートラル燃料を使っていますが、それでレースの魅力を損なってはいけないと思っていまして、我々の技術を通じてさらに魅力的なレースにしていきたいと思っています」という。

 また3つめとなるのが、「モータースポーツの裾野を広げる、育成を続ける」ということ。これはホンダレーシングスクールを通じた一貫した育成プログラムで育ったドライバーがスーパーGTに参戦し、それを見た子どもたちがさらに育成に入り、ホンダとともに戦う循環を作り上げたいとしている。

ホンダ・シビック・タイプR-GT公開後、メディア向け取材会に臨んだHRCの渡辺康治社長

■ホンダの中での『シビック』『タイプR』というブランド

 そして、渡辺社長が挙げた4つめが「事業貢献」だ。この中で、GT500にシビック・タイプRを投じる理由が語られた。

「昨年シビックは誕生して50年、タイプRが30年とという節目の年でしたが、私が入社した頃はシビックはシビックレース(かつて開催されていたワンメイクレース)、N1耐久(現在のスーパー耐久)、グループAやJTCC(全日本ツーリングカー選手権)など、シビックがコアとなってホンダのモータースポーツ活動を行ってきました」とかつてモータースポーツで戦ったシビックの写真を前に渡辺社長は語った。

「そういったモータースポーツと量産車の連動によってシビックというブランドが創られ、世界中の皆さんに愛されるようになってきたと思っているので、そこをしっかりとやれればと思っています」

 また、こうした思いは『タイプR』ブランドについても同様で、「先輩たちが『サーキットで究極の走りを実現するクルマを作りたい』という熱い思いで作り上げてきた」ものだと渡辺社長は言う。

「シビック、タイプRをホンダのモータースポーツ活動のコアにしながらやっていきたいと思います。現在はスーパー耐久やTCRなど、モータースポーツでの活躍を大きくしていきましたが、シビックをトップカテゴリーに出すことでヒエラルキーを作り、シビックのブランドを世の中に発信していきたいと思います」

 かつてはコンパクトカーの代名詞とも言えたシビックだが、ボディサイズも変わり、ホンダのスポーツカーとしての位置づけも変化してきた。すでにFL5型シビック・タイプRは渡辺社長が語るとおりスーパー耐久やTCRでも活躍しているが、GT500にも登場することで、さらにホンダのスポーツイメージを代表な車種として成長していくことになりそうだ。

 そして最後に、渡辺社長は今季限りとなるNSXについても「最終年のNSXについては最後まで勝ちにこだわって有終の美を飾り、シビックに繋げていきたいと思います」と今季の必勝を誓っている。

岡山国際サーキットで公開されたホンダ・シビック・タイプR-GT

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